フローティング測定とは?危険性と安全な測定方法
フローティング測定とは、測定する2点のどちらも接地電位にない状態で、2点間の電位差を測定する方法です。インバータ、スイッチング電源、モータードライブ、パワー半導体などの測定で使用されます。
フローティング測定では、測定点に高いコモンモード電圧が存在する場合があります。誤った接続は、測定回路やオシロスコープの破損だけでなく、感電や火災につながるため、適切な測定器とプローブを選択することが重要です。
■フローティング測定とは
一般的なシングルエンドプローブは、プローブチップとグランドリード間の電圧を測定します。通常のベンチトップ型オシロスコープでは、プローブのグランド、BNCコネクタの外部導体、筐体および保護接地が接続されています。
これに対して、フローティング測定では、測定する2点が接地電位から浮いた状態にあります。代表的な測定例には、次のようなものがあります。
・ ハイサイドスイッチのゲート-ソース間電圧
・ インバータ回路のスイッチング波形
・ 商用電源に接続された回路の両端電圧
・ モーター駆動回路の相間電圧
・ 高電圧バス上にある微小信号
・ 接地電位の異なる2点間の電圧
フローティング測定は差動測定の一種ですが、「差動入力」と「電気的絶縁」は同じ意味ではありません。測定対象に応じて、差動プローブの電圧定格や絶縁方式を確認する必要があります。
■通常のプローブを接続する危険性
接地型オシロスコープのプローブグランドを接地電位以外の測定点に接続すると、その測定点が保護接地へ短絡される可能性があります。
この状態では、次のような事故が発生するおそれがあります。
・ 測定対象回路の短絡
・ プローブやオシロスコープの破損
・ 過大電流による発熱や発火
・ アーク放電の発生
・ 測定者の感電
・ 誤った波形やノイズの表示
複数チャンネルを使用する場合も注意が必要です。一般的なオシロスコープでは、各チャンネルのBNCグランドが内部で共通接続されています。異なる電位の測定点へ各プローブのグランドを接続すると、オシロスコープ内部を経由して短絡する可能性があります。
■保護接地を外してはいけない理由
フローティング測定を行うために、オシロスコープの電源プラグから保護接地を外したり、2極変換アダプタを使用したりしてはいけません。また、接地型オシロスコープの電源側に絶縁トランスを接続し、オシロスコープ全体を浮かせる方法も危険です。
保護接地を切り離すと、オシロスコープの筐体、BNCコネクタ、プローブグランドなどの触れることができる部分に高電圧が現れる可能性があります。USB、LAN、外部トリガなどの接続を通じて、別の機器にも危険な電圧が伝わるおそれがあります。
保護接地は安全のために設けられています。測定の都合を理由に無効化してはいけません。
■高電圧差動プローブによる測定
フローティング電圧を接地型オシロスコープで測定する一般的な方法は、高電圧差動プローブを使用することです。
高電圧差動プローブは、プラス入力とマイナス入力の電位差を測定し、両方の入力に共通するコモンモード成分を抑制します。選定時には、次の仕様を確認します。
・ 最大差動入力電圧
・ 各入力端子から接地までの最大電圧
・ コモンモード電圧範囲
・ 測定カテゴリ(CAT)
・ 周波数に対する電圧ディレーティング
・ 帯域幅と立上り時間
・ コモンモード除去比(CMRR)
・ 過渡過電圧に対する定格
・ 使用するリードおよびアクセサリの安全定格
差動入力電圧が定格内であっても、各入力から接地までの電圧が定格を超える場合があります。両方の条件を個別に確認することが必要です。
■光アイソレーションプローブによる測定
光アイソレーションプローブは、測定ヘッドとオシロスコープの間を電気的に絶縁し、信号を光で伝送する測定システムです。
高いコモンモード電圧や高速なdv/dtが存在する環境でも、微小な差動信号を測定しやすいことが特長です。SiCやGaNなどの高速パワー半導体におけるゲート電圧測定にも適しています。
ただし、光伝送を使用している製品でも、測定ヘッドの入力電圧、絶縁電圧、過渡電圧、沿面距離および使用環境には制限があります。製品ごとの安全定格を確認し、規定された範囲内で使用します。
■絶縁入力オシロスコープによる測定
