プローブの減衰比とは?1X・10X・100Xの違い

プローブの減衰比は、測定対象の信号をどの程度小さくしてオシロスコープへ入力するかを示す値です。

代表的な減衰比には、1:1(1X)、10:1(10X)、100:1(100X)、1000:1(1000X)などがあります。減衰比によって、測定可能な電圧範囲、入力抵抗、入力容量、周波数帯域、ノイズ性能が変化します。

ここでは、プローブの減衰比の意味、1X・10X・100Xの違い、オシロスコープの設定方法、選定時の注意点について解説します。

 
 
減衰比とは

減衰比は、プローブ先端に入力された信号電圧と、オシロスコープの入力端子へ伝送される電圧の比率です。

10:1プローブの場合、プローブ先端に入力された電圧を10分の1にしてオシロスコープへ伝送します。

例えば、プローブ先端に10Vの信号を入力した場合、各減衰比におけるオシロスコープ入力端子の電圧は以下のようになります。

・ 1:1プローブ:10V
・ 10:1プローブ:1V
・ 100:1プローブ:0.1V
・ 1000:1プローブ:0.01V

オシロスコープへ正しい減衰比を設定すると、画面上には換算後の実際の入力電圧が表示されます。

 
 
1X・10Xという表記

プローブの減衰比は、以下のように複数の方法で表記されます。

・ 1:1、1X、×1
・ 10:1、10X、×10
・ 100:1、100X、×100
・ 1000:1、1000X、×1000

「10Xプローブ」は、入力信号を10倍に増幅するという意味ではありません。実際には入力信号を10分の1に減衰させ、オシロスコープ側で表示値を10倍に換算します。

日本語では「10対1プローブ」「10分の1プローブ」「10倍プローブ」などと呼ばれることがありますが、製品の仕様では10:1または10Xという表記が一般的です。

 
 
1:1プローブの特徴

1:1プローブは、入力信号を減衰させず、そのままオシロスコープへ伝送します。

主な特長は以下の通りです。

・ 入力信号を減衰させない
・ 小振幅信号を観測しやすい
・ プローブによる信号減衰がない
・ 入力抵抗は一般的にオシロスコープの入力抵抗と同程度
・ 入力容量が比較的大きい
・ 周波数帯域が狭い場合が多い
・ 測定可能な最大電圧が低い

1:1プローブは、低周波の微小信号、センサ出力、オーディオ信号、電源リップルなどの測定に使用されます。

ただし、入力容量が大きいため、高速信号や高インピーダンス回路へ接続すると、回路動作や波形へ大きな影響を与える場合があります。

 
 
10:1プローブの特徴

10:1プローブは、入力信号を10分の1に減衰させてオシロスコープへ伝送します。

一般的な電子回路の測定で最も広く使用されている減衰比です。

主な特長は以下の通りです。

・ 入力信号を10分の1に減衰
・ 入力抵抗が比較的高い
・ 1:1プローブより入力容量が小さい
・ 回路へ与える負荷を抑えやすい
・ 1:1プローブより広い帯域幅を持つ場合が多い
・ 測定できる電圧範囲が広い
・ 微小信号ではノイズの影響が相対的に大きくなる

一般的なデジタル回路、マイコン、電源回路、アナログ回路などでは、最初に10:1プローブの使用を検討します。

 
 
100:1プローブの特徴

100:1プローブは、入力信号を100分の1に減衰させるプローブです。

一般的な10:1プローブでは測定できない高電圧信号に使用されます。

主な用途は以下の通りです。

・ 高電圧電源
・ パワー半導体回路
・ インバータ
・ スイッチング電源
・ 高電圧パルス
・ 接地基準の高電圧信号

100:1プローブを使用するとオシロスコープへ入力される電圧は小さくなりますが、プローブ本体の最大入力電圧、安全定格、電圧ディレーティングを超えて使用することはできません。

減衰比が100:1であることだけを理由に、任意の高電圧を安全に測定できるわけではありません。

 
 
1000:1プローブの特徴

1000:1プローブは、入力信号を1000分の1に減衰させる高電圧プローブです。

数kVから数十kVの信号に対応する製品がありますが、最大入力電圧、周波数帯域、使用可能なパルス幅、安全規格などは製品によって大きく異なります。

高い減衰比ではオシロスコープへ伝送される信号が非常に小さくなるため、微小な変動成分を測定する際はノイズの影響が大きくなります。

高電圧測定では、以下の項目を必ず確認します。

・ 最大入力電圧
・ 最大パルス電圧
・ 周波数に対する電圧ディレーティング
・ 測定カテゴリ(CAT)
・ 入力抵抗と入力容量
・ オシロスコープの入力定格
・ プローブとアクセサリの安全定格

1000:1プローブは、十分な高電圧測定の知識を持つ作業者が、取扱説明書に従って使用する必要があります。

 
 
