プローブの構造と各部の名称

オシロスコープ用プローブは、プローブチップ、グランドリード、ケーブル、補正ボックス、コネクタなど、複数の部品で構成されています。

各部品には、信号を取り出す、基準電位へ接続する、周波数特性を補正する、オシロスコープへ信号を伝送するといった役割があります。

ここでは、一般的なパッシブプローブを中心に、プローブ各部の名称、役割、取り扱い上の注意点について解説します。

 
 
プローブの基本構造

一般的なパッシブプローブは、以下の部分で構成されています。

・ プローブ本体
・ プローブチップ
・ フックチップ
・ 絶縁スリーブ
・ グランド接続部
・ グランドリード
・ プローブケーブル
・ 補正ボックス
・ 補正用トリマ
・ 減衰比切替スイッチ
・ BNCコネクタ
・ プローブ識別端子

製品によって構造や名称は異なりますが、基本的な役割は共通しています。

高速アクティブプローブ、差動プローブ、電流プローブなどでは、専用アンプ、センサヘッド、電源回路、光ファイバなどが追加されます。

 
 
プローブ本体

プローブ本体は、測定時に手で保持する部分です。内部には抵抗器、コンデンサ、補正回路などが収納されています。

プローブ本体には、以下の部品が設けられている場合があります。

・ 交換式プローブチップ
・ フックチップ固定部
・ グランドリード接続端子
・ 減衰比切替スイッチ
・ 識別用カラーバンド
・ フィンガーガード
・ 電圧定格表示
・ 測定カテゴリ表示

高電圧プローブでは、測定者の手が高電圧部分へ近づかないように、フィンガーガードや長い絶縁部が設けられています。

プローブ本体を分解すると、周波数特性や安全性能が失われる可能性があるため、自己判断で分解してはいけません。

 
 
プローブチップ

プローブチップは、測定ポイントへ直接接触させる導電性の先端部分です。

一般的には、針状またはピン状の金属部品が使用されます。

主な種類は以下の通りです。

・ 固定式チップ
・ 交換式チップ
・ スプリング式チップ
・ ポゴピン式チップ
・ 極細チップ
・ 絶縁保護付きチップ
・ はんだ付け式チップ

鋭いチップは細かい測定ポイントへ接触しやすい一方、隣接する端子を短絡させる危険があります。

チップが摩耗、変形、酸化すると接触抵抗が増加し、波形が不安定になる場合があります。損傷したチップは、指定された交換部品へ取り替えます。

 
 
フックチップ

フックチップは、部品リードやテストポイントへ引っ掛けて固定するためのアクセサリです。

プローブ先端の操作部を押すと小さなフックが出て、離すと測定ポイントをつかむ構造が一般的です。

主な特長は以下の通りです。

・ 測定ポイントへ固定できる
・ 手を離して測定しやすい
・ 長時間測定に適している
・ 部品リードへ接続しやすい
・ 鋭いチップより短絡の危険を抑えやすい

一方、フックチップを取り付けると接続部分が長くなり、寄生インダクタンスや寄生容量が増加します。

高速信号の測定では、フックチップによって帯域幅が低下したり、リンギングが発生したりする場合があります。

 
 
絶縁スリーブ

絶縁スリーブは、プローブチップ周辺の露出金属部分を覆う部品です。

隣接する端子との短絡を防ぎ、測定者が導電部へ触れる危険を抑えます。

高電圧測定では、絶縁スリーブの装着状態が安全性能に影響します。

製品によっては、低電圧測定用の長い露出チップと、高CAT測定用の短い露出チップを切り替えられる構造があります。

絶縁スリーブに亀裂、欠損、変色、汚れがある場合は使用を中止します。

 
 
フィンガーガード

フィンガーガードは、測定者の指がプローブ先端の高電位部分へ近づくことを防ぐための突起またはつば状の部分です。

特に高電圧プローブやCAT定格を持つプローブでは、フィンガーガードより先端側へ指を出してはいけません。

測定中は、フィンガーガードより後方の指定された保持部分を持ちます。

高電圧測定ではプローブを手で保持せず、適切なホルダーや固定治具の使用が推奨される場合があります。使用方法は製品の取扱説明書に従います。

 
 
グランド接続端子

グランド接続端子は、グランドリード、グランドスプリング、接地クリップなどを取り付ける部分です。

一般的なパッシブプローブでは、プローブチップの近くに金属リングや専用端子が設けられています。

高速測定では、グランド接続端子と測定回路のGNDをできるだけ短く接続することが重要です。

接続端子に汚れ、酸化、緩みがあると、接触不良やノイズの原因になります。

 
 
グランドリード

グランドリードは、プローブの基準電位を測定対象のGNDへ接続するためのリード線です。

先端には、ワニ口クリップ、ミニクリップ、フックなどが取り付けられています。

一般的なベンチトップ型オシロスコープでは、プローブのグランドリードがBNCコネクタの外部導体を通して保護接地へ接続されています。

そのため、グランドリードを接地電位以外の場所へ接続すると、回路が短絡する可能性があります。

また、長いグランドリードには寄生インダクタンスが存在します。高速信号の測定では、リンギング、オーバーシュート、ノイズなどの原因になります。

 
 
