📢 ECN (Explicit Congestion Notification) とは
ECN (Explicit Congestion Notification) は、ネットワークの輻輳(混雑) を、パケットを破棄(ドロップ)せずに送信元と受信元に明示的に通知し、通信速度を調整するためのメカニズムです。
従来のTCP/IP通信では、ルーターやスイッチがパケットを破棄することで間接的に輻輳を知らせていましたが、ECNはパケットロスを避けることで、ネットワーク効率と遅延特性を改善します。
仕組みと動作の流れ
ECNは、IPヘッダーとTCPヘッダーにある特定のビット(フラグ)を使って、送信元、中間ルーター/スイッチ、受信側の3者が連携して動作します。
1. ネゴシエーション(ECNサポートの確認)
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送信側と受信側は、TCP接続の確立時(SYN/ACK)に、お互いがECNをサポートしていることを確認し、通知(ネゴシエート)します。
2. 送信側 (ECTビット)
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ECN対応の送信ホストは、送信するIPパケットのヘッダーにあるECNフィールド(2ビット)に、ECN対応トランスポートを示す ECT (ECN-Capable Transport) ビット(
01または10)を設定します。
3. 中間ノード/ルーター (CEビット)
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ECN対応のルーターやスイッチは、バッファが特定のしきい値を超えて混雑を検出し始めると、パケットを破棄する代わりに、そのパケットのECNフィールドを CE (Congestion Experienced) ビット(
11)に書き換えます。 -
この処理はパケットを破棄しないため、再送の必要がなく、遅延が最小限に抑えられます。
4. 受信側 (ECEフラグ)
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ECN対応の受信ホストは、パケットのIPヘッダーを見て、CEビット(
11)が設定されていることを検出すると、「輻輳が発生した」ことを認識します。 -
受信ホストは、送信元に返すTCP確認応答(ACKパケット)のヘッダーにある ECE (ECN-Echo) フラグを設定します。
5. 送信側での速度調整 (CWRフラグ)
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元の送信ホストは、受信ホストからのACKパケットにECEフラグが立っていることを確認し、輻輳が発生していることを知ります。
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送信ホストは、通常のTCP輻輳制御と同様に、輻輳ウィンドウサイズを縮小し、送信レートを低下させて輻輳を回避します。
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送信ホストは、輻輳ウィンドウを削減した後、次に送信するパケットのTCPヘッダーに CWR (Congestion Window Reduced) フラグを設定し、受信側に「調整を行った」ことを通知します。
📊 データセンターネットワークでの役割
ECNは、特にRoCEv2 (RDMA over Converged Ethernet) のようなロスレス(無損失) ネットワークが要求される環境で重要な役割を果たします。
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RoCEとロスレス: RDMA通信はパケットロスが発生するとパフォーマンスが大きく低下するため、ネットワークがロスレスであることが前提です。
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PFCの課題を補完: 従来のロスレス制御であるPFC (Priority Flow Control) は、ネットワーク全体に停止信号が伝播するPFCストームを引き起こす欠点がありました。
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ECNの利点: ECNは、PFCのような強制的な停止ではなく、エンドホスト間の協調的な速度調整を促すため、PFCストームの発生を抑制しつつ、ネットワークの利用効率を維持するのに役立ちます。
ECNは、AI/HPCなどの超高速ネットワークにおいて、低遅延と高スループットを両立させるために不可欠な技術となっています。
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