プローブの帯域幅とは?オシロスコープとの組み合わせ方

プローブの帯域幅は、入力信号をどの周波数まで規定された振幅精度でオシロスコープへ伝送できるかを示す重要な性能です。

オシロスコープ本体の帯域幅が十分に広くても、接続するプローブの帯域幅が不足していると、測定システム全体の性能が低下します。その結果、信号振幅、立上り時間、オーバーシュートなどを正確に測定できない場合があります。

ここでは、プローブ帯域幅の意味、-3dB点、立上り時間との関係、オシロスコープとの組み合わせ方、選定時の注意点について解説します。

 
 
プローブの帯域幅とは

プローブの帯域幅は、低周波における出力振幅を基準として、出力振幅が規定された範囲内に保たれる周波数範囲です。

一般的には、振幅が低周波時の約70.7%まで低下する周波数を帯域幅として表します。この点は-3dB点と呼ばれます。

例えば、帯域幅が500MHzのプローブでは、500MHzにおける出力振幅が低周波時の約70.7%になる場合があります。

帯域幅の上限付近では、信号が完全に失われるわけではありませんが、振幅誤差や位相誤差が大きくなります。

 
 
-3dB点とは

デシベル(dB)は、入力と出力の比率を対数で表したものです。

電圧比の場合、-3dBは以下の関係に相当します。

出力電圧÷入力電圧≒0.707

つまり、帯域幅として表示された周波数では、測定される振幅が本来の約70.7%まで低下する可能性があります。

帯域幅が測定信号の周波数と同じであれば十分という意味ではありません。正確な振幅測定を行うには、測定信号より広い帯域幅が必要です。

 
 
帯域幅不足による影響

プローブの帯域幅が不足すると、高周波成分が減衰し、表示波形が実際の波形と異なるものになります。

代表的な影響は以下の通りです。

・ 正弦波の振幅が小さく表示される
・ パルス波形の立上りが遅く表示される
・ 立下り時間が長く表示される
・ 方形波の角が丸くなる
・ 短いパルスを正しく測定できない
・ オーバーシュートが小さく表示される
・ リンギングの周波数や振幅が変化する
・ ジッタやタイミング測定の誤差が増える

特に高速デジタル信号やスイッチング波形では、基本周波数だけでなく、高調波成分を含めて測定する必要があります。

 
 
方形波に含まれる高周波成分

理想的な方形波は、基本周波数と複数の奇数次高調波によって構成されます。

例えば、100MHzの方形波には、100MHzの基本波だけでなく、300MHz、500MHz、700MHzなどの高調波成分が含まれています。

これらの高周波成分が帯域制限によって減衰すると、方形波の角が丸くなり、立上り時間が遅く表示されます。

そのため、デジタル信号の測定では、クロック周波数だけを基準にプローブ帯域幅を選定することはできません。

 
 
信号周波数と立上り時間

デジタル信号の測定で重要なのは、繰り返し周波数より立上り時間です。

同じ10MHzのクロック信号であっても、立上り時間が10nsの信号と1nsの信号では、必要な測定帯域幅が異なります。

立上り時間が短いほど、高い周波数成分が含まれるため、より広い帯域幅が必要です。

高速デジタル信号、クロック、パルス、スイッチング波形では、信号のデータレートや繰り返し周波数だけでなく、デバイスの出力立上り時間を確認します。

 
 
帯域幅と立上り時間の関係

単純な1次応答を持つ測定系では、帯域幅と立上り時間の関係を以下の式で近似できます。

立上り時間≒0.35÷帯域幅

帯域幅の単位をHzとした場合、立上り時間は秒で求められます。

例えば、帯域幅350MHzの測定系では、立上り時間は概算で以下のようになります。

0.35÷350MHz=約1ns

これは測定システム自身が持つ立上り時間です。実際に表示される立上り時間には、測定信号、プローブ、オシロスコープの応答がすべて含まれます。

なお、測定系の周波数応答によっては0.35以外の係数が適用される場合があります。正確な値は製品の仕様書で確認します。

 
 