1X/10X切替式プローブ

パッシブプローブには、スイッチによって1Xと10Xを切り替えられる製品があります。

1X設定では入力信号を減衰させず、10X設定では10分の1に減衰させます。

一つのプローブで小振幅信号と一般的な信号の両方を測定できますが、設定によって性能が大きく変わります。

主な違いは以下の通りです。

・ 1X設定:高感度、狭帯域、大きい入力容量
・ 10X設定:低感度、広帯域、小さい入力容量
・ 1X設定:測定可能電圧が低い
・ 10X設定:測定可能電圧が高い

切替スイッチが中間位置にある場合や、スイッチ接点に異常がある場合は、正しい波形を測定できません。測定前にスイッチ位置を確認します。

 
 
減衰回路の仕組み

一般的な10:1パッシブプローブは、プローブ内部の抵抗とオシロスコープの入力抵抗によって分圧回路を構成します。

オシロスコープの入力抵抗が1MΩの場合、プローブ側に約9MΩの直列抵抗を配置することで、全体として10:1の分圧比を形成します。

直流では抵抗によって正しい減衰比を得られますが、交流や高速信号では、オシロスコープの入力容量とプローブケーブルの容量も影響します。

そのため、10:1パッシブプローブには、抵抗分圧比と容量分圧比を一致させるための補正回路が設けられています。

 
 
プローブ補正と減衰比

10:1パッシブプローブを使用する際は、オシロスコープの入力容量に合わせてプローブ補正を行います。

補正が正しくない場合、減衰比が周波数によって変化し、方形波やパルス波形が歪みます。

代表的な状態は以下の通りです。

・ 補正不足:方形波の角が丸くなる
・ 適正補正:平坦で正しい方形波になる
・ 過補正:立上り部分にオーバーシュートが発生する

プローブを別のオシロスコープや別の入力チャンネルへ接続した場合は、測定前に補正状態を確認します。

 
 
減衰比と入力抵抗

減衰比が高いプローブは、一般的に高い入力抵抗を持ちます。

例えば、代表的な組み合わせは以下の通りです。

・ 1:1プローブ:約1MΩ
・ 10:1プローブ:約10MΩ
・ 100:1プローブ:数十MΩから数百MΩ

入力抵抗が高いほど、直流や低周波において測定対象から流れ込む電流が小さくなり、回路へ与える負荷を抑えられます。

ただし、入力インピーダンスは抵抗だけで決まりません。周波数が高くなると、入力容量の影響によってインピーダンスが低下します。

 
 
減衰比と入力容量

一般的なパッシブプローブでは、10:1設定の方が1:1設定より入力容量が小さくなります。

入力容量が小さいと、高周波におけるプローブ負荷を抑えやすく、信号の立上り時間や振幅への影響が小さくなります。

そのため、小振幅信号であっても、測定対象が高速信号または高インピーダンス回路の場合は、1:1ではなく10:1プローブを使用した方が正確な結果を得られる場合があります。

微小信号を測定する際は、信号減衰によるノイズ増加と、入力容量による回路負荷の両方を考慮します。

 
 
減衰比と周波数帯域

一般的な1X/10X切替式プローブでは、10X設定の方が広い周波数帯域を持ちます。

例えば、10X設定で数百MHzの帯域幅を持つプローブでも、1X設定では数MHzから数十MHz程度に制限される場合があります。

1X設定で高速信号を測定すると、以下のような影響が発生する可能性があります。

・ 立上り時間が遅く表示される
・ 信号振幅が小さく表示される
・ 方形波の角が丸くなる
・ 短いパルスを検出できない
・ タイミング測定の誤差が増える

減衰比を切り替えた場合は、その設定における帯域幅も確認します。

 
 
減衰比とノイズ

減衰比が高くなると、オシロスコープへ入力される信号振幅は小さくなります。

例えば、10:1プローブでは信号を10分の1に減衰させるため、オシロスコープ入力換算のノイズは測定対象側で10倍に換算されます。

100:1プローブでは、同じオシロスコープ入力ノイズが測定対象側で100倍に換算されます。

そのため、高減衰比プローブは高電圧測定に適していますが、微小信号や小さなリップルの測定には不利になる場合があります。

必要以上に高い減衰比を選ばず、入力電圧範囲と必要な感度に適した減衰比を使用します。

 
 
減衰比とオシロスコープの垂直感度

オシロスコープにプローブの減衰比を設定すると、垂直軸の表示値も自動的に換算されます。

例えば、オシロスコープの内部設定が100mV/divの場合、表示上の垂直感度は以下のようになります。

・ 1X設定:100mV/div
・ 10X設定:1V/div
・ 100X設定:10V/div
・ 1000X設定:100V/div

減衰比が高くなるほど、画面上で設定できる最小電圧スケールも大きくなります。

微小信号を測定する場合は、必要な垂直感度を設定できるか確認します。

 
 
