グランドループとノイズの回り込みを防ぐ方法

グランドループとは、回路や測定器のグランドが複数の経路で接続され、閉じたループが形成された状態です。

グランド間にわずかな電位差があると、ループ内に不要な電流が流れ、ハムノイズ、スパイク、波形の揺れなどが発生します。正確な測定には、グランド経路とノイズの回り込みを確認することが重要です。

 
 
グランドとは

グランドは、回路内の電圧を測定するための基準電位です。ただし、すべてのグランドが必ず同じ電位になるとは限りません。

グランドには、目的に応じて次のような種類があります。

・ 保護接地
・ シャーシグランド
・ 信号グランド
・ アナロググランド
・ デジタルグランド
・ パワーグランド
・ シールドグランド
・ 仮想グランド

配線には抵抗とインダクタンスがあるため、電流が流れるとグランド上にも電圧が発生します。高周波や大電流の回路では、物理的に近いグランド点でも電位差が生じる場合があります。

 
 
グランドループとは

グランドループは、2台以上の機器や回路が複数のグランド経路で接続されたときに形成されます。

例えば、オシロスコープと測定対象が電源ケーブルの保護接地で接続され、さらにプローブのグランドリードでも接続されると、閉じた電流経路ができます。

このループへ外部磁界が結合したり、グランド間に電位差が存在したりすると、不要な電流が流れます。その電流による電圧降下が、測定信号へノイズとして重畳します。

 
 
グランドループが発生しやすい接続

次のような接続では、グランドループが形成される可能性があります。

・ 複数の接地型測定器を同じ回路へ接続している
・ オシロスコープとパソコンをUSBやLANで接続している
・ 信号発生器とオシロスコープを同時に接続している
・ 複数の電源装置を使用している
・ 離れた場所のグランド点をケーブルで接続している
・ 同軸ケーブルのシールドを両端で接地している
・ 複数のプローブグランドを異なる位置へ接続している
・ 筐体、基板および保護接地が複数経路で接続されている

外観上は単純な接続でも、USB、LAN、外部トリガ、通信ケーブルなどを通じてグランドが接続されている場合があります。

 
 
グランドループによって発生する症状

グランドループが発生すると、次のような症状が現れることがあります。

・ 50Hzまたは60Hzのハムノイズ
・ 電源周波数の高調波成分
・ スイッチング電源に同期したノイズ
・ 一定周期のスパイク
・ 波形基準位置の変動
・ 測定値のばらつき
・ 通信エラー
・ オーディオ回路のハム音
・ 機器を追加すると増加するノイズ

ケーブルや測定器の接続状態を変えるとノイズが変化する場合は、グランドループが影響している可能性があります。

 
 
ノイズの回り込みとは

ノイズの回り込みとは、電源線、グランド線、信号線、空間結合などを通じて、不要な信号が測定回路へ侵入する現象です。

主な結合経路には、次のものがあります。

・ 共通インピーダンス結合
・ 容量性結合
・ 誘導性結合
・ 電磁放射による結合
・ 電源ラインを通じた伝導
・ シールドや筐体を通じた結合
・ 測定器間の通信ケーブルを通じた結合

ノイズ対策では、ノイズ源、結合経路、影響を受ける回路の3つを分けて考えます。

 
 
共通インピーダンス結合とは

複数の回路が同じグランド配線を共有している場合、その配線の抵抗やインダクタンスによって発生した電圧が、別の回路へ重畳します。これを共通インピーダンス結合と呼びます。

例えば、大電流のスイッチング回路と微小信号回路が同じグランド経路を共有すると、スイッチング電流によって生じた電圧変動が微小信号へノイズとして現れます。

対策には、次の方法があります。

・ 大電流経路と微小信号経路を分離する
・ グランド配線を短く広くする
・ 適切な一点でグランドを接続する
・ 電流のリターンパスを明確にする
・ グランドプレーンの電流分布を考慮する
・ 測定基準点を信号源の近くに配置する

単にグランドを広くすればよいのではなく、電流がどの経路を流れるかを確認することが重要です。

 
 