オシロスコープとプローブのシステム帯域幅

測定システム全体の帯域幅は、オシロスコープ本体とプローブの帯域幅のうち、単純に低い方の値と同じになるわけではありません。

それぞれが独立した帯域制限を持つため、組み合わせたシステム帯域幅は、一般に個々の帯域幅より狭くなります。

ガウシアン応答に近いシステムでは、概算として以下の式を使用できます。

システム帯域幅≒1÷√{(1÷オシロスコープ帯域幅²)+(1÷プローブ帯域幅²)}

例えば、帯域幅500MHzのオシロスコープと500MHzのプローブを組み合わせた場合、システム帯域幅は概算で約354MHzになります。

500MHzのオシロスコープへ500MHzのプローブを接続しても、測定システム全体が500MHzになるとは限らない点に注意が必要です。

 
 
システム立上り時間

測定システム全体の立上り時間は、信号、プローブ、オシロスコープそれぞれの立上り時間から概算できます。

表示される立上り時間≒√{信号立上り時間²+プローブ立上り時間²+オシロスコープ立上り時間²}

プローブとオシロスコープの立上り時間が測定信号に対して十分に短ければ、測定誤差を小さくできます。

一方、測定システムの立上り時間が信号の立上り時間に近い場合、表示される波形は実際より遅くなります。

 
 
必要な帯域幅の目安

正弦波の振幅を測定する場合、測定システムの帯域幅は信号周波数より十分に広いものを選定します。

一般的な目安として、測定システムの帯域幅を信号周波数の3倍程度にすると、振幅誤差をある程度抑えられます。より高い振幅精度が必要な場合は、5倍程度またはそれ以上の帯域幅を検討します。

デジタル信号の場合は、信号の立上り時間から必要帯域幅を判断します。

測定システムの立上り時間を測定信号の立上り時間の3分の1以下にすると、立上り時間測定の誤差を比較的小さくできます。

必要な測定精度によって適切な倍率は異なるため、製品の仕様と測定目的に合わせて判断します。

 
 
プローブ帯域幅は接続方法で変わる

プローブのデータシートに記載された帯域幅は、指定されたオシロスコープ、プローブチップ、グランドアクセサリ、接続条件で測定された値です。

長いグランドリード、フックチップ、延長リード、変換アダプタなどを使用すると、寄生インダクタンスや寄生容量が増加し、実際の帯域幅が低下する場合があります。

特に高速信号測定では、以下の接続方法が帯域幅に影響します。

・ グランドリードの長さ
・ プローブチップの種類
・ 接続リードの長さ
・ プローブチップとGND間の距離
・ 変換アダプタの使用
・ PCBへのはんだ付け方法
・ 測定ポイントのインピーダンス

広い帯域幅を維持するには、プローブ先端とグランド接続をできるだけ短くします。

 
 
グランドリードによる共振

長いグランドリードには寄生インダクタンスが存在します。この寄生インダクタンスとプローブの入力容量が共振回路を形成すると、特定の周波数でリンギングやオーバーシュートが発生します。

この場合、プローブ本体の公称帯域幅が十分でも、実際の測定では波形が大きく歪む可能性があります。

高速信号を測定する場合は、一般的なワニ口クリップ付きグランドリードではなく、グランドスプリング、同軸アダプタ、PCBはんだ付け式アクセサリなどを使用します。

 
 
帯域幅とノイズの関係

帯域幅を広くすると、測定対象の高周波成分を観測できる一方で、測定システムへ取り込まれるノイズも増加します。

微小信号、電源リップル、低周波信号などを測定する場合、必要以上に広い帯域幅を使用すると波形が見にくくなる場合があります。

このような場合は、オシロスコープの帯域制限機能を使用して、不要な高周波ノイズを除去します。

代表的な帯域制限には以下があります。

・ 20MHz帯域制限
・ 200MHz帯域制限
・ ユーザー指定の帯域制限
・ デジタルフィルタ

帯域制限を使用するとノイズは減少しますが、信号の立上りや高周波成分も失われます。測定目的に応じて適切に設定します。

 
 
帯域幅とサンプルレートの違い

帯域幅とサンプルレートは異なる性能です。

帯域幅は、アナログ入力回路が通過させられる周波数範囲を示します。

サンプルレートは、オシロスコープが1秒間に信号を何回デジタル変換するかを示します。

サンプルレートが高くても、プローブやオシロスコープのアナログ帯域幅が不足している場合、高周波成分は入力段階で失われます。

一方、帯域幅が十分でも、サンプルレートが不足すると波形を正しく再現できず、エイリアシングが発生する可能性があります。

正確な測定には、帯域幅とサンプルレートの両方が必要です。

 
 
