プローブのゼロ調整・デスキュー・ディエンベディングとは?

プローブを使用して正確な波形を測定するためには、プローブ固有の誤差を補正する必要があります。代表的な補正方法には、ゼロ調整、デスキューおよびディエンベディングがあります。

それぞれ補正する対象が異なるため、測定前に目的を理解し、適切な手順で実施することが重要です。

 
 
プローブのゼロ調整とは

ゼロ調整とは、入力信号が0Vのときに表示される電圧のずれを補正する操作です。「ゼロ点調整」または「オートゼロ」と呼ばれることもあります。

差動プローブ、電流プローブ、アクティブプローブなどは、内部アンプ、温度変化、電源状態などの影響によって、入力がない状態でもわずかな出力が発生する場合があります。

ゼロ調整を行うことで、このオフセット誤差を低減し、基準となる0Vまたは0Aを正しく表示できます。

 
 
ゼロ調整が必要になる場合

次のような場合には、測定前にゼロ調整を行います。

・ プローブの電源を入れた直後
・ プローブをオシロスコープへ接続した後
・ 測定レンジや減衰比を変更した後
・ 周囲温度が大きく変化した場合
・ 長時間測定を継続している場合
・ 微小な電圧や電流を測定する場合
・ 波形の基準位置にずれが見られる場合

特に微小信号の測定では、わずかなゼロ点のずれが測定結果に大きく影響します。必要に応じて、測定中にも定期的にゼロ調整を行います。

 
 
ゼロ調整の基本的な手順

ゼロ調整の方法は製品によって異なりますが、一般的には次の手順で行います。

・ プローブとオシロスコープの電源を入れる
・ 指定されたウォームアップ時間を確保する
・ プローブ入力を測定対象から取り外す
・ 入力端子を指定された方法で短絡する
・ オシロスコープまたはプローブのゼロ調整機能を実行する
・ 表示値が0Vまたは0A付近にあることを確認する

入力を開放した状態で調整する製品と、入力を短絡した状態で調整する製品があります。必ず使用するプローブの取扱説明書に従ってください。

 
 
電流プローブのゼロ調整と消磁

直流測定に対応した電流プローブでは、ゼロ調整の前に消磁が必要になる場合があります。

磁気コアに残留磁気があると、導体に電流が流れていない状態でも出力が発生します。消磁によって残留磁気を低減し、その後にゼロ調整を行うことで、直流電流の測定誤差を抑えられます。

消磁およびゼロ調整を行うときは、クランプを完全に閉じ、測定導体をクランプ内部から外します。外部磁界や近くの大電流配線も測定値に影響するため、実際に使用する位置と方向に近い状態で調整することが望まれます。

 
 
デスキューとは

デスキューとは、複数の測定チャンネル間に生じる時間差を補正する操作です。

電圧プローブと電流プローブ、異なる種類の差動プローブ、またはケーブル長が異なるプローブを組み合わせると、各信号がオシロスコープへ到達するまでの時間に差が生じます。この時間差をスキューと呼びます。

オシロスコープのチャンネルごとに遅延時間を設定し、波形の時間位置を一致させる操作がデスキューです。

 
 
デスキューが必要な測定

デスキューは、複数の波形の位相関係が測定結果に影響する場合に重要です。

代表的な用途には、次のようなものがあります。

・ 電圧と電流から電力を演算する測定
・ スイッチング損失の測定
・ MOSFETやIGBTのターンオン時間測定
・ SiC・GaNデバイスの高速スイッチング測定
・ 入力電力と出力電力の比較
・ 複数相のタイミング測定
・ クロック信号とデータ信号の比較

高速スイッチング測定では、数nsの時間差でも演算結果に大きな誤差が生じる場合があります。

 
 
電力測定におけるスキューの影響

瞬時電力は、同じ時刻における電圧と電流を乗算して求めます。

電圧波形と電流波形の間に時間差があると、本来とは異なる時刻の値を乗算することになり、スイッチング損失、平均電力、位相差などの演算結果に誤差が生じます。

特に電圧と電流が急激に変化するスイッチング期間では、わずかなスキューでも大きな電力が表示されることがあります。高精度な電力解析を行う前には、デスキューを実施することが重要です。

 
 