容量性結合によるノイズ

容量性結合は、電位の異なる導体間に存在する寄生容量を通じてノイズが伝わる現象です。

高速な電圧変化を持つスイッチングノードは、周辺の信号線、ヒートシンク、筐体、プローブなどへノイズを結合させます。

容量性結合を抑えるには、次の対策が有効です。

・ ノイズ源と信号線の距離を広げる
・ 長い並走配線を避ける
・ 適切なシールドを設ける
・ 高インピーダンス配線を短くする
・ スイッチングノードの銅箔面積を小さくする
・ プローブ入力リードを短くする
・ コモンモード電流の経路を管理する

高いdv/dtを持つSiC・GaN回路では、わずかな寄生容量でも大きなコモンモード電流が流れる場合があります。

 
 
誘導性結合によるノイズ

誘導性結合は、変化する電流が作る磁界によって、周囲の配線ループへ電圧が誘起される現象です。

大電流のスイッチング経路やトランス、インダクタの近くでは、プローブのグランドループへ磁界が結合し、測定波形にスパイクやリンギングが現れる場合があります。

誘導性結合を抑える基本は、ループ面積を小さくすることです。

・ 信号線とリターン線を近接させる
・ ツイストペアを使用する
・ プローブのグランドリードを短くする
・ 差動入力リードをより合わせる
・ 大電流経路から測定配線を離す
・ 測定ケーブルの向きを変更する
・ 磁界シールドを検討する

プローブ配線の位置や向きを変えて波形が変化する場合は、誘導性ノイズを拾っている可能性があります。

 
 
プローブのグランドリードによるノイズ拾取

長いグランドリードとプローブ本体で形成されるループは、磁界を受けるアンテナのように動作します。

高速スイッチング回路では、このループへノイズが誘導され、本来の信号には存在しないスパイクやリンギングが表示される場合があります。

ノイズ拾取を低減するには、次の方法が有効です。

・ グランドスプリングを使用する
・ プローブチップとグランドを測定点の直近へ接続する
・ 測定ループの面積を小さくする
・ 同軸型アクセサリを使用する
・ PCBへ直接はんだ付けする
・ プローブケーブルをノイズ源から離す
・ 不要な延長リードを使用しない

接続方法を変更して波形を比較すると、測定系が拾ったノイズかどうかを判断しやすくなります。

 
 
複数チャンネル測定の注意点

一般的な接地型オシロスコープでは、各入力チャンネルのBNC外部導体とプローブグランドが内部で共通接続されています。

異なる電位のグランド点へ複数のプローブを接続すると、オシロスコープ内部を経由してグランド間に電流が流れる可能性があります。条件によっては、ノイズだけでなく短絡や機器の破損につながります。

複数チャンネルを使用する場合は、次の点を確認します。

・ すべてのプローブグランドが同電位である
・ グランド接続によって回路が短絡しない
・ チャンネル間の共通接続を理解している
・ 必要に応じて差動プローブを使用する
・ 絶縁入力測定器のチャンネル間定格を確認する
・ 信号経路とリターン経路を事前に確認する

接地型オシロスコープの保護接地を外して対処してはいけません。

 
 
差動プローブによるグランドループ対策

差動プローブは、2つの入力点の電位差を測定し、両方の入力に共通するノイズを抑制します。

シングルエンドプローブのグランド接続によってループが形成される場合、差動プローブを使用することで、測定対象とオシロスコープ間の不要なグランド経路を削減できる場合があります。

ただし、差動プローブには次の制限があります。

・ 最大差動入力電圧
・ コモンモード電圧範囲
・ 各入力から接地までの最大電圧
・ 周波数に対するCMRR
・ 入力容量と入力抵抗
・ 安全定格と測定カテゴリ

差動プローブは無制限に絶縁できる機器ではありません。製品の仕様範囲内で使用してください。

 
 
光アイソレーションプローブによる対策

光アイソレーションプローブは、測定ヘッドとオシロスコープの間を電気的に絶縁し、信号を光で伝送します。

グランド電位差が大きい環境や、高速なコモンモード過渡が存在するパワー回路では、電気的な結合経路を分離することでノイズの回り込みを抑えやすくなります。

特に次の測定に適しています。

・ ハイサイドゲート電圧
・ SiC・GaNデバイスのスイッチング波形
・ インバータのフローティング信号
・ 高いdv/dt環境の微小信号
・ グランド電位差のある回路間信号