独立した絶縁入力を備えたオシロスコープやスコープコーダーも、フローティング測定に使用できます。各入力チャンネルが相互および接地から絶縁されている製品では、異なる基準電位にある複数の信号を同時に測定できます。
使用前には、次の定格を確認します。
・ 入力端子間の最大電圧
・ 入力端子から接地までの最大フローティング電圧
・ チャンネル間の絶縁電圧
・ 測定カテゴリ
・ 接続するプローブの電圧定格
・ チャンネル間および接地に対する絶縁仕様
オシロスコープ本体が絶縁入力であっても、接続するプローブやアクセサリの定格が低い場合、測定システム全体の定格は最も低い機器によって制限されます。
■差動測定と絶縁測定の違い
差動プローブは、2つの入力信号の差を測定し、共通する電圧成分を除去します。一方、絶縁プローブは、測定側とオシロスコープ側の間に電気的な絶縁を設けます。
すべての差動プローブがガルバニック絶縁を備えているわけではありません。また、絶縁されている測定器でも、無制限の電圧を測定できるわけではありません。
測定対象の電圧、コモンモード過渡、信号速度および必要な測定精度に応じて、差動方式と絶縁方式を適切に選択します。
■安全な測定手順
高電圧回路へプローブを接続する場合は、可能な限り回路の電源を切り、蓄積された電荷を放電してから作業します。接続後に安全を確認してから回路へ通電します。
測定時には、次の点に注意します。
・ プローブとアクセサリに損傷がないことを確認する
・ 測定電圧と過渡電圧を事前に見積もる
・ 測定カテゴリと最大入力電圧を確認する
・ 指定された絶縁アクセサリを使用する
・ 接続部を固定し、不用意に触れないようにする
・ 通電中にプローブの接続を変更しない
・ 安全距離を確保し、必要な保護具を使用する
・ 取扱説明書に記載された接続手順を守る
高電圧回路では、電源を切った後もコンデンサなどに危険な電荷が残っている場合があります。無電圧であることを適切な方法で確認してから、プローブを取り外します。
■フローティング測定で確認すべきポイント
フローティング測定では、表示したい差動電圧だけでなく、測定点全体が接地に対してどの程度の電位を持つかを確認する必要があります。
特に重要な項目は、次のとおりです。
・ 差動電圧
・ コモンモード電圧
・ 各入力端子から接地までの電圧
・ スイッチング時の過渡過電圧
・ コモンモード電圧の変化速度
・ 必要な帯域幅とCMRR
・ 使用環境に対応するCAT定格
・ プローブ、リード、クリップを含む測定系全体の定格
コモンモード電圧が仕様範囲内でも、高速なコモンモード変化によって測定波形にノイズやスパイクが現れる場合があります。高速パワー回路では、周波数に対するCMRRも重要な選定項目です。
■まとめ
フローティング測定は、接地電位にない2点間の電圧を測定する方法です。パワーエレクトロニクス回路では欠かせない測定技術ですが、通常のシングルエンドプローブを誤って使用すると、短絡、機器の破損、感電などの重大な事故につながります。
オシロスコープの保護接地を外す方法は使用せず、高電圧差動プローブ、光アイソレーションプローブ、絶縁入力オシロスコープなど、用途に対応した測定システムを使用してください。
■T&Mコーポレーション株式会社の取り扱いプローブ
T&Mコーポレーション株式会社では、フローティング測定に対応する高電圧差動プローブ、光アイソレーションプローブ、絶縁測定システムおよび各種アクセサリを取り扱っています。
インバータ、スイッチング電源、SiC・GaNパワー半導体、モータードライブなど、測定対象の差動電圧、コモンモード電圧、帯域幅および安全規格に応じた製品をご提案します。プローブの選定やオシロスコープとの互換性についても、お気軽にお問い合わせください。













T&M
即納ストア






















































































































































































