グランドスプリング

グランドスプリングは、プローブチップ付近から測定対象のGNDへ短い距離で接続するためのばね状アクセサリです。

一般的なグランドリードより接続経路が短く、寄生インダクタンスを大幅に抑えられます。

主な用途は以下の通りです。

・ 高速デジタル信号
・ クロック信号
・ スイッチング波形
・ 電源リップル
・ オーバーシュートやリンギングの測定
・ 高周波ノイズの観測

グランドスプリングを使用するには、測定ポイントの近くにGND端子または露出したGNDパターンが必要です。

 
 
プローブケーブル

プローブケーブルは、プローブ本体からオシロスコープへ信号を伝送するケーブルです。

外観は一般的な同軸ケーブルに似ていますが、高インピーダンスパッシブプローブでは、減衰特性や補正特性を持つ専用ケーブルが使用される場合があります。

プローブケーブルには、以下の性能が求められます。

・ 信号損失が小さい
・ 外来ノイズを遮蔽できる
・ 規定された周波数特性を持つ
・ 曲げに対する耐久性がある
・ プローブ本体を操作しやすい柔軟性を持つ

ケーブルを強く引っ張る、鋭く折り曲げる、ねじる、キャスターで踏むなどの行為は、内部導体やシールドの損傷につながります。

 
 
ストレインリリーフ

ストレインリリーフは、プローブ本体とケーブルの接続部、およびケーブルとコネクタの接続部を保護する柔軟な部品です。

ケーブルを曲げたときの力が一点に集中することを防ぎ、内部導体の断線を抑えます。

ストレインリリーフ付近は、繰り返しの曲げによって劣化しやすい部分です。

以下の症状がある場合は、内部断線の可能性があります。

・ ケーブルを動かすと波形が途切れる
・ ノイズが増える
・ 信号振幅が変化する
・ 特定の角度でのみ測定できる
・ 外皮に亀裂や膨らみがある

異常がある場合は使用を中止し、修理または交換を検討します。

 
 
補正ボックス

補正ボックスは、プローブケーブルのオシロスコープ側に配置されるケースです。

内部には、周波数特性、減衰比、利得、オフセットなどを調整する回路が収納されています。

パッシブプローブでは、低周波補正用のトリマコンデンサが設けられている場合があります。

高性能プローブでは、以下の回路が組み込まれることもあります。

・ 高周波補正回路
・ 差動アンプ
・ オフセット回路
・ 減衰比切替回路
・ プローブ識別回路
・ 電源回路
・ 校正データメモリ

補正ボックスを開けたり、指定されていない調整部を操作したりすると、校正状態が失われる可能性があります。

 
 
補正用トリマ

補正用トリマは、パッシブプローブをオシロスコープの入力容量に合わせるための調整部品です。

一般的には、補正ボックスまたはプローブ本体に小さな調整穴が設けられています。

付属の絶縁調整工具を使用し、オシロスコープの校正信号出力で表示される方形波が適正な形になるように調整します。

金属製ドライバーを使用すると、調整中に容量が変化したり、トリマを損傷したりする場合があります。

調整範囲を超えて無理に回さないことが重要です。

 
 
減衰比切替スイッチ

1X/10X切替式プローブには、減衰比を変更するためのスイッチがあります。

1X設定と10X設定では、以下の性能が変化します。

・ 入力抵抗
・ 入力容量
・ 周波数帯域
・ 最大入力電圧
・ 測定感度
・ ノイズ性能

切替スイッチの位置と、オシロスコープ側のプローブ設定を一致させます。

スイッチ接点が摩耗または汚損すると、波形が途切れたり、減衰比が不安定になったりする場合があります。

 
 
BNCコネクタ

BNCコネクタは、プローブをオシロスコープへ接続するために広く使用される同軸コネクタです。

差し込んで回転させるバヨネットロック構造により、簡単に着脱できます。

BNCコネクタは、以下の部分で構成されています。

・ 中心導体
・ 外部導体
・ 絶縁体
・ バヨネットロック部
・ ケーブル接続部

コネクタの中心ピンが曲がっている場合や、外部導体に緩みがある場合は使用しないでください。

また、BNCコネクタが同じ形状でも、50Ω用と75Ω用があります。測定システムのインピーダンスに適したコネクタを使用します。

 
 
プローブ識別端子

一部のプローブには、減衰比やプローブの種類をオシロスコープへ伝える識別端子が設けられています。

BNCコネクタ周辺に追加の接点があり、オシロスコープがプローブ情報を読み取ります。

自動認識される情報には以下があります。

・ プローブの種類
・ 減衰比
・ 表示単位
・ オフセット範囲
・ 最大入力範囲
・ プローブの状態
・ シリアル番号
・ 校正情報

専用プローブインターフェースでは、識別だけでなく、プローブへの電源供給や制御も行います。

 
 