デスキューの基本的な手順

デスキューには、専用のデスキュー治具または両方のプローブで同時に観測できる基準信号を使用します。

一般的な手順は、次のとおりです。

・ 使用するプローブを各チャンネルへ接続する
・ 実際の測定と同じレンジや設定にする
・ 両方のプローブで共通の基準信号を測定する
・ 波形の立上りまたは基準位置を比較する
・ チャンネルのスキュー補正値を調整する
・ 両方の波形が時間軸上で一致することを確認する

補正後にプローブ、入力レンジ、ケーブル、アクセサリまたはチャンネルを変更した場合は、再度デスキューを行います。

 
 
ディエンベディングとは

ディエンベディングとは、プローブ、ケーブル、治具、コネクタ、基板配線などが測定結果に与える影響を、演算によって取り除く処理です。

測定システムには、入力容量、寄生インダクタンス、挿入損失、周波数特性、位相遅延などが存在します。高速信号では、これらの影響によって振幅の低下、立上り時間の変化、リンギング、位相ずれなどが発生します。

測定経路の伝達特性が分かっている場合、その特性を波形から逆算して、本来の測定点に近い波形を推定できます。

 
 
ディエンベディングの対象

ディエンベディングでは、次のような要素の影響を補正できます。

・ プローブ本体の周波数特性
・ 同軸ケーブルの損失と遅延
・ コネクタやアダプタの特性
・ テストフィクスチャの挿入損失
・ PCB配線やビアの伝送特性
・ プローブ接続用パッドの影響
・ 測定点までの伝送線路

補正には、Sパラメータ、インパルス応答、周波数応答、専用のプローブモデルなどが使用されます。

 
 
デスキューとディエンベディングの違い

デスキューは、主に波形間の時間位置をそろえるための補正です。波形全体を時間軸方向へ移動し、複数チャンネルの遅延差を低減します。

ディエンベディングは、測定経路によって生じる振幅、周波数特性および位相特性の変化を補正します。単純な時間移動だけでなく、測定システムの伝達特性を考慮した演算を行います。

・ ゼロ調整:0Vまたは0Aの基準ずれを補正する
・ デスキュー:チャンネル間の時間差を補正する
・ ディエンベディング:測定経路の伝達特性を補正する

目的に応じて、これらの補正を組み合わせて使用します。

 
 
ディエンベディングを使用する際の注意点

ディエンベディングの精度は、使用するモデルやSパラメータの品質に左右されます。実際の測定条件と異なるデータを使用すると、補正後の波形に新たな誤差が生じる場合があります。

使用時には、次の点を確認します。

・ 周波数範囲が測定帯域をカバーしている
・ ポートインピーダンスが測定系と一致している
・ ケーブルや治具の接続方向が正しい
・ 測定時と特性取得時の構成が一致している
・ 補正によってノイズが過度に増幅されていない
・ 補正前後の波形を比較している
・ 使用するデータの基準面が明確である

損失が非常に大きい周波数成分を強く補正すると、信号とともにノイズも増幅されます。必要な帯域に限定して補正することが重要です。

 
 
補正を行う適切な順序

複数の補正が必要な場合は、一般的に次の順序で準備します。

・ プローブと測定器を十分にウォームアップする
・ プローブの補正状態と校正状態を確認する
・ ゼロ調整または消磁を行う
・ 必要に応じてプローブのゲインやオフセットを補正する
・ 複数チャンネル間のデスキューを行う
・ 測定経路に応じたディエンベディングを設定する
・ 既知の基準信号で補正結果を確認する

製品や測定アプリケーションによって推奨される順序が異なる場合があります。測定器およびプローブの取扱説明書に従って設定してください。

 
 
まとめ

ゼロ調整は、プローブの基準点に生じるオフセット誤差を補正する操作です。デスキューは、複数チャンネル間の時間差を補正し、電圧波形と電流波形などの時間位置を一致させます。

ディエンベディングは、プローブ、ケーブル、治具および基板配線などの伝達特性を測定結果から取り除く処理です。

これらの補正を適切に行うことで、微小信号、高速信号、スイッチング損失および電力波形の測定精度を向上できます。

 
 
T&Mコーポレーション株式会社の取り扱い製品

T&Mコーポレーション株式会社では、ゼロ調整、デスキューおよびディエンベディングに対応する差動プローブ、電流プローブ、アクティブプローブ、光アイソレーションプローブ、デスキュー治具および各種測定アクセサリを取り扱っています。

パワー半導体のスイッチング損失測定、高速信号解析、微小電圧・電流測定など、用途に応じたプローブと補正方法をご提案します。製品の選定やオシロスコープとの互換性についても、お気軽にお問い合わせください。

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