グランドリードとグランドスプリングの違い

オシロスコープで正確な波形を測定するには、プローブ先端だけでなく、グランド接続も重要です。

一般的なプローブにはワニ口クリップ付きのグランドリードが付属していますが、高速信号の測定では、長いグランドリードがリンギング、オーバーシュート、ノイズなどの原因になる場合があります。

このような測定では、グランドスプリングを使用して接地経路を短くすることが有効です。

ここでは、グランドリードとグランドスプリングの違い、寄生インダクタンスが波形へ与える影響、適切な使い分けについて解説します。

 
 
プローブのグランド接続とは

一般的なシングルエンドプローブは、プローブチップとグランド接続の2つの経路で測定回路へ接続します。

プローブチップは測定する信号へ接続し、グランド側は測定対象の基準電位へ接続します。

オシロスコープに表示される電圧は、以下の2点間の電位差です。

測定電圧=プローブチップの電圧-プローブグランドの電圧

グランド接続が不安定であったり、接続経路が長かったりすると、基準電位にノイズや電圧変動が加わり、表示波形も変化します。

 
 
グランドリードとは

グランドリードは、プローブ本体のグランド端子と測定対象のGNDを接続するためのリード線です。

一般的には、先端にワニ口クリップまたは小型クリップが付いています。

主な特長は以下の通りです。

・ 測定対象へ接続しやすい
・ 離れたGNDポイントへ届きやすい
・ 一般的な低周波測定に使用できる
・ クリップによって安定して固定できる
・ 長さによって測定位置の自由度が高い

一方、リードが長いほど寄生インダクタンスが増加し、高周波信号の測定に影響します。

 
 
グランドスプリングとは

グランドスプリングは、プローブチップ付近のグランド端子へ取り付ける、短いばね状の接地アクセサリです。

プローブ先端と測定対象のGNDを最短距離で接続できるため、一般的なグランドリードより寄生インダクタンスを小さくできます。

主な特長は以下の通りです。

・ グランド経路を短くできる
・ 寄生インダクタンスを抑えられる
・ 高速信号の波形再現性を改善できる
・ リンギングとオーバーシュートを抑えやすい
・ 外来ノイズの拾い込みを減らせる
・ 測定ポイント付近にGNDが必要

高速デジタル信号、スイッチング波形、電源リップルなどの測定に適しています。

 
 
グランドリードとグランドスプリングの違い

グランドリードとグランドスプリングの主な違いは、接続経路の長さと寄生インダクタンスです。

グランドリードは接続しやすく、離れたGNDポイントへ届きますが、長いリードによって高周波特性が低下します。

グランドスプリングは接続できる範囲が狭い一方、高速信号をより正確に測定できます。

代表的な使い分けは以下の通りです。

・ 低周波信号:グランドリード
・ 直流電圧:グランドリード
・ オーディオ信号:グランドリード
・ 高速クロック:グランドスプリング
・ スイッチング波形:グランドスプリング
・ 電源リップル:グランドスプリング
・ オーバーシュート測定:グランドスプリング
・ 高周波ノイズ測定:グランドスプリング

測定対象の周波数と立上り時間に応じて選択します。

 
 
寄生インダクタンスとは

実際の配線やリード線には、わずかなインダクタンスが存在します。回路図に意図的に記載されていないこのインダクタンスを、寄生インダクタンスと呼びます。

グランドリードが長くなるほど、寄生インダクタンスも増加します。

インダクタに発生する電圧は、以下の関係で表されます。

電圧=インダクタンス×電流の時間変化率

式では以下のように表されます。

V=L×di/dt

電流が高速で変化するほど、グランドリードの寄生インダクタンスに大きな電圧が発生します。

この電圧が測定信号へ加わり、本来存在しないリンギングやスパイクとして表示される場合があります。

 
 
入力容量との共振

プローブには入力容量があり、グランドリードには寄生インダクタンスがあります。

この入力容量と寄生インダクタンスが組み合わされると、LC共振回路が形成されます。

高速な立上りを持つ信号には広い周波数成分が含まれるため、共振周波数付近の成分が強調され、波形にリンギングが現れます。

代表的な症状は以下の通りです。

・ 立上り後に周期的な振動が表示される
・ オーバーシュートが大きくなる
・ アンダーシュートが発生する
・ 本来存在しない高周波成分が表示される
・ グランドリードの位置を変えると波形が変わる

グランドリードを短くすると寄生インダクタンスが減少し、共振の影響を抑えられます。

 
 