光絶縁方式でも、入力電圧、絶縁電圧、過渡電圧および使用環境の定格を確認する必要があります。

 
 
一点接地による対策

一点接地とは、複数のグランド経路を1か所へ集め、ループ電流や共通インピーダンス結合を抑える方法です。スター接地とも呼ばれます。

低周波回路やオーディオ回路では有効な場合がありますが、高周波回路では長いグランド配線のインダクタンスが問題になることがあります。

高周波回路では、連続したグランドプレーンによって低インピーダンスのリターンパスを確保する方法が一般的です。

周波数、電流、回路構成に応じて、一点接地とグランドプレーンを適切に使い分けます。

 
 
シールドの接続方法

シールドは、外部の電界や電磁界から信号線を保護するために使用します。ただし、接続方法が不適切な場合、シールド自体にループ電流が流れることがあります。

低周波では、グランドループを避けるためにシールドを片側だけで接続する方法があります。一方、高周波では、シールドを両端で低インピーダンス接続した方がノイズを抑えやすい場合があります。

適切な接続方法は、次の条件によって異なります。

・ ノイズの周波数
・ ケーブルの長さ
・ グランド間の電位差
・ 信号方式
・ シールド電流の経路
・ 安全規格と保護接地の要件

保護接地や安全上必要な接続を、ノイズ対策の目的で取り外してはいけません。

 
 
グランドループを切り分ける方法

グランドループが疑われる場合は、接続経路を確認し、安全な範囲で測定構成を一つずつ変更します。

・ 電源ケーブルと保護接地の経路を確認する
・ USB、LAN、外部トリガなどの接続を確認する
・ 接続する測定器を一台ずつ変更する
・ 差動プローブで同じ信号を測定する
・ プローブのグランド位置を見直す
・ ケーブルの配置や向きを変更する
・ オシロスコープのFFT機能でノイズ周波数を確認する
・ 電流クランプでシールド電流やコモンモード電流を確認する

危険電圧を扱う回路では、通電中に接続を変更しないでください。回路を停止し、残留電荷がないことを確認してから作業します。

 
 
ノイズの回り込みを防ぐ方法

グランドループとノイズの回り込みを防ぐためには、ノイズ電流が流れる経路を明確にし、測定信号と分離します。

主な対策は、次のとおりです。

・ 不要なグランド経路を作らない
・ 保護接地を維持する
・ 信号とリターンのループ面積を小さくする
・ 大電流グランドと微小信号グランドを適切に分離する
・ 差動測定を使用する
・ 必要に応じて絶縁測定を使用する
・ ツイストペアまたは同軸ケーブルを使用する
・ プローブ接続を短くする
・ ケーブルをスイッチングノードから離す
・ 測定器間の通信接続も含めて確認する

ノイズ対策では、単にフィルタを追加するだけでなく、ノイズの発生源と結合経路を特定することが重要です。

 
 
まとめ

グランドループは、複数のグランド接続によって閉じた経路が形成され、不要な電流が流れる現象です。ハムノイズ、スパイク、基準電位の変動および測定誤差の原因になります。

ノイズは、共通インピーダンス、寄生容量、磁界、電源線、シールド、通信ケーブルなどを通じて測定系へ回り込みます。

プローブ接続を短くしてループ面積を小さくし、必要に応じて差動プローブ、光アイソレーションプローブまたは絶縁入力測定器を使用することで、ノイズの影響を低減できます。

 
 
T&Mコーポレーション株式会社の取り扱いプローブ

T&Mコーポレーション株式会社では、グランドループやノイズの影響を抑えた測定に対応する差動プローブ、光アイソレーションプローブ、アクティブプローブ、電流プローブ、近磁界・近電界プローブおよび各種低インダクタンス接続アクセサリを取り扱っています。

高速デジタル回路、インバータ、スイッチング電源、SiC・GaNパワー半導体など、測定対象の信号レベル、帯域幅、コモンモード条件およびノイズ環境に応じた製品をご提案します。プローブの選定や測定方法についても、お気軽にお問い合わせください。

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