リンギング・オーバーシュートが発生する原因と対策

リンギングとオーバーシュートは、高速デジタル回路、スイッチング電源、インバータ、モータードライブなどで頻繁に観測される波形現象です。

これらは実際の回路で発生している場合と、プローブや接続方法によって測定時に生じている場合があります。正確な評価には、回路側と測定系側の両方を確認することが重要です。

 
 
リンギングとは

リンギングとは、信号が急激に変化した直後に、目標電圧の周辺で振動を繰り返す現象です。

立上りエッジ、立下りエッジ、スイッチング素子のターンオンおよびターンオフなどをきっかけに発生します。時間とともに振幅が小さくなる減衰振動として観測されることが一般的です。

リンギングの主な影響には、次のようなものがあります。

・ 信号品質の低下
・ 論理しきい値の複数回通過
・ 誤動作や誤トリガ
・ 半導体素子への電圧ストレス
・ EMIノイズの増加
・ 電力損失の増加
・ 測定値のばらつき

リンギングの周波数と減衰状態を確認することで、原因となる共振経路を推定できる場合があります。

 
 
オーバーシュートとは

オーバーシュートとは、信号が目標とする電圧を一時的に超える現象です。

反対方向へ目標値を超える現象は、アンダーシュートと呼ばれます。例えば、0Vから5Vへ立ち上がる信号が一時的に6Vへ達する場合はオーバーシュートです。0Vより低い電圧まで振れる場合はアンダーシュートです。

オーバーシュートやアンダーシュートが大きいと、半導体素子の絶対最大定格を超え、劣化や破損につながる可能性があります。

 
 
リンギングとオーバーシュートの違い

オーバーシュートは、波形が目標値を一時的に超える最初の変化を表します。リンギングは、その後に続く周期的または準周期的な振動を表します。

両者は同時に発生することが多く、同じ寄生容量と寄生インダクタンスによる共振が原因となる場合があります。

・ オーバーシュート:目標電圧を一時的に超える現象
・ アンダーシュート:目標電圧を反対方向へ下回る現象
・ リンギング:目標電圧の周辺で振動を繰り返す現象

測定では、ピーク電圧だけでなく、振動周波数、継続時間および減衰状態も確認します。

 
 
寄生容量と寄生インダクタンスによる共振

リンギングの代表的な原因は、回路内の寄生容量と寄生インダクタンスによって形成されるLC共振です。

寄生容量は、半導体素子、基板配線、トランス、ヒートシンク、プローブなどに存在します。寄生インダクタンスは、配線、部品端子、ビア、コネクタ、電流ループなどに存在します。

高速な電圧変化や電流変化がLC共振を励起すると、スイッチングエッジの後にリンギングが発生します。

 
 
配線とリターンパスの影響

信号電流には、信号線だけでなく、必ず戻りの経路であるリターンパスが必要です。

信号線とリターンパスの距離が離れていると、電流ループの面積が大きくなり、寄生インダクタンスが増加します。その結果、オーバーシュート、リンギングおよび放射ノイズが増加します。

主な原因には、次のようなものがあります。

・ 長いPCB配線
・ グランドプレーンの分断
・ 信号線直下にリターンパスがない
・ コネクタをまたぐ不連続なグランド
・ スイッチング電流ループが大きい
・ 部品間の距離が長い
・ ビアの配置や数量が不適切

高速回路では、信号経路と同時にリターンパスを設計する必要があります。

 
 
インピーダンス不整合による反射

高速信号が伝送線路を進むとき、配線、ケーブル、コネクタ、負荷などのインピーダンスが一致していないと信号反射が発生します。

反射波が元の信号と重なることで、オーバーシュート、アンダーシュート、段差、リンギングなどが観測されます。

特に次の部分では、インピーダンス不整合が発生しやすくなります。

・ コネクタと基板配線の接続部
・ 異なる線幅のパターン接続部
・ 分岐配線や長いスタブ
・ 終端されていないケーブル
・ テストパッドや大型ビア
・ プローブ接続用の長い配線
・ 異なる特性インピーダンスの変換部

信号周波数だけでなく、立上り時間を基準に伝送線路として扱う必要があるかを判断します。

 
 
スイッチング速度の影響

信号の立上り時間と立下り時間が短いほど、高い周波数成分が含まれます。このため、同じスイッチング周波数でも、エッジが高速な回路ほど寄生成分やインピーダンス不整合の影響を受けやすくなります。

SiCやGaNなどのパワー半導体は、高速なdv/dtとdi/dtを発生させます。これにより、小さな寄生容量や寄生インダクタンスでも、大きなリンギングやオーバーシュートが生じる場合があります。

高速化によって損失を低減できる一方、ノイズ、過渡電圧およびEMIとのバランスを考慮する必要があります。

 
 
プローブによって発生するリンギング

観測されたリンギングが、必ずしも測定対象の回路で発生しているとは限りません。

パッシブプローブの長いグランドリードは寄生インダクタンスを持ち、プローブの入力容量と組み合わさって共振します。この共振によって、実際の波形には存在しないリンギングやオーバーシュートが表示されることがあります。