測定ループ面積

プローブチップから測定ポイントへ流れ、グランド接続を通って戻る経路を測定ループと呼びます。

プローブチップとグランドリードの間隔が広く、接続経路が長いほど、測定ループの面積が大きくなります。

大きなループはアンテナとして動作し、周囲の電磁界を拾いやすくなります。

代表的な外来ノイズ源は以下の通りです。

・ スイッチング電源
・ インバータ
・ モータ
・ トランスやインダクタ
・ クロック回路
・ 無線通信機器
・ 商用電源配線

グランドスプリングを使用するとループ面積を小さくでき、外来ノイズの拾い込みを抑えられます。

 
 
グランドリードによる波形の違い

同じ測定ポイントでも、使用するグランド接続によって表示波形が大きく変化する場合があります。

例えば、長いグランドリードで高速方形波を測定すると、大きなリンギングやオーバーシュートが表示されることがあります。

同じ波形をグランドスプリングで測定すると、リンギングが小さくなり、実際の信号に近い波形が得られる場合があります。

この違いは、測定対象の信号が変化したのではなく、測定方法による誤差が減少したためです。

高速信号で異常なリンギングが表示された場合は、回路を変更する前にグランド接続を確認します。

 
 
電源リップル測定

電源リップルは数mVから数十mV程度の微小信号であることが多く、グランドリードが拾うノイズの影響を受けやすい測定です。

長いグランドリードを使用すると、スイッチングノイズや周囲の電磁界が測定波形へ混入する場合があります。

電源リップルを測定する際は、以下の方法が有効です。

・ グランドスプリングを使用する
・ 信号とGNDの接続を短くする
・ 同軸接続アダプタを使用する
・ プローブ先端を出力コンデンサの端子へ直接接続する
・ 必要に応じて帯域制限を使用する
・ 測定ループをスイッチングノードから離す

電源出力コネクタから離れたGNDへ長いリードを接続すると、基板配線の電圧降下も測定結果へ含まれる可能性があります。

 
 
スイッチング波形の測定

MOSFET、IGBT、SiC、GaNなどのパワー半導体では、電圧と電流が非常に短い時間で変化します。

長いグランドリードを使用すると、寄生インダクタンスと高いdi/dtによって、本来存在しない電圧スパイクが表示される場合があります。

一方、実際に回路内で発生しているスパイクを、測定系の影響によるものと誤って判断する可能性もあります。

スイッチング波形を測定する場合は、以下を確認します。

・ グランド接続を最短にする
・ 信号とGNDのループ面積を小さくする
・ プローブをスイッチングループから適切に配置する
・ 同じポイントを複数の接続方法で比較する
・ 必要に応じて差動プローブを使用する

高電位側のスイッチング波形には、通常のシングルエンドプローブを使用できない場合があります。

 
 
グランドスプリングの取り付け方

グランドスプリングは、プローブチップ付近のグランドリングまたは専用端子へ取り付けます。

ばねの先端を測定対象のGNDパッドへ接触させ、同時にプローブチップを信号ポイントへ当てます。

取り付け時には、以下を確認します。

・ スプリングが正しく装着されていること
・ 信号とGNDを短絡させていないこと
・ GNDパッドへ安定して接触していること
・ プローブへ過度な力を加えていないこと
・ スプリングが隣接部品へ接触していないこと

測定ポイントの間隔に合わせて、スプリングを必要以上に曲げたり伸ばしたりすると、破損や接触不良の原因になります。

 
 
グランドスプリング用テストポイント

高速信号を繰り返し測定する基板では、設計段階で信号ポイントの近くにGNDテストポイントを設けることが有効です。

信号とGNDの間隔をグランドスプリングに合わせることで、短く再現性の高い接続ができます。

代表的なテストポイント構成は以下の通りです。

・ 信号パッドとGNDパッド
・ 信号ピンとGNDピン
・ 小型ループ状テストポイント
・ 同軸テストコネクタ
・ プローブチップ専用パッド

テストポイントを追加する際は、回路へ不要なスタブや寄生容量を加えないように設計します。

 
 
同軸接続との違い

さらに高い周波数や高い再現性が必要な場合は、グランドスプリングより同軸接続が適しています。

同軸接続では、信号導体の周囲をグランド導体で囲むため、測定ループ面積と外来ノイズを抑えられます。

代表的な方法は以下の通りです。

・ SMAコネクタ
・ MMCXコネクタ
・ MCXコネクタ
・ BNC-プローブチップアダプタ
・ PCB同軸テストポイント
・ はんだ付け式同軸チップ

電源リップル、高速シリアル信号、高周波信号などの測定に使用されます。

ただし、50Ω同軸接続を使用する場合は、測定対象への抵抗性負荷と最大入力電圧を確認する必要があります。

 
 