アクティブプローブの構造

アクティブプローブは、プローブヘッド、入力アンプ、ケーブル、補正・電源部、専用インターフェースなどで構成されています。

プローブヘッドを小型化し、FETやバッファアンプを先端付近に配置することで、入力容量を小さくしています。

主な構成部品は以下の通りです。

・ 交換式プローブチップ
・ 小型プローブヘッド
・ FET入力回路
・ バッファアンプ
・ 低損失ケーブル
・ 補正回路
・ オフセット回路
・ 専用プローブコネクタ

入力部は過電圧や静電気に弱い場合があるため、取り扱いに注意が必要です。

 
 
差動プローブの構造

差動プローブには、プラス入力とマイナス入力の2つの信号入力があります。

両入力の電圧差を差動アンプで増幅し、共通する電圧成分を抑制します。

主な構成部品は以下の通りです。

・ プラス入力チップ
・ マイナス入力チップ
・ 差動入力回路
・ 差動アンプ
・ 減衰回路
・ CMRR補正回路
・ オフセット回路
・ 電源または専用インターフェース

プラス側とマイナス側の接続長や特性が異なると、CMRRが低下します。両入力をできるだけ対称に接続します。

 
 
高電圧プローブの構造

高電圧プローブには、高い入力電圧を安全なレベルへ減衰させるため、複数の高耐圧抵抗や補償コンデンサが使用されています。

沿面距離と空間距離を確保するため、一般的なプローブより長く大きな構造になる場合があります。

主な安全構造は以下の通りです。

・ 長い絶縁部
・ フィンガーガード
・ 高耐圧抵抗
・ 絶縁スリーブ
・ 露出金属部の制限
・ 高耐圧ケーブル
・ 専用高電圧クリップ

高電圧プローブは、安全性能を含めて設計されているため、指定外のチップ、クリップ、延長リードへ交換してはいけません。

 
 
電流プローブの構造

クランプ式電流プローブは、導体を囲むセンサヘッドと、検出信号を処理するアンプ部で構成されています。

主な構成部品は以下の通りです。

・ 開閉式センサヘッド
・ 磁気コア
・ ホール素子
・ 電流トランス
・ 開閉レバー
・ ロック機構
・ 消磁回路
・ ゼロ調整回路
・ 電源回路
・ 出力ケーブル

センサヘッドの接合面に汚れや異物があると、磁気回路に隙間が生じ、測定精度が低下します。

 
 
カラーバンドとチャンネル識別

多くのプローブには、色分けされた識別バンドが付属しています。

オシロスコープの各チャンネルと同じ色のバンドをプローブへ取り付けることで、どのプローブがどのチャンネルへ接続されているかを識別しやすくなります。

複数のプローブを使用する場合は、以下の部分へ同じ色のバンドを取り付けます。

・ プローブ本体側
・ BNCコネクタ側
・ 必要に応じてグランドリード側

誤接続を防ぎ、測定作業を効率化できます。

 
 
使用前に確認する部分

プローブを使用する前に、以下の部分を点検します。

・ プローブチップに曲がりや摩耗がないこと
・ 絶縁スリーブに亀裂がないこと
・ グランドリードに断線や損傷がないこと
・ ケーブル外皮に亀裂や膨らみがないこと
・ ストレインリリーフが破損していないこと
・ 補正ボックスに変形や破損がないこと
・ BNCコネクタの中心ピンが曲がっていないこと
・ 減衰比切替スイッチが正常に動作すること
・ 付属アクセサリが正しく装着されていること

高電圧プローブでは、絶縁部の汚れや湿気も安全性能へ影響します。

異常が見つかった場合は使用を中止し、指定された方法で修理または交換します。

 
 
まとめ

オシロスコープ用プローブは、プローブチップ、グランドリード、プローブケーブル、補正ボックス、BNCコネクタなどで構成されています。

各部品は、測定信号の取り出し、基準電位への接続、信号伝送、周波数補正、オシロスコープとの接続という重要な役割を持っています。

高速測定では、プローブチップとグランド接続の長さが波形品質へ大きく影響します。高電圧測定では、絶縁スリーブ、フィンガーガード、専用アクセサリなどが安全性能を維持するために重要です。

正確で安全な測定を行うには、各部の役割を理解し、使用前にチップ、ケーブル、絶縁部、コネクタを点検する必要があります。

 
 
T&Mコーポレーション株式会社の取り扱いプローブ

T&Mコーポレーション株式会社では、パッシブプローブ、アクティブプローブ、高電圧プローブ、高電圧差動プローブ、光アイソレーション差動プローブ、電流プローブ、ロゴスキーコイル電流プローブなど、さまざまな構造と用途に対応したプローブを取り扱っております。

測定対象、必要な周波数帯域、電圧・電流範囲、接続方法、安全規格、使用するオシロスコープなどに応じて、適切なプローブとアクセサリをご提案いたします。製品の選定、仕様、対応機種、お見積りなどについては、T&Mコーポレーション株式会社までお気軽にお問い合わせください。

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