同軸ケーブル・終端器・アッテネータの選び方

同軸ケーブル、終端器、アッテネータは、高速信号や高周波信号をオシロスコープへ正確に伝送するために使用します。

特性インピーダンス、帯域幅、最大電圧、最大電力などが測定条件に適合していない場合、信号反射、振幅誤差、波形歪み、部品の発熱や破損が発生する可能性があります。

 
 
同軸ケーブルとは

同軸ケーブルは、中心導体、絶縁体、外部導体、外被によって構成される信号ケーブルです。

中心導体の周囲を外部導体で囲むことで、信号のリターンパスを明確にし、外部ノイズの侵入と信号の放射を抑えます。

主な用途には、次のものがあります。

・ オシロスコープへの信号入力
・ 信号発生器との接続
・ 高速デジタル信号の伝送
・ RF信号の測定
・ 外部トリガ信号の接続
・ TDR測定
・ ネットワークアナライザ測定
・ プローブ出力の伝送

高速・高周波測定では、同軸ケーブルも測定システムの一部として選定します。

 
 
同軸ケーブルの基本構造

一般的な同軸ケーブルは、次の部分で構成されます。

・ 中心導体
・ 誘電体
・ 外部導体
・ 編組シールド
・ 箔シールド
・ 外被
・ コネクタ

中心導体と外部導体の寸法、誘電体の材料などによって、特性インピーダンスと周波数特性が決まります。

 
 
特性インピーダンスとは

特性インピーダンスは、ケーブルを伝搬する電圧波と電流波の比を表します。

一般的な電子計測では50Ω、映像・放送分野では75Ωの同軸ケーブルが多く使用されます。

高速信号測定では、次の構成品のインピーダンスを統一します。

・ 信号源
・ 同軸ケーブル
・ コネクタ
・ 変換アダプタ
・ 終端器
・ アッテネータ
・ オシロスコープ入力
・ 測定治具

50Ωと75Ωを混在させると、接続部で信号反射が発生します。

 
 
50Ω同軸ケーブル

50Ω同軸ケーブルは、オシロスコープ、信号発生器、高周波測定器、通信機器などで広く使用されます。

主な用途は、次のとおりです。

・ 高速パルス信号
・ RF信号
・ 50Ω出力の信号発生器
・ オシロスコープの50Ω入力
・ SMAまたはBNC測定系
・ 高速シリアル信号
・ TDRおよびSパラメータ測定

ケーブル、終端器、アッテネータを含め、測定系全体を50Ωで統一することが基本です。

 
 
75Ω同軸ケーブル

75Ω同軸ケーブルは、映像、放送、テレビ信号などで使用されます。

75Ω信号を50Ωオシロスコープへ接続する場合は、インピーダンス変換、適切な終端、測定誤差などを考慮する必要があります。

50Ω終端を接続するだけでは、75Ω系を正しく終端したことにはなりません。信号源と測定対象の仕様に合わせて、75Ω入力または専用変換器を使用します。

 
 
ケーブルの帯域幅

同軸ケーブルには、使用可能な周波数範囲があります。

周波数が高くなるほど導体損失と誘電体損失が増加し、信号振幅が低下します。また、ケーブル長が長いほど損失も大きくなります。

確認すべき項目は、次のとおりです。

・ メーカーが保証する周波数範囲
・ 単位長さ当たりの減衰量
・ 使用するケーブル長
・ コネクタを含む挿入損失
・ 位相特性
・ 群遅延
・ 反射損失またはVSWR

単に「高周波対応」と記載されたケーブルではなく、測定周波数における損失を確認します。

 
 
ケーブル長による減衰

同じ種類のケーブルでも、長くなるほど信号損失が増えます。

高速エッジでは高周波成分が低周波成分より強く減衰するため、振幅低下だけでなく立上り時間の増加や波形歪みが発生します。

測定では、次の対策が有効です。

・ 必要以上に長いケーブルを使用しない
・ 高周波損失の小さいケーブルを選ぶ
・ 不要な延長ケーブルを追加しない
・ 複数の変換アダプタを削減する
・ ケーブル損失を補正する
・ 必要に応じてディエンベディングを行う

複数チャンネルの時間差を比較する場合は、ケーブル長もそろえます。

 
 
伝搬遅延とは

信号は同軸ケーブル内を有限の速度で伝搬します。ケーブルへ入力されてから出力へ到達するまでの時間を伝搬遅延と呼びます。

ケーブルが長くなるほど伝搬遅延も増加します。異なる長さや種類のケーブルを複数チャンネルで使用すると、波形間に時間差が生じます。

次の測定では特に注意が必要です。

・ 電圧と電流の電力演算
・ 複数チャンネルの位相比較
・ 差動信号の比較
・ クロックとデータのタイミング測定
・ TDR測定
・ 伝搬時間測定

必要に応じてデスキュー補正を行います。

 
 