差動プローブの接続

差動プローブは、プラス入力とマイナス入力の2本を測定ポイントへ接続します。

この場合、一般的なシングルエンドプローブのグランドリードとは異なり、両入力の接続長と形状を揃えることが重要です。

プラス側とマイナス側の接続が非対称になると、以下の問題が発生します。

・ CMRRの低下
・ コモンモードノイズの混入
・ 入力間スキュー
・ 波形歪み
・ 高周波スパイクの増加

差動プローブでは、専用の差動チップ、ツイストリード、同軸チップなどを使用します。

 
 
オシロスコープの保護接地

一般的なベンチトップ型オシロスコープでは、BNCコネクタの外部導体が電源コードの保護接地へ接続されています。

そのため、シングルエンドプローブのグランドリードも保護接地と同じ電位です。

グランドリードを高電位の回路ポイントへ接続すると、そのポイントが保護接地へ短絡されます。

これにより、以下の危険があります。

・ 大電流による回路損傷
・ プローブやオシロスコープの損傷
・ 火花やアーク放電
・ 感電
・ 火災

グランドリードは、回路の接地基準点にだけ接続します。

 
 
オシロスコープをフローティングさせてはいけない理由

接地電位以外の信号を測定するために、オシロスコープの保護接地を切断する方法は危険です。

保護接地を切断すると、オシロスコープの筐体、BNCコネクタ、USB端子などが高電位になる可能性があります。

この状態では、測定者が筐体や接続機器へ触れることで感電する危険があります。

フローティング測定には、以下の方法を使用します。

・ 差動プローブ
・ 高電圧差動プローブ
・ 光アイソレーション差動プローブ
・ 絶縁入力オシロスコープ

測定対象の電圧、コモンモード電圧、測定カテゴリに適した機器を使用します。

 
 
グランド接続の良否を確認する方法

グランド接続によるノイズやリンギングを確認する簡単な方法は、プローブチップとグランドを短絡した状態で測定ポイントのGNDへ接触させることです。

本来は0Vに近い波形が表示されるはずですが、ノイズやスパイクが表示される場合は、測定ループが外来ノイズを拾っている可能性があります。

以下の条件を比較します。

・ 長いグランドリード
・ 短いグランドリード
・ グランドスプリング
・ 同軸接続

接続方法によって波形が大きく変化する場合は、測定系の寄生成分やノイズ拾い込みが結果へ影響しています。

 
 
グランド接続の選定ポイント

グランド接続方法を選ぶ際は、以下の項目を確認します。

・ 測定信号の周波数
・ 信号の立上り時間
・ 測定ポイントとGNDの距離
・ 必要な測定再現性
・ 信号振幅
・ 周囲の電磁ノイズ
・ 測定対象の対地電圧
・ 使用するプローブの種類
・ 必要な安全定格
・ 利用できるテストポイント

接続しやすさだけでなく、周波数特性と安全性を考慮して選択します。

 
 
まとめ

グランドリードは接続しやすく、低周波や直流測定に適していますが、長いリードによる寄生インダクタンスが高周波測定へ影響します。

グランドスプリングは接続範囲が限られる一方、グランド経路と測定ループを短くできるため、高速信号、スイッチング波形、電源リップルなどの測定に適しています。

長いグランドリードを使用すると、入力容量との共振によってリンギングやオーバーシュートが発生し、外来ノイズも拾いやすくなります。

正確な測定を行うには、測定する信号の周波数と立上り時間に応じて接続方法を選び、可能な限り信号とグランドの経路を短くすることが重要です。

また、一般的なオシロスコープのグランドは保護接地へ接続されているため、高電位側へ接続してはいけません。

 
 
T&Mコーポレーション株式会社の取り扱いプローブ

T&Mコーポレーション株式会社では、各種オシロスコープ用プローブに加えて、グランドリード、グランドスプリング、同軸接続アダプタ、PCB接続アクセサリなど、高速・低ノイズ測定に対応したアクセサリを取り扱っております。

測定する信号の周波数、立上り時間、電圧、測定ポイントの形状、必要な安全性能、使用するプローブとオシロスコープなどに応じて、適切な接続方法をご提案いたします。製品の選定、仕様、対応機種、お見積りなどについては、T&Mコーポレーション株式会社までお気軽にお問い合わせください。

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