測定カテゴリ(CAT)とプローブの安全規格
測定カテゴリ(CAT)は、測定場所で想定される過渡過電圧と、事故時に供給されるエネルギーに対して、測定器やプローブがどの程度の保護性能を備えているかを示す区分です。
同じ電圧でも、電子回路内部、コンセント、分電盤、引込口では危険度が異なります。安全な測定には、電圧値だけでなく、測定場所に対応したCAT定格を確認する必要があります。
■測定カテゴリ(CAT)とは
測定カテゴリは、低電圧配電設備のどの位置へ測定回路を接続するかによって分類されます。
配電系統の電源側に近づくほど、落雷、開閉動作、負荷変動などによる大きな過渡過電圧が発生しやすくなります。また、短絡時に供給される電流とエネルギーも大きくなる傾向があります。
現在の表記では、主に次の区分が使用されます。
・ 測定カテゴリなし
・ CAT II
・ CAT III
・ CAT IV
旧規格や古い資料では「CAT I」と表記される場合がありますが、現在の規格では、CAT II、CAT III、CAT IVに該当しない回路を「測定カテゴリなし」と表現することがあります。製品の表示と適用規格を確認してください。
■測定カテゴリなしとは
「測定カテゴリなし」は、CAT II、CAT III、CAT IVに分類される低電圧配電設備へ直接接続しない測定回路を示します。
代表的な測定対象には、次のようなものがあります。
・ 電池で動作する電子回路
・ 保護された二次側回路
・ 信号回路
・ 通信回路
・ 実験用電子回路
・ 配電系統から絶縁された低エネルギー回路
ただし、測定カテゴリなしは「安全対策が不要」という意味ではありません。回路固有の最大電圧、蓄積エネルギー、短絡電流および過渡電圧を確認する必要があります。
また、CAT表示のないプローブを、コンセント、分電盤、固定配線などへ使用してよいという意味でもありません。
■CAT IIとは
CAT IIは、低電圧配電設備へ直接接続される機器や、その電源回路における測定を対象とします。
代表的な測定場所には、次のようなものがあります。
・ コンセントへ接続する家電製品
・ 携帯工具
・ 事務機器
・ コンセントから電源を取る電子機器
・ 電源コードで接続される負荷機器
・ 機器内部の一次側電源回路
CAT II環境では、電子回路内部より大きな過渡過電圧が発生する可能性があります。CAT IIで使用する場合は、「CAT II 600V」など、カテゴリと定格電圧の両方を確認します。
■CAT IIIとは
CAT IIIは、建物内の固定配線および配電部分に接続される回路での測定を対象とします。
代表的な測定場所には、次のようなものがあります。
・ 分電盤
・ 配電盤
・ 固定設備のフィーダ回路
・ 固定配線されたモーター
・ 産業用設備の電源回路
・ 大型建物の照明回路
・ 固定設置されたスイッチや遮断器
・ 建物内の短い分岐回路
CAT III環境では、大きな短絡電流と過渡過電圧が発生する可能性があります。CAT IIにのみ対応するプローブをCAT III環境で使用してはいけません。
■CAT IVとは
CAT IVは、建物の低電圧配電設備へ電力が供給される起点に近い場所での測定を対象とします。
代表的な測定場所には、次のようなものがあります。
・ 電力量計
・ 引込口
・ 引込線
・ 屋外架空線
・ 地下配電線
・ 主配電盤の電源側
・ 一次過電流保護装置の電源側
CAT IVは、低電圧配電設備における最も高い測定カテゴリです。大きな雷サージや開閉サージ、高い短絡エネルギーを想定した保護性能が必要になります。
■CAT番号が高いほど危険度が高い理由
電源の供給点に近い場所ほど、配線インピーダンスが低く、短絡時に大きな電流が流れます。また、落雷や配電設備の開閉による過渡過電圧も減衰しにくくなります。
測定カテゴリが高くなるほど、測定器やプローブには次の性能が求められます。
・ 高いインパルス耐電圧
・ 十分な空間距離
・ 十分な沿面距離
・ 強化された絶縁構造
・ アーク放電への対策
・ 異常時の発火防止
・ 端子間短絡への保護
・ 操作者が触れる部分の保護
単に絶縁被覆を厚くするだけではなく、製品全体として安全性能を確保する必要があります。
■CAT定格は電圧と組み合わせて確認する
CAT定格は、「CAT III 600V」「CAT II 1,000V」のように、測定カテゴリと電圧を組み合わせて表示します。
カテゴリ番号または電圧値のどちらか一方だけで、安全性を判断することはできません。
例えば、CAT II 1,000Vの製品は、CAT III 600Vの環境で使用できるとは限りません。定格電圧が高くても、CAT IIIで想定される過渡電圧と短絡エネルギーへの保護性能を備えていない可能性があるためです。
測定場所と動作電圧の両方に適合する製品を使用します。
■高いCAT定格を低いカテゴリで使用する場合
