ローサイド測定とハイサイド測定の違い
ローサイド測定とハイサイド測定は、電源回路、インバータ、モータードライブ、DC-DCコンバータなどで使用される代表的な測定方法です。
測定対象が接地側に近いローサイドにあるか、高電位側のハイサイドにあるかによって、必要なプローブ、安全対策および測定上の注意点が異なります。
■ローサイド測定とは
ローサイド測定とは、負荷やスイッチング素子の接地側に近い位置で電圧または電流を測定する方法です。
代表的な測定対象には、次のようなものがあります。
・ ローサイドMOSFETのゲート-ソース間電圧
・ 接地側に配置されたシャント抵抗の両端電圧
・ ローサイドスイッチのドレイン-ソース間電圧
・ 電源回路のグランド基準信号
・ 接地側の制御信号
・ ローサイド電流検出回路の出力
測定点の基準電位が接地電位に近いため、条件によっては一般的なシングルエンドプローブで測定できます。ただし、グランドバウンス、配線抵抗、寄生インダクタンスなどの影響には注意が必要です。
■ハイサイド測定とは
ハイサイド測定とは、電源電圧側に配置されたスイッチング素子や電流検出回路など、高い電位にある回路を測定する方法です。
代表的な測定対象には、次のようなものがあります。
・ ハイサイドMOSFETのゲート-ソース間電圧
・ IGBTのゲート-エミッタ間電圧
・ ハイサイドシャント抵抗の両端電圧
・ ハーフブリッジ回路のスイッチングノード
・ インバータ回路の相間電圧
・ 高電位側にある制御信号
ハイサイド側では、測定したい信号に対して大きなコモンモード電圧が重畳します。このため、通常は差動プローブ、光アイソレーションプローブ、または絶縁入力を備えた測定器を使用します。
■ローサイド測定とハイサイド測定の主な違い
ローサイド測定では、測定基準が接地電位に近く、比較的容易に信号を測定できます。一方、ハイサイド測定では、測定基準そのものが大きく変動するため、コモンモード電圧の影響を受けやすくなります。
主な違いは、次のとおりです。
・ ローサイド測定:接地電位に近い信号を測定する
・ ハイサイド測定:高電位上に重畳した信号を測定する
・ ローサイド測定:シングルエンドプローブを使用できる場合がある
・ ハイサイド測定:差動または絶縁測定が必要になる場合が多い
・ ローサイド測定:グランドバウンスの影響を受けることがある
・ ハイサイド測定:高いコモンモード電圧と高速なdv/dtへの対応が必要
どちらの測定方法でも、測定対象とプローブの接続方法を事前に確認することが重要です。
■ハーフブリッジ回路における測定
ハーフブリッジ回路では、ハイサイド素子とローサイド素子が直列に接続され、その中間点がスイッチングノードになります。
ローサイド素子のソースまたはエミッタは接地側に近いため、ゲート駆動波形を比較的容易に測定できます。一方、ハイサイド素子のソースまたはエミッタは、スイッチング動作に伴って大きく変動します。
ハイサイドのゲート駆動電圧を測定する場合は、ゲートとソースの電位差を測定しなければなりません。ゲート電圧を接地基準で測定すると、本来確認したいゲート-ソース間電圧とは異なる波形になります。
■ハイサイド測定に必要なコモンモード性能
ハイサイド測定では、差動電圧が小さくても、両入力に高いコモンモード電圧が加わる場合があります。
例えば、数ボルトから数十ボルトのゲート駆動信号を、数百ボルトのスイッチング電位上で測定することがあります。この場合、プローブには次の性能が求められます。
・ 十分なコモンモード電圧範囲
・ 高いコモンモード除去比(CMRR)
・ 高速なコモンモード過渡に対する耐性
・ 測定信号に適した帯域幅
・ 十分な差動入力範囲
・ 適切な安全定格と絶縁性能
CMRRは周波数が高くなるほど低下する傾向があります。データシートでは、直流または低周波時の値だけでなく、実際のスイッチング周波数における性能を確認します。
■ローサイド電流測定の特徴
ローサイド電流測定では、負荷とグランドの間にシャント抵抗を配置し、その両端電圧から電流を求めます。
回路構成が比較的簡単で、低いコモンモード電圧で測定できることが利点です。一方、シャント抵抗と配線によって回路のグランド電位が変化する場合があります。
主な注意点は、次のとおりです。
・ シャント抵抗による電圧降下
・ 測定電流による消費電力と発熱
