JASO D014-2(自動車部品ー電気・電子機器の環境条件及び機能確認試験ー第2部:電気負荷)は、国際規格であるISO 16750-2と整合化された規格です(なお、2026年3月にはISO 16750-2に準拠したJIS規格の策定も開始されています)。
この規格が対象とする試験は、従来の高周波EMCノイズ(無線ノイズなど)ではなく、「車両の電源ラインで発生するDC〜低周波の電圧変動・異常・過渡応答」です。そのため、使用する試験機器には「高速かつ大容量なバイポーラ電源」や、特定パルスを発生させる「サージジェネレータ」が要求されます。
JASO D014-2 / ISO 16750-2 の各試験項目と、それを実施するために必要となる具体的な試験機器の構成・仕様を解説します。
1. 主要な試験項目と必要とされる電源仕様
JASO D014-2の試験をカバーするためには、単なる直流安定化電源ではなく、プログラム通りに高速で電圧を変化させられ、かつ電流の吸い込み(シンク)ができる車載機器試験用の高速バイポーラ電源(パワーアンプ)と、波形を作るファンクションジェネレータ(シグナルソース)の組み合わせが必要です。
試験項目(JASO D014-2 / ISO 16750-2) | 要求される波形と試験機器の役割 |
4.4 交流電圧の重畳 (オルタネータリップル) | 直流電源に最高50kHz/200kHzまでの正弦波(1V〜4Vp-pなど)を重畳できる高速応答電源。周波数スイープ機能が必要。 |
4.5 電源電圧の緩やかな下降/上昇 | バッテリの自己放電や充電を模擬。0.5V/minといった極めて緩やかな傾きを正確に出力できるプログラミング機能。 |
4.6.1 電源電圧の一時的な低下 | 他の系統のヒューズ溶断などを模擬。ミリ秒単位の急峻な電圧ドロップ波形。 |
4.6.2 電源電圧低下時のリセット動作 | 電圧を5%刻みでステップ降下させ、ECUのマイコンが正常にリセットされ、フリーズしないかを確認するシーケンス出力。 |
4.6.3 始動プロファイル (クランキング波形) | スターターモーター起動時のドロップ波形。数ミリ秒(ms)での急峻な立ち下がりと、その後のクランキング振動波形(100Hz前後のサイン波や方形波の組み合わせ)を忠実に再現できる高速スルーレート。 |
4.6.4 ロードダンプサージ (Load Dump) | バッテリ接続が外れた際のオルタネータ大サージ。これには専用のロードダンプジェネレータが必要(後述)。 |
4.7 過電圧 / 4.11 逆方向電圧 | 12V系に18V〜24V、24V系に36V〜全点灯電圧を長時間(60分など)印加、あるいはバッテリ逆接続(-14Vなど)をシミュレート。電源の定格電圧・電流容量が重要。 |
2. システムを構成する具体的な試験機器
実際の試験ベンチは、以下のような機器を組み合わせてシステム(自動テストシステム)として構築されます。
① 高速バイポーラ電源 / 4象限パワーアンプ
JASO D014-2試験の心臓部です。一般的な単一指向性の電源では、クランキング時の急速な電圧降下や、ECU側のコンデンサからの逆電流に対応できません。
必要特性: * 電圧の立ち上がり/立ち下がり(スルーレート)が数 〜 数十 レベルで高速であること。
電流のソース(供給)だけでなく、シンク(吸い込み)ができる4象限動作(バイポーラ)であること。
代表的な機器メーカー・シリーズ:
エヌエフ回路設計ブロック:BPシリーズ、As-161シリーズ(車載試験用高速バイポーラ電源)
高砂製作所:AAシリーズ
菊水電子工業:PBZシリーズ(インテリジェント・バイポーラ電源)
② マルチファンクションジェネレータ(任意波形発生器)
上記パワーアンプの外部入力へ、規格で定められた複雑なクランキング波形やリップル波形を入力するための信号源です。
必要特性: 各計測器メーカーから「ISO 16750-2 / JASO D014-2用シーケンスデータ」が提供されていることが多く、PC上の専用ソフトから波形パターンを流し込みます。
③ ロードダンプジェネレータ(サージ試験器)
「4.6.4 ロードダンプ」は、ピーク電圧が数十V〜100V以上に達し、かつ立ち上がりが数ms、減衰時間が数百msという特有のエネルギーの大きいパルス(Test A / Test B)です。
通常の電源の応答性ではこのパルスを作れないため、専用のサージ発生器(パルスジェネレータ)をラインに直列・並列に挿入します。
代表的な機器メーカー・シリーズ:
ノイズ研究所 (NoiseKen):ISS-6000シリーズなどの車載導伝サージ試験器
AMETEK CTS (旧EM TEST / Teseq):LD 200シリーズ、NSGシリーズ
④ デジタルオシロスコープ & 電流プローブ
試験中、DUT(供試品)の電源端子に入力されている波形が、本当にJASO D014-2の規定通りの電圧・時間幅(ターゲット波形)を満たしているかをキャプチャ・検証(キャリブレーション)するために必須です。
3. 試験環境構築・選定時のチェックポイント
もし実際に試験機器の選定や試験ベンチの構築を検討されている場合、以下の点に注意が必要です。
電流容量(大容量化への対応):
近年のECUやインバータ、電動パワステ(EPS)などは消費電流が非常に大きくなっています。バイポーラ電源を選ぶ際は、DUTの突入電流や最大動作電流をカバーできる「ピーク電流容量」があるかを確認する必要があります。
治具・配線のインダクタンス:
クランキング試験など高速な電圧変動を行う際、電源からDUTまでの配線が長いと配線インダクタンス( )によって波形がなまったり、異常なオーバーシュートが発生したりします。極力短く、太い配線(またはツイストペア)で接続できるレイアウト設計が必要です。
JASO D014-2 と ISO 7637-2 の棲み分け:
試験器のシステムアップを行う際、多くのシステムではJASO D014-2(ISO 16750-2)の電気負荷試験と、ISO 7637-2のマイクロ秒単位の高速伝導ノイズサージ(パルス1, 2a, 3a, 3b等)を共通のメイン電源やソフトで一括制御できるように組まれます。
試験の内製化、あるいは外部の試験サイト(JQA、UL、OKIエンジニアリングなどの委託試験ラボ)での評価、どちらを想定されているかによっても必要な機器構成やアプローチが変わります。
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