一般に、CAT IV定格の製品は、表示された電圧条件の範囲内でCAT IIIやCAT II環境にも使用できます。ただし、異なるカテゴリでは許容される定格電圧が変わる製品があります。
例えば、同じ製品に次のような複数の定格が表示される場合があります。
・ CAT III 1,000V
・ CAT IV 600V
この場合、CAT III環境では1,000Vまで、CAT IV環境では600Vまでという意味です。必ず製品本体と取扱説明書に記載された組み合わせに従います。
■CAT定格がないプローブの使用範囲
高電圧プローブであっても、CAT II、CAT III、CAT IVの表示がない製品があります。
このようなプローブは、メーカーが規定する条件下の電子回路、実験回路、装置内部などには使用できても、低電圧配電設備へ直接接続する測定には対応していない場合があります。
「最大入力電圧2,000V」と記載されていても、CAT III 600Vの分電盤で安全に使用できるとは限りません。
次の項目を確認してください。
・ CAT定格の有無
・ CAT定格と組み合わされた電圧
・ 使用可能な測定対象
・ 最大過渡電圧
・ 接地に対する最大電圧
・ 取扱説明書に記載された使用制限
不明な場合は、メーカーまたは販売元へ確認します。
■プローブに関係する主な安全規格
測定器とプローブには、IEC 61010シリーズを基礎とする安全規格が適用されます。
代表的な規格には、次のものがあります。
・ IEC 61010-1:測定・制御・研究室用電気機器の一般安全要求
・ IEC 61010-2-030:試験・測定回路を持つ機器の個別要求
・ IEC 61010-031:電気測定用ハンドヘルドプローブアセンブリの安全要求
・ IEC 61010-2-032:電流センサーに関する個別要求
適用される規格は、プローブの種類、構造、使用方法などによって異なります。
規格へ適合していることと、あらゆる回路で使用できることは同じではありません。製品ごとのCAT定格、最大入力電圧および使用制限を確認する必要があります。
■安全認証と適合表示
製品には、安全規格への適合を示す認証マークや適合表示が付いている場合があります。
ただし、マークがあるだけで使用条件が分かるとは限りません。確認すべき内容は、次のとおりです。
・ 適用された規格番号
・ 規格の版
・ 認証された製品型名
・ CAT定格と定格電圧
・ 使用可能なアクセサリ
・ 温度、高度、汚染度などの条件
・ メーカーが指定する使用方法
本体と外観が似た別型名、交換用リード、汎用アクセサリが、同じ安全認証を持つとは限りません。
■プローブ本体とアクセサリの定格
測定システムの安全定格は、プローブ本体だけでは決まりません。
次のすべての構成品を確認します。
・ プローブ本体
・ プローブチップ
・ テストリード
・ グランドリード
・ フックチップ
・ ワニ口クリップ
・ バナナプラグ
・ 変換アダプタ
・ オシロスコープまたは測定器本体
構成品の中で最も低いCAT定格と電圧定格が、測定システム全体の上限になります。
例えば、プローブ本体がCAT III 1,000Vでも、クリップがCAT III 600Vであれば、その構成ではCAT III 600Vが上限です。
■アクセサリ交換によるCAT定格の変化
プローブチップやクリップを交換すると、露出金属部の長さ、沿面距離、空間距離などが変わるため、CAT定格が低下する場合があります。
CAT IIIやCAT IV環境では、露出する導電部分を小さくするための保護キャップを装着する製品があります。キャップを取り外すと、安全定格や使用可能なカテゴリが変わる場合があります。
使用時には、次の点を確認します。
・ 保護キャップの装着条件
・ 露出金属部の長さ
・ 指を保護するバリアの位置
・ クリップとリードの組み合わせ
・ メーカー指定アクセサリであること
・ 交換後のCAT定格
利便性のために保護部品を取り外した状態で、高い測定カテゴリの回路へ接続してはいけません。
■差動プローブのCAT定格
差動プローブでは、差動入力電圧だけでなく、各入力から接地までの電圧とCAT定格を確認します。
必要な確認項目は、次のとおりです。
・ 最大差動入力電圧
・ 差動測定範囲
・ コモンモード電圧範囲
・ 各入力端子から接地までの最大電圧
・ 測定カテゴリと定格電圧
・ 過渡過電圧に対する定格
・ 入力リードとクリップの定格
差動電圧が小さくても、両入力が接地に対して高電位にある場合があります。差動電圧と接地電圧をそれぞれ評価します。
■電流プローブのCAT定格
クランプ式電流プローブや電流センサーにも、測定導体の電圧に対応するCAT定格が必要です。
電流値が小さくても、導体が高いカテゴリの配電回路に接続されていれば、その環境に対応した電流プローブを使用しなければなりません。
確認すべき項目は、次のとおりです。
・ 最大測定電流
・ 最大導体電圧
・ 測定カテゴリ
・ クランプとケーブルの絶縁性能