・ 配線抵抗による測定誤差
・ グランドバウンスの発生
・ 寄生インダクタンスによるスパイク
・ 制御回路とパワー回路の基準電位差
微小なシャント電圧を測定する場合は、低ノイズの差動プローブを使用すると、グランド電位差の影響を抑えやすくなります。
■ハイサイド電流測定の特徴
ハイサイド電流測定では、電源と負荷の間にシャント抵抗を配置し、その両端電圧を測定します。
負荷のグランド経路へ影響を与えにくく、電源から負荷へ流れる電流を直接監視できることが利点です。ただし、小さなシャント電圧に大きなコモンモード電圧が重畳するため、高いCMRRを備えた差動測定システムが必要です。
電流プローブを使用すれば、回路へシャント抵抗を追加せずに電流を測定できる場合があります。測定対象に応じて、差動プローブと電流プローブを使い分けます。
■シングルエンドプローブを使用する際の注意点
ローサイド測定であっても、測定点が必ず接地電位にあるとは限りません。配線インピーダンスや大電流の影響によって、回路グランドと保護接地の間に電位差が生じることがあります。
シングルエンドプローブを接続する前に、次の点を確認します。
・ プローブグランドの接続点が安全な接地基準である
・ グランド接続によって回路が短絡しない
・ 複数チャンネルのグランドが内部で共通接続されている
・ プローブとオシロスコープの最大入力電圧を超えない
・ グランドリードに大電流が流れない
・ 接地によって回路動作が変化しない
プローブのグランドリードをハイサイド側へ接続してはいけません。接地型オシロスコープでは、測定点が保護接地へ短絡される可能性があります。
■測定プローブの選び方
ローサイド測定とハイサイド測定では、電圧だけでなく、信号速度、コモンモード条件および必要な測定精度を考慮してプローブを選択します。
・ 接地基準の一般信号:パッシブプローブまたはアクティブプローブ
・ 小さな差動信号:低電圧差動プローブ
・ 高電圧の差動信号:高電圧差動プローブ
・ 高速ハイサイド信号:高CMRR差動プローブ
・ 高いdv/dt環境:光アイソレーションプローブ
・ 回路を切断しない電流測定:電流プローブ
・ 絶縁された複数点の同時測定:絶縁入力測定器
測定システム全体の定格は、プローブ本体、入力リード、クリップ、アダプタおよびオシロスコープの中で、最も低い定格によって制限されます。
■正確な測定を行うためのポイント
高速スイッチング回路では、プローブの入力容量、接続リードの長さおよび測定点の配置が波形に影響します。
正確な測定を行うためには、次の点が重要です。
・ 入力リードをできるだけ短くする
・ プラス側とマイナス側の配線長をそろえる
・ 測定ループの面積を小さくする
・ スイッチングノードから不要な距離を取る
・ 十分な帯域幅と立上り時間を確保する
・ プローブのオフセットとゼロ点を調整する
・ 電圧プローブと電流プローブの時間差を補正する
特にゲート電圧の測定では、プローブをゲート端子とソース端子へ直接接続し、配線やパターンによる電位差を含めないようにします。
■まとめ
ローサイド測定は、接地側に近い回路の電圧や電流を測定する方法です。比較的測定しやすい一方、グランドバウンス、配線抵抗および寄生インダクタンスによる誤差に注意が必要です。
ハイサイド測定では、高いコモンモード電圧上にある信号を測定します。そのため、高電圧差動プローブ、光アイソレーションプローブ、絶縁入力測定器など、測定条件に対応した機器を使用します。
測定位置だけでプローブを決めるのではなく、差動電圧、コモンモード電圧、dv/dt、帯域幅および安全定格を総合的に確認することが重要です。
■T&Mコーポレーション株式会社の取り扱いプローブ
T&Mコーポレーション株式会社では、ローサイド測定およびハイサイド測定に対応するパッシブプローブ、差動プローブ、高電圧差動プローブ、光アイソレーションプローブ、電流プローブを取り扱っています。
インバータ、スイッチング電源、SiC・GaNパワー半導体、モータードライブなど、測定対象の電圧、電流、帯域幅、コモンモード条件および安全定格に応じた製品をご提案します。プローブの選定やオシロスコープとの互換性についても、お気軽にお問い合わせください。













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