パッシブプローブの帯域幅

パッシブプローブの帯域幅は、数MHzから1GHz程度まで製品によって大きく異なります。

一般的な10:1パッシブプローブは、1:1プローブより入力容量が小さく、広い帯域幅を持つ傾向があります。

1:1と10:1を切り替えられるプローブでは、1:1設定時に帯域幅が大幅に狭くなる場合があります。

また、パッシブプローブは使用するオシロスコープの入力容量に合わせて補正する必要があります。補正が正しくない場合、規定された帯域幅と周波数特性を得られません。

 
 
アクティブプローブの帯域幅

アクティブプローブは、低入力容量と能動回路によって広い帯域幅を実現します。

GHz帯の高速信号を測定する場合は、アクティブプローブや高速差動プローブが使用されます。

ただし、アクティブプローブは帯域幅が広いだけでなく、以下の仕様も確認する必要があります。

・ 入力容量
・ 入力抵抗
・ ダイナミックレンジ
・ オフセット範囲
・ 最大入力電圧
・ ノイズ
・ プローブチップの周波数特性

帯域幅が十分でも、入力信号がダイナミックレンジを超える場合や、プローブ負荷が回路へ影響する場合は正確に測定できません。

 
 
差動プローブの帯域幅

差動プローブでは、差動信号に対する帯域幅だけでなく、CMRRの周波数特性も重要です。

高い周波数でCMRRが低下すると、両入力に共通する信号が測定波形へ混入します。

高電圧スイッチング回路では、差動プローブの帯域幅が十分でも、高周波におけるCMRRが不足すると大きな測定誤差が発生する可能性があります。

差動プローブを選定する際は、以下を確認します。

・ 差動帯域幅
・ 立上り時間
・ CMRRと規定周波数
・ コモンモード入力範囲
・ 周波数に対する電圧ディレーティング
・ プローブチップを含めたシステム特性

帯域幅の数値だけで性能を判断しないことが重要です。

 
 
電流プローブの帯域幅

電流プローブの帯域幅は、測定できる電流変化の速さを示します。

帯域幅が不足すると、ピーク電流が小さく表示され、スイッチング電流の立上りやリンギングを正しく観測できません。

また、電流プローブでは、周波数が高くなるにつれて測定可能な最大電流が低下する場合があります。

選定時には、以下を確認します。

・ 周波数帯域
・ 立上り時間
・ 最大連続電流
・ 最大ピーク電流
・ 電流ディレーティング
・ アンペア秒積

広帯域であっても、大きな高周波電流を測定できるとは限りません。

 
 
プローブ帯域幅の選定ポイント

プローブの帯域幅を選定する際は、以下の項目を確認します。

・ 測定信号の周波数
・ 信号の立上り時間と立下り時間
・ 必要な振幅精度
・ 必要な時間測定精度
・ オシロスコープ本体の帯域幅
・ プローブとオシロスコープのシステム帯域幅
・ 使用するプローブチップ
・ グランド接続方法
・ 入力容量とプローブ負荷
・ ノイズ性能
・ CMRRの周波数特性
・ 電圧または電流のディレーティング

公称帯域幅だけでなく、実際の接続条件を含めた測定システム全体で判断します。

 
 
まとめ

プローブの帯域幅は、入力信号をどの周波数まで規定された振幅特性でオシロスコープへ伝送できるかを示します。

帯域幅として示される-3dB点では、振幅が低周波時の約70.7%まで低下するため、測定信号と同じ帯域幅のプローブを選ぶだけでは十分な測定精度を得られない場合があります。

高速デジタル信号やパルス波形では、繰り返し周波数だけでなく、立上り時間を基準に必要な帯域幅を判断します。

また、オシロスコープとプローブを組み合わせたシステム帯域幅は、それぞれ単体の帯域幅より狭くなります。プローブチップ、グランドリード、アダプタなども周波数特性へ影響するため、実際の接続条件を含めて選定することが重要です。

 
 
T&Mコーポレーション株式会社の取り扱いプローブ

T&Mコーポレーション株式会社では、パッシブプローブ、アクティブプローブ、差動プローブ、高電圧差動プローブ、光アイソレーション差動プローブ、電流プローブなど、さまざまな周波数帯域に対応したプローブを取り扱っております。

測定する信号の周波数、立上り時間、電圧・電流範囲、入力容量、CMRR、使用するオシロスコープなどに応じて、適切なプローブをご提案いたします。プローブの選定、製品仕様、対応機種、お見積りなどについては、T&Mコーポレーション株式会社までお気軽にお問い合わせください。

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