シールド性能

同軸ケーブルの外部導体は、外部電磁界から信号を保護すると同時に、信号電流のリターンパスとして機能します。

シールド構造には、次のようなものがあります。

・ 編組シールド
・ 箔シールド
・ 二重編組シールド
・ 編組と箔の複合シールド
・ セミリジッド構造
・ ソリッド外部導体

高いシールド性能が必要な微小信号測定では、二重シールドや低リーク構造のケーブルが有効です。

 
 
ケーブルの柔軟性と測定性能

柔軟なケーブルは取り回しやすい一方、曲げや移動によって位相や振幅特性が変化する場合があります。

セミリジッドケーブルや位相安定ケーブルは、機械的な配置変化による特性変動を抑えやすいことが特長です。

選定時には、次の点を考慮します。

・ 必要な柔軟性
・ 最小曲げ半径
・ 位相安定性
・ 挿入損失
・ 繰返し屈曲への耐久性
・ 設置スペース
・ コネクタへ加わる荷重

高精度な位相測定では、ケーブルの曲げ方と配置も測定条件として管理します。

 
 
最大電圧と最大電力

同軸ケーブルには、最大使用電圧と最大伝送電力が規定されています。

許容値は、周波数、温度、高度、コネクタ、終端状態などによって低下する場合があります。

確認すべき項目は、次のとおりです。

・ 最大動作電圧
・ 絶縁耐電圧
・ 最大RF電力
・ 周波数ディレーティング
・ 温度ディレーティング
・ 使用高度
・ コネクタの定格
・ 連続信号またはパルス信号

ケーブル本体の定格が高くても、コネクタやアダプタの定格が低い場合があります。

 
 
終端器とは

終端器は、伝送線路の終端へ規定されたインピーダンスを接続し、信号反射を抑えるための部品です。

一般的な50Ω測定系では、ケーブル終端へ50Ω終端器を接続します。

終端器には、次のような種類があります。

・ BNC型終端器
・ SMA型終端器
・ N型終端器
・ フィードスルー型終端器
・ 高電力終端器
・ 精密終端器
・ DCブロック内蔵型終端器

用途に応じて、周波数、電力、精度、コネクタ形式を選択します。

 
 
フィードスルー終端器とは

フィードスルー終端器は、オシロスコープ入力と同軸ケーブルの間へ接続し、外部で規定インピーダンスに終端する部品です。

オシロスコープに50Ω入力がない場合や、外部終端器を使用したい場合に便利です。

ただし、フィードスルー終端器を使用する場合は、オシロスコープ側を高インピーダンス入力に設定します。

オシロスコープを50Ω入力へ設定した状態で、さらに50Ωフィードスルー終端器を接続すると、合成インピーダンスが25Ωとなり、振幅や信号源負荷が変化します。

 
 
オシロスコープ内蔵50Ω終端との違い

多くのオシロスコープには、1MΩ入力と50Ω入力の切替機能があります。

内蔵50Ω終端は、追加部品なしで測定でき、周波数特性もオシロスコープ入力として管理されています。一方、最大入力電圧や電力が低い場合があります。

外部終端器を使用する場合は、終端器の周波数特性、電力定格、温度特性などが測定系へ追加されます。

測定条件に応じて、内蔵終端と外部終端を使い分けます。

 
 
終端器の電力定格

終端器は、信号電力を抵抗で熱へ変換します。そのため、許容電力を超えると、温度上昇、抵抗値の変化、焼損などが発生します。

終端器へ加わる電力は、信号のRMS電圧と終端抵抗から求められます。

特に次の信号では注意が必要です。

・ 大振幅の連続正弦波
・ 直流電圧を含む信号
・ 高デューティ比のパルス
・ 長時間連続する信号
・ 高出力のRF信号

ピーク電圧だけでなく、平均電力とRMS電圧を確認します。

 
 
終端器の精度と温度特性

終端抵抗が公称値からずれると、信号反射と振幅誤差が増加します。

精密測定では、次の仕様を確認します。

・ 抵抗値許容差
・ 周波数に対するインピーダンス
・ VSWRまたは反射損失
・ 温度係数
・ 最大電力
・ 自己発熱
・ コネクタの再現性

高電力を加えると終端器の温度が上昇し、一時的に抵抗値や反射特性が変化する場合があります。

 
 
