プローブ負荷とは?測定対象への影響を抑える方法
プローブ負荷とは、プローブを回路へ接続することによって、測定対象の電圧、周波数特性、立上り時間などが変化する現象です。
プローブは理想的な測定器ではなく、入力抵抗、入力容量、寄生インダクタンスを持っています。特に高周波回路や高インピーダンス回路では、プローブを接続しただけで回路動作が変化する場合があります。
■プローブ負荷とは
オシロスコーププローブを測定点へ接続すると、プローブの入力インピーダンスが測定対象の回路へ並列に接続されます。
この結果、測定点からプローブへ電流が流れ、測定前とは異なる電圧や波形が表示されることがあります。このように、プローブが測定対象へ与える電気的な影響をプローブ負荷と呼びます。
プローブ負荷は、主に次の要素によって決まります。
・ 入力抵抗
・ 入力容量
・ 接続部の寄生容量
・ グランド接続部の寄生インダクタンス
・ ケーブルやコネクタの特性
・ 周波数に対する入力インピーダンス
プローブの入力インピーダンスは一定ではなく、信号周波数によって変化します。
■抵抗性負荷とは
直流または低周波信号では、プローブの入力抵抗が測定対象へ与える影響が大きくなります。
プローブの入力抵抗と測定回路の出力抵抗によって分圧回路が形成されるため、実際の測定点よりも低い電圧が表示される場合があります。
例えば、出力抵抗の大きいセンサー回路や抵抗分圧回路へ入力抵抗の低いプローブを接続すると、回路の分圧比そのものが変化します。
抵抗性負荷による影響は、次の条件で大きくなります。
・ 測定対象の出力抵抗が高い
・ プローブの入力抵抗が低い
・ 1Xパッシブプローブを使用している
・ 高抵抗の分圧回路を測定している
・ 微小な直流電圧を測定している
測定対象の出力抵抗に対して、十分に高い入力抵抗を持つプローブを使用することが重要です。
■容量性負荷とは
プローブの入力容量は、測定点から見てグランドへ接続されたコンデンサのように作用します。
直流では入力容量の影響はほとんどありませんが、信号周波数が高くなるほど容量性リアクタンスが低下し、測定対象から流れ込む電流が増加します。
容量性負荷によって、次のような変化が発生する場合があります。
・ 信号振幅の低下
・ 立上り時間と立下り時間の増加
・ パルス幅の変化
・ 発振周波数の変化
・ 回路動作の不安定化
・ リンギングやオーバーシュートの変化
・ 発振回路の停止
高速信号では、プローブの入力抵抗が高くても、入力容量による負荷を無視できません。
■周波数と入力インピーダンスの関係
容量のインピーダンスは、周波数が高くなるほど低くなります。そのため、プローブに記載された「10MΩ」などの入力抵抗だけでは、高周波における負荷を判断できません。
例えば、入力抵抗が10MΩであっても、数pFから十数pFの入力容量が並列に存在します。高周波領域では、この入力容量が支配的になり、実際の入力インピーダンスが大幅に低下します。
プローブを選定する際は、次の仕様を確認します。
・ 直流入力抵抗
・ 入力容量
・ 周波数に対する入力インピーダンス
・ 帯域幅
・ 減衰比
・ プローブチップおよびアクセサリの容量
高速信号の測定では、入力容量の小さいプローブが有効です。
■1Xプローブと10Xプローブの負荷の違い
一般的な1Xパッシブプローブは、信号を減衰させずにオシロスコープへ伝送します。小さな信号を測定しやすい一方、入力容量が比較的大きく、帯域幅も制限される傾向があります。
10Xパッシブプローブは、入力信号を10分の1に減衰させます。一般に1Xプローブより入力抵抗が高く、入力容量が小さいため、測定対象への負荷を抑えやすくなります。
・ 1Xプローブ:高感度だが、容量性負荷が大きくなりやすい
・ 10Xプローブ:負荷が小さく、一般的な波形測定に適している
・ 100Xプローブ:高電圧測定に対応し、入力容量を抑えられる場合がある
ただし、減衰比を大きくすると、オシロスコープへ入力される信号も小さくなります。微小信号では、測定システムのノイズに注意が必要です。
■アクティブプローブによる負荷の低減
アクティブプローブは、プローブ先端付近に増幅回路やバッファ回路を備えています。
入力抵抗が高く、入力容量が非常に小さい製品が多いため、高速デジタル信号、高周波回路、クロック信号などの測定に適しています。
アクティブプローブの主な特長は、次のとおりです。
・ 入力容量が小さい
・ 高い帯域幅を持つ
・ 高速な立上り時間に対応する
・ 高インピーダンス回路への影響を抑えられる
・ 小型チップによって短い接続が可能
一方、入力ダイナミックレンジや最大入力電圧がパッシブプローブより小さい製品もあります。測定電圧が定格範囲内であることを確認してください。