減衰比の設定ミス

プローブの実際の減衰比とオシロスコープの設定が一致していない場合、波形の形状は表示されても、電圧値が誤って表示されます。

例えば、10:1プローブを使用しているのに、オシロスコープを1Xへ設定した場合、表示値は実際の10分の1になります。

反対に、1:1プローブを使用しているのに10Xへ設定すると、表示値は実際の10倍になります。

減衰比の設定ミスは、以下の測定結果へ影響します。

・ ピーク電圧
・ 実効値
・ 平均値
・ 立上りレベル
・ 電力演算
・ 自動測定結果
・ 保存した波形データ

測定前に、プローブ本体の設定とオシロスコープの設定が一致していることを確認します。

 
 
プローブ自動認識機能

専用プローブインターフェースや識別ピンを備えたプローブでは、オシロスコープがプローブの種類と減衰比を自動的に認識できる場合があります。

自動認識される主な情報には以下があります。

・ プローブの種類
・ 減衰比
・ 表示単位
・ 最大入力範囲
・ オフセット設定
・ プローブの状態

自動認識機能を使用すると設定ミスを減らせますが、変換アダプタや汎用BNCプローブを使用した場合は、自動認識されないことがあります。

自動認識された場合でも、画面に表示されたプローブ情報と実際の接続を確認します。

 
 
差動プローブの減衰比

差動プローブにも、10:1、50:1、100:1、500:1などの減衰比があります。

製品によっては、測定対象に合わせて減衰比を切り替えられます。

減衰比を高くすると差動入力範囲が広がりますが、微小信号に対する感度は低下します。

差動プローブでは減衰比だけでなく、以下の仕様も確認します。

・ 差動入力範囲
・ コモンモード入力範囲
・ 最大入力電圧
・ CMRR
・ ノイズ
・ 周波数帯域
・ オフセット範囲

差動電圧が小さくてもコモンモード電圧が大きい場合があるため、減衰比だけで使用可否を判断することはできません。

 
 
電流プローブの変換比

電流プローブでは、電流を電圧へ変換する比率をV/AまたはmV/Aで表します。

例えば、変換比が100mV/Aの電流プローブでは、1Aの電流に対して100mVを出力します。

製品によっては、10mV/A、100mV/A、1V/Aなどのレンジを切り替えられます。

高感度レンジは小電流測定に適していますが、最大測定電流が小さくなります。低感度レンジは大電流を測定できますが、微小電流の分解能が低下します。

電流プローブでは「減衰比」より「変換比」または「感度」という表現が一般的です。

 
 
適切な減衰比の選び方

適切な減衰比を選ぶ基本的な考え方は以下の通りです。

・ 低周波の微小信号:1:1を検討
・ 一般的な電子回路:10:1を基本に検討
・ 数百V程度の高電圧:100:1などを検討
・ 数kV以上の高電圧:1000:1などを検討
・ 高速信号:入力容量と帯域幅を優先
・ 微小リップル:ノイズと垂直感度を優先

入力信号がオシロスコープの画面内に収まる範囲で、できるだけ低い減衰比を使用すると感度を確保しやすくなります。

ただし、最大入力電圧、帯域幅、入力容量、安全定格を満たすことが前提です。

 
 
減衰比を選ぶ際の確認項目

プローブの減衰比を選定する際は、以下の項目を確認します。

・ 測定する最大電圧
・ 測定する最小信号振幅
・ オシロスコープの最大入力電圧
・ 必要な垂直感度
・ プローブの最大入力電圧
・ 周波数帯域
・ 入力抵抗
・ 入力容量
・ ノイズ
・ 測定カテゴリ(CAT)
・ 電圧ディレーティング
・ オシロスコープとの互換性

減衰比が高いほど安全または高性能になるわけではありません。測定対象と目的に適した減衰比を選ぶことが重要です。

 
 
まとめ

プローブの減衰比は、測定対象の信号をどの程度小さくしてオシロスコープへ入力するかを示す値です。

1:1プローブは微小・低周波信号、10:1プローブは一般的な電子回路、100:1以上のプローブは高電圧信号の測定に使用されます。

減衰比を高くすると測定可能な電圧範囲が広がり、入力容量を小さくできる場合があります。一方、オシロスコープへ入力される信号が小さくなるため、微小信号ではノイズと感度が問題になります。

正確な測定を行うには、プローブの実際の減衰比とオシロスコープの設定を一致させ、帯域幅、入力容量、最大入力電圧、安全定格を含めて適切な減衰比を選定することが重要です。

 
 
T&Mコーポレーション株式会社の取り扱いプローブ

T&Mコーポレーション株式会社では、1:1/10:1パッシブプローブ、高電圧プローブ、高電圧差動プローブ、光アイソレーション差動プローブ、電流プローブなど、さまざまな減衰比と測定レンジに対応したプローブを取り扱っております。

測定する最大電圧、最小信号振幅、周波数帯域、入力容量、安全規格、使用するオシロスコープなどに応じて、適切なプローブをご提案いたします。プローブの選定、製品仕様、対応機種、お見積りなどについては、T&Mコーポレーション株式会社までお気軽にお問い合わせください。

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