アッテネータとは

アッテネータは、信号波形とインピーダンスをできるだけ維持しながら、信号振幅を一定の比率で減衰させる部品です。

次のような用途に使用します。

・ オシロスコープ入力の保護
・ 大振幅信号の測定
・ 信号レベルの調整
・ 測定器間のレベル整合
・ 反射特性の改善
・ 信号源へ加わる反射の低減
・ 受信回路の過入力防止

減衰量は、dBまたは比率で表示されます。

 
 
減衰量のdB表示

アッテネータの減衰量は、一般的にdBで表されます。

電圧比とインピーダンスが一定の場合、代表的な関係は次のとおりです。

・ 6dB:約2分の1
・ 10dB:約3.16分の1
・ 20dB:10分の1
・ 40dB:100分の1

実際の減衰量には周波数特性と製品誤差があります。高精度測定では、校正データまたは実測値を使用します。

 
 
固定アッテネータ

固定アッテネータは、一定の減衰量を持つ部品です。

構造が比較的簡単で、広い周波数範囲にわたって安定した減衰量を得やすいことが特長です。

代表的な減衰量には、次のものがあります。

・ 1dB
・ 3dB
・ 6dB
・ 10dB
・ 20dB
・ 30dB
・ 40dB

複数のアッテネータを直列に接続すると減衰量を加算できますが、接続部と測定不確かさも増加します。

 
 
可変アッテネータ

可変アッテネータは、減衰量を段階的または連続的に変更できる部品です。

信号レベルを変えながら受信感度や回路動作を確認する測定に適しています。

使用時には、次の項目を確認します。

・ 減衰量の設定範囲
・ 設定ステップ
・ 減衰精度
・ 対応周波数
・ 最大入力電力
・ 挿入損失
・ 再現性
・ 制御方式

設定を変更するときに信号が一時的に途切れたり、インピーダンスが変化したりする製品もあります。

 
 
アッテネータの最大入力電力

アッテネータは入力信号の一部を熱として消費するため、最大入力電力が規定されています。

許容電力を超えると、次の問題が発生する可能性があります。

・ 異常発熱
・ 減衰量の変化
・ インピーダンスの変化
・ 内部抵抗の焼損
・ コネクタの損傷
・ 測定器への過入力

連続波とパルスでは許容条件が異なる場合があります。ピーク電力、平均電力、パルス幅、デューティ比を確認します。

 
 
アッテネータと最大入力電圧

アッテネータを使用するとオシロスコープへ入力される電圧は低下しますが、アッテネータの入力側には元の信号電圧が加わります。

そのため、次のすべてを確認する必要があります。

・ アッテネータの最大入力電圧
・ 最大入力電力
・ コネクタの電圧定格
・ オシロスコープの最大入力電圧
・ 直流成分
・ オーバーシュートを含むピーク電圧
・ 周波数ディレーティング

一般的なRFアッテネータは、高電圧配電回路の測定用ではありません。

 
 
アッテネータによる測定値の換算

外部アッテネータを使用した場合は、減衰量を考慮して元の電圧へ換算します。

20dBのアッテネータで電圧を10分の1にした場合、オシロスコープの表示値を10倍すると入力側の電圧を求められます。

オシロスコープに外部減衰比の設定機能がある場合は、画面上で自動換算できます。

設定後には、次の項目を確認します。

・ 入力した減衰量
・ dB値または電圧比
・ 表示単位
・ オフセット値
・ 自動測定値
・ 保存波形のスケーリング

設定ミスがあると、すべての電圧測定値が誤ります。

 
 
アッテネータによる整合改善

信号源と負荷の間へアッテネータを追加すると、反射波が往復する過程で減衰するため、見かけ上の整合状態を改善できる場合があります。

これにより、次の効果が得られることがあります。

・ リンギングの低減
・ 信号源へ戻る反射の低減
・ 負荷変動の影響低減
・ 測定再現性の向上

ただし、アッテネータは根本的なインピーダンス不整合をなくすものではありません。必要な信号振幅やS/N比も低下するため、用途に応じて減衰量を選択します。

 
 
DCブロックとは

DCブロックは、直流成分を遮断し、交流成分だけを通過させる同軸アクセサリです。

直流バイアスが加わったRF信号を測定するときや、測定器の入力を直流電圧から保護するときに使用します。

確認すべき項目は、次のとおりです。

・ 下限周波数
・ 上限周波数
・ 最大直流電圧
・ 最大RF電力
・ 挿入損失
・ 特性インピーダンス
・ コネクタ形式
・ 入力側と出力側の方向指定

DCブロックは高電圧プローブの代わりにはなりません。

 
 