・ ジョーを開いた状態での使用制限
・ 導体の種類と絶縁状態
・ 周波数およびデューティ比による制限
プローブのバリアより先へ指を出さず、損傷した絶縁導体や露出導体への装着条件を確認します。
■汚染度と安全定格
汚染度は、機器が使用される環境に存在するほこり、湿気、結露などが絶縁性能へ与える影響を分類するものです。
一般的な室内用測定器では、汚染度2を前提とする製品が多くあります。しかし、工場、屋外、高湿度環境、導電性粉じんが存在する場所では、想定された条件を超える可能性があります。
次の環境では特に注意します。
・ 結露が発生している
・ 導電性粉じんが存在する
・ 油や化学物質が付着している
・ プローブ表面が濡れている
・ 絶縁部が汚れている
・ 屋外または高湿度環境で使用する
プローブ表面を清潔で乾燥した状態に保ち、規定された環境条件内で使用します。
■高度による絶縁性能の変化
高度が高くなると気圧が低下し、空気による絶縁性能が低下します。そのため、プローブや測定器には使用可能な最大高度が規定されています。
標準的な高度を超えて使用する場合、許容電圧やCAT定格が低下することがあります。
使用場所が高地である場合は、次の項目を確認します。
・ 最大使用高度
・ 高度に応じた電圧ディレーティング
・ 空間距離の条件
・ メーカーが指定する使用制限
・ 使用環境の温度と湿度
地上での定格を、そのまま高地へ適用できるとは限りません。
■CAT定格と周波数ディレーティング
CAT定格があっても、プローブの最大入力電圧は周波数によって低下する場合があります。
CAT定格は、主に配電環境で想定される過渡過電圧への保護性能を示します。一方、周波数ディレーティングは、連続的な交流信号や高周波信号に対するプローブ内部の負担を考慮した制限です。
安全な測定には、次の両方を満たす必要があります。
・ 測定場所に対応したCAT定格
・ 測定周波数における許容入力電圧
CAT III 1,000Vと表示されていても、すべての周波数で1,000Vを測定できるとは限りません。
■測定前に確認すべき項目
配電回路や高電圧回路へプローブを接続する前に、次の項目を確認します。
・ 測定場所のCAT区分
・ 接地に対する最大動作電圧
・ 予想される過渡過電圧
・ プローブと測定器のCAT定格
・ すべてのアクセサリのCAT定格
・ 周波数に対する電圧ディレーティング
・ 使用温度、高度、湿度および汚染度
・ プローブの絶縁部に損傷がないこと
・ 保護バリアや保護キャップが正しく装着されていること
型名、外観、ケーブルの色などから安全定格を推測してはいけません。製品本体の表示と取扱説明書を確認します。
■安全な接続と取り外し
危険電圧が存在する回路では、可能な限り電源を切り、蓄積された電荷を放電してからプローブを接続します。
接続と取り外しは、製品の取扱説明書に記載された順序に従います。一般的には、通電中に入力クリップやプローブチップの位置を変更しないことが重要です。
測定時には、次の点を守ります。
・ 指を保護バリアより後ろに置く
・ 露出した導体へ触れない
・ 不要なプローブやリードを取り外す
・ 規定された保護具を使用する
・ 単独作業に関する安全規則を確認する
・ 回路を無電圧にしてから接続を変更する
・ 測定終了後も残留電荷を確認する
高電圧測定は、必要な教育と資格を持つ作業者が、管理された環境で実施してください。
■よくある誤解
CAT定格については、次のような誤解に注意が必要です。
・ 最大電圧が高ければ、どの測定場所でも使用できる
・ CAT番号だけを確認すればよい
・ プローブ本体の定格だけで測定系全体の定格が決まる
・ CAT表示のない高電圧プローブを分電盤で使用できる
・ 差動電圧が小さければ安全である
・ 短時間の測定なら定格を超えてもよい
・ 保護キャップを外してもCAT定格は変わらない
・ 規格適合品なら、すべての回路で使用できる
安全性は、測定カテゴリ、電圧、周波数、アクセサリ、使用環境および接続方法を組み合わせて判断します。
■まとめ
測定カテゴリ(CAT)は、低電圧配電設備の測定場所で想定される過渡過電圧とエネルギーに対する保護区分です。
CAT IIはコンセントへ接続される機器、CAT IIIは建物内の固定配線や分電盤、CAT IVは引込口や電力量計など、電源供給点に近い場所を対象とします。
CAT定格は必ず定格電圧と組み合わせて確認します。また、プローブ、測定器、リード、クリップ、アダプタの中で最も低い定格が、測定システム全体の上限になります。
■T&Mコーポレーション株式会社の取り扱いプローブ
T&Mコーポレーション株式会社では、各種測定カテゴリと安全規格に対応する高電圧パッシブプローブ、高電圧差動プローブ、電流プローブ、絶縁測定システムおよび安全アクセサリを取り扱っています。
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