インジウムリン(InP)の物理的特性、特に格子定数とバンドギャップは、この材料が光通信の「王者」と呼ばれる最大の理由です。
これらがどのようにデバイス設計に影響するのか、具体的に解説します。
1. 物理特性の基本数値
InPの基本的なパラメータは以下の通りです。
| 特性項目 | 数値(300K / 室温時) | 備考 |
| 格子定数 | 5.869 Å (0.5869 nm) | 閃亜鉛鉱(Zinc-blende)構造 |
| バンドギャップエネルギー (Eg) | 1.344 eV | 直接遷移型 |
| 対応する発光波長 (λ) | 約 922 nm | InP単体での発光限界 |
2. なぜ「格子定数」が重要なのか?(格子整合)
InP基板の最大の強みは、その上に**「InGaAsP(インジウム・ガリウム・ヒ素・リン)」**などの多元系化合物を、結晶の歪みなく積み上げられる(エピタキシャル成長できる)点にあります。
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格子整合: 基板と成長させる層の格子定数が一致していると、欠陥の少ない高品質な結晶が作れます。
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波長の自由度: InPに格子整合させつつ、組成比($x$や$y$の割合)を変えることで、バンドギャップを 0.75 eV から 1.34 eV の間で自由に調整できます。
3. バンドギャップと光通信の関係
光ファイバー通信で最も重要なのは、信号が減衰しにくい**「1.31 μm帯(零分散)」と「1.55 μm帯(低損失)」**の光です。
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整合性: Eg を約 0.8 eV 付近に調整することで、まさにこの1.55 μm帯のレーザー光を作り出すことが可能になります。これはシリコン(1.12 eV / 間接遷移)では不可能な芸当です。
4. 温度特性と高速動作
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熱への強さ: バンドギャップが比較的広いため、高温環境下でも動作が安定しており、冷却機構を簡素化できるメリットがあります。
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高電子移動度: バンド構造の影響で、有効質量が小さく電子が非常に高速に動けるため、遮断周波数(fT)が高いデバイスが作れます。
エンジニアの視点: InPは「光」と「電気(高速通信)」の両方でトップクラスの特性を兼ね備えているため、現在のデータセンター内の高速スイッチングや、長距離光ファイバー網の心臓部として代替不可能な存在となっています。
次は、このInP基板を使って実際にどのようにレーザーダイオードや高速トランジスタ(HEMT)を製造するプロセスについて詳しく解説しましょうか?
出典:Google Gemini
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