測定系が原因となる代表例は、次のとおりです。

・ 長いグランドリード
・ 長い差動入力リード
・ 大型のワニ口クリップ
・ 帯域幅の不足したプローブ
・ 入力容量の大きいプローブ
・ 不適切なプローブ補正
・ 低品質な変換アダプタ
・ 測定点から離れたグランド接続

測定方法を変更して波形を比較することが、原因の切り分けに有効です。

 
 
リンギングが実波形か測定誤差かを確認する方法

リンギングの原因を確認するには、プローブや接続方法を変更し、波形の変化を比較します。

・ グランドリードを短くする
・ グランドスプリングを使用する
・ 低入力容量のプローブへ変更する
・ 異なる帯域幅のプローブで比較する
・ 測定点のすぐ近くへグランドを接続する
・ 差動リードを短く対称にする
・ 同軸接続またはPCB直結アクセサリを使用する
・ 測定帯域を変更して比較する

接続方法を変えるとリンギングの周波数や振幅が大きく変化する場合は、測定系の寄生成分が影響している可能性があります。

 
 
回路側でリンギングを抑える方法

回路側のリンギングを抑えるためには、共振を発生させる寄生成分を小さくするか、共振エネルギーを減衰させます。

代表的な対策には、次のようなものがあります。

・ スイッチング電流ループを短くする
・ 往路と復路を近接させる
・ 部品を適切に配置する
・ 低インダクタンスのパッケージを使用する
・ ゲート抵抗を調整してスイッチング速度を制御する
・ RCスナバ回路を追加する
・ RCDクランプやTVSを使用する
・ 適切な終端抵抗を使用する
・ 伝送線路の特性インピーダンスを整合させる
・ 不要な分岐やスタブを短くする

対策によってスイッチング損失や消費電力が増加する場合があります。オーバーシュート、EMI、効率および温度を総合的に評価します。

 
 
スナバ回路による対策

RCスナバは、抵抗とコンデンサを使用して共振エネルギーを吸収し、リンギングを減衰させる回路です。

スイッチング素子、ダイオード、トランス巻線などの両端へ接続されます。適切に設計すると、リンギングとピーク電圧を低減できます。

ただし、コンデンサ容量や抵抗値が不適切な場合、損失が増加したり、別の共振が発生したりする可能性があります。リンギング周波数、寄生成分および消費電力を確認して値を決定します。

 
 
終端抵抗による対策

高速デジタル信号では、伝送線路のインピーダンス不整合を抑えるために終端抵抗を使用します。

代表的な終端方法には、次のようなものがあります。

・ 送信端直列終端
・ 受信端並列終端
・ テブナン終端
・ AC終端
・ 差動終端

信号方式、配線長、特性インピーダンス、ドライバ能力および消費電力に応じて、適切な終端方法を選択します。

 
 
オーバーシュートを測定する際の注意点

オーバーシュートを正しく測定するには、測定システムに十分な帯域幅と立上り時間が必要です。

帯域幅が不足すると、ピークが低く表示されたり、リンギングが見えなくなったりします。一方、長い接続リードによる共振は、実際より大きなピークを表示する場合があります。

測定時には、次の項目を確認します。

・ プローブとオシロスコープの帯域幅
・ プローブの最大入力電圧
・ ピーク電圧と過渡電圧の定格
・ サンプリングレート
・ メモリ長
・ プローブ接続部の長さ
・ 測定帯域制限の設定
・ 波形取得モード

最大入力電圧は、信号の定常値ではなく、オーバーシュートを含むピーク値で判断します。

 
 
測定帯域を制限する場合の考え方

オシロスコープの帯域制限機能を使用すると、高周波ノイズやリンギングが小さく見える場合があります。

ただし、帯域制限によって表示されなくなっただけで、実際の回路からリンギングが消えたとは限りません。回路の安全性やEMIを評価するときは、十分な帯域幅で元の波形を確認する必要があります。

帯域制限は、測定目的に不要なノイズを低減するために使用し、回路現象の有無を判断する手段としては慎重に扱います。

 
 
まとめ

リンギングは、寄生容量と寄生インダクタンスによる共振や、伝送線路のインピーダンス不整合によって発生します。オーバーシュートとアンダーシュートは、信号が目標電圧を一時的に超える現象です。

これらは回路本来の現象だけでなく、長いグランドリードや入力リードなど、プローブの接続方法によっても発生します。

正確に評価するためには、低負荷で十分な帯域幅を持つプローブを使用し、接続経路を短くします。そのうえで、回路レイアウト、終端、ゲート抵抗、スナバ回路などを検討することが重要です。

 
 
T&Mコーポレーション株式会社の取り扱いプローブ

T&Mコーポレーション株式会社では、リンギングやオーバーシュートの評価に適したアクティブプローブ、差動プローブ、高電圧差動プローブ、光アイソレーションプローブ、パッシブプローブおよび各種低インダクタンス接続アクセサリを取り扱っています。

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