方向性のあるアクセサリ

一部のアッテネータ、DCブロック、バイアスティー、保護器などには入力側と出力側の指定があります。

逆方向に接続すると、最大電圧、電力処理、周波数特性などが仕様どおりにならない場合があります。

製品本体に表示された次の情報を確認します。

・ INPUT
・ OUTPUT
・ IN
・ OUT
・ 矢印
・ ポート番号
・ 信号方向

方向指定がない受動部品でも、校正データが特定方向を基準としている場合があります。

 
 
コネクタと変換アダプタ

ケーブル、終端器、アッテネータのコネクタが異なる場合は、変換アダプタを使用します。

ただし、アダプタを追加すると、次の影響が生じます。

・ 挿入損失の増加
・ 反射特性の悪化
・ 周波数上限の低下
・ 接触不良の可能性
・ 最大電圧と電力の低下
・ 機械的負荷の増加

複数のアダプタを直列に接続せず、可能であれば適切なコネクタを備えたケーブルを使用します。

 
 
ケーブル接続時の注意点

同軸ケーブルを接続するときは、コネクタへ過度な力を加えないようにします。

・ コネクタの種類を確認する
・ 中心導体に曲がりがないか確認する
・ 接続面を清潔にする
・ ねじ式コネクタは指定トルクで締める
・ BNCは確実にロックする
・ ケーブルを持ってコネクタを回さない
・ コネクタ根元で急に曲げない
・ 重いアダプタを支持する

高精度測定では、接続の再現性も測定誤差へ影響します。

 
 
ケーブルの故障と診断

同軸ケーブルに断線、接触不良、シールド損傷などがあると、次の症状が現れます。

・ 信号が表示されない
・ 振幅が不安定になる
・ ケーブルを動かすと波形が変化する
・ ノイズが増加する
・ 特定の周波数で減衰が大きくなる
・ 反射やリンギングが増える
・ チャンネル間の時間差が変化する

別の正常なケーブルへ交換して比較すると、原因を切り分けやすくなります。

 
 
終端の二重接続に注意する

オシロスコープの50Ω入力と外部50Ω終端器を同時に使用すると、二つの50Ω抵抗が並列に接続され、合成抵抗は25Ωになります。

この状態では、信号源への負荷が大きくなり、表示振幅も想定より低くなります。

接続前に、次のどちらを使用するか確認します。

・ オシロスコープ内蔵の50Ω入力
・ 高インピーダンス入力+外部50Ω終端器

意図した特殊測定を除き、両方を同時に使用しません。

 
 
振幅が想定と異なる場合

同軸測定で振幅が合わない場合は、次の項目を確認します。

・ 信号発生器の振幅表示条件
・ High-Z表示または50Ω負荷表示
・ オシロスコープの入力インピーダンス
・ 外部終端器の有無
・ 終端の二重接続
・ 外部アッテネータの減衰量
・ ケーブル損失
・ 変換アダプタの損失
・ 直流オフセット

50Ω負荷を前提とする信号発生器を高インピーダンス入力へ接続すると、表示設定のおよそ2倍の電圧が観測される場合があります。

 
 
選定時の確認項目

同軸ケーブル、終端器、アッテネータを選定するときは、次の項目を確認します。

・ 特性インピーダンス
・ コネクタ形式
・ 対応周波数
・ 挿入損失
・ 反射損失またはVSWR
・ 減衰量と精度
・ 最大動作電圧
・ 最大入力電力
・ 直流成分への対応
・ ケーブル長
・ 伝搬遅延
・ 最小曲げ半径
・ 温度範囲
・ 校正データの有無

測定器単体ではなく、信号源からオシロスコープまでの経路全体で仕様を確認します。

 
 
まとめ

同軸ケーブルは、高速・高周波信号をシールドしながら伝送するために使用します。終端器は伝送線路を規定インピーダンスで終端して信号反射を抑え、アッテネータはインピーダンスを維持しながら信号振幅を低下させます。

正確な測定には、信号源、ケーブル、コネクタ、終端器、アッテネータ、オシロスコープ入力の特性インピーダンスを統一することが重要です。

帯域幅だけでなく、周波数における損失、最大電圧、最大電力、伝搬遅延およびディレーティングも確認してください。

 
 
T&Mコーポレーション株式会社の取り扱い製品

T&Mコーポレーション株式会社では、50Ω・75Ω同軸ケーブル、BNC・SMA・N型ケーブル、フィードスルー終端器、精密終端器、固定・可変アッテネータ、DCブロック、変換アダプタおよび各種高周波アクセサリを取り扱っています。

測定周波数、信号振幅、特性インピーダンス、最大電力、ケーブル長および接続機器に応じた製品をご提案します。オシロスコープや信号発生器との接続構成についても、お気軽にお問い合わせください。

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