■差動プローブの入力負荷
差動プローブでは、プラス入力とマイナス入力の両方が測定回路へ負荷を与えます。
入力間の差動インピーダンスだけでなく、各入力からグランドまでのコモンモードインピーダンスも測定結果に影響します。2つの入力経路の負荷が不均衡になると、コモンモード除去性能が低下する場合があります。
差動プローブを選ぶ際は、次の項目を確認します。
・ 差動入力抵抗
・ 差動入力容量
・ 各入力からグランドまでの抵抗と容量
・ 入力間のバランス
・ 使用するチップやリードの特性
・ 周波数に対するCMRR
プラス側とマイナス側の接続方法をできるだけ対称にすることで、差動測定の精度を保ちやすくなります。
■グランドリードによる影響
パッシブプローブのグランドリードには寄生インダクタンスがあります。グランドリードが長くなるほどインダクタンスが増え、プローブの入力容量と組み合わさって共振回路を形成します。
その結果、本来の信号には存在しないリンギング、オーバーシュート、ノイズなどが表示される場合があります。
高速信号を測定するときは、次の方法が有効です。
・ グランドリードを短くする
・ グランドスプリングを使用する
・ 同軸型プローブチップを使用する
・ 測定ループの面積を小さくする
・ 測定点の近くにグランド端子を設ける
・ PCBへ直接接続するアクセサリを使用する
接続方法もプローブ負荷の一部として考える必要があります。
■プローブチップとアクセサリの影響
プローブ本体の入力容量が小さくても、長い入力リード、クリップ、変換アダプタなどを追加すると、寄生容量や寄生インダクタンスが増加します。
特に高速スイッチング測定では、アクセサリによってプローブ本来の帯域幅や立上り時間が得られない場合があります。
アクセサリを選ぶときは、利便性だけでなく、次の項目を確認します。
・ 対応帯域幅
・ 追加される入力容量
・ リードの長さ
・ 接続ループの大きさ
・ 最大入力電圧
・ 安全定格
・ プローブとの互換性
可能な限り、メーカーが指定するアクセサリを使用してください。
■プローブ負荷による測定誤差の見分け方
プローブ負荷が疑われる場合は、測定条件を変更し、波形が変化するかを確認します。
・ 1Xプローブから10Xプローブへ変更する
・ 入力容量の小さいアクティブプローブを使用する
・ グランドリードを短くする
・ 異なる測定点で波形を比較する
・ プローブを接続したときの回路動作を確認する
・ 2本のプローブを同じ測定点へ接続して変化を確認する
・ シミュレーション結果や既知の波形と比較する
プローブを追加したときに振幅、周波数、立上り時間などが変化する場合は、プローブ負荷の影響を受けている可能性があります。
■プローブ負荷を抑える方法
プローブ負荷を小さくするためには、測定対象と信号条件に適したプローブを選び、接続部を最小限にします。
主な対策は、次のとおりです。
・ 入力抵抗の高いプローブを選ぶ
・ 入力容量の小さいプローブを選ぶ
・ 高速信号にはアクティブプローブを使用する
・ 通常の測定では10Xプローブを優先する
・ プローブチップとグランド接続を短くする
・ 不要なクリップや変換アダプタを使用しない
・ 測定点に専用のテストパッドを設ける
・ 必要に応じて低容量のPCBアクセサリを使用する
・ 測定帯域を必要な範囲に制限する
設計段階から適切な測定点を用意すると、再現性の高い測定が行いやすくなります。
■まとめ
プローブ負荷は、プローブの入力抵抗、入力容量、寄生インダクタンスなどによって測定対象の動作や波形が変化する現象です。
低周波では入力抵抗、高周波では入力容量と接続部のインダクタンスが大きな影響を与えます。入力容量の小さいプローブを選び、接続経路を短くすることが、正確な測定の基本です。
表示された波形が必ずしもプローブ接続前の波形と同じとは限りません。測定対象のインピーダンスとプローブの周波数特性を確認し、負荷による誤差を評価することが重要です。
■T&Mコーポレーション株式会社の取り扱いプローブ
T&Mコーポレーション株式会社では、低容量アクティブプローブ、差動プローブ、高電圧差動プローブ、パッシブプローブおよび各種低負荷測定アクセサリを取り扱っています。
高速デジタル信号、SiC・GaNパワー半導体、高インピーダンス回路、微小信号など、測定対象の帯域幅、入力容量、電圧範囲および接続方法に応じた製品をご提案します。プローブの選定やオシロスコープとの互換性についても、お気軽にお問い合わせください。

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