寄生容量・寄生インダクタンスが波形に与える影響
寄生容量と寄生インダクタンスは、回路図には明示されていなくても、部品、基板配線、ケーブル、コネクタ、プローブなどに存在する電気的な成分です。
低周波では影響が小さくても、高速信号や高周波信号では、波形の立上り、振幅、リンギング、オーバーシュートなどに大きな影響を与えます。
■寄生成分とは
実際の電子部品や配線は、理想的な抵抗、コンデンサ、インダクタとして動作するわけではありません。
抵抗器や基板配線にもわずかな容量とインダクタンスがあり、コンデンサにも等価直列抵抗や等価直列インダクタンスがあります。このように、本来の目的とは別に存在する電気的な成分を寄生成分と呼びます。
代表的な寄生成分には、次のようなものがあります。
・ 部品端子間の寄生容量
・ PCBパターン間の寄生容量
・ 半導体接合部の容量
・ 配線やビアの寄生インダクタンス
・ コネクタやケーブルの寄生成分
・ プローブ入力の容量
・ プローブリードのインダクタンス
・ 部品や配線の寄生抵抗
信号速度が速くなるほど、これらの影響を無視できなくなります。
■寄生容量とは
寄生容量とは、近接する導体間に意図せず形成される容量です。
PCB上の隣接パターン、部品端子、半導体内部、ケーブル、プローブチップなど、電位差のある2つの導体が近づくと容量が発生します。
寄生容量は、主に次の条件で大きくなります。
・ 導体同士の面積が大きい
・ 導体間の距離が短い
・ 配線が長く並走している
・ 誘電率の高い材料が使用されている
・ 測定点へ複数のプローブを接続している
・ 大型のクリップやアダプタを使用している
プローブの入力容量も、測定点から見れば寄生容量の一部として作用します。
■寄生容量が波形に与える影響
寄生容量は、信号源の出力抵抗と組み合わさってローパスフィルタを形成します。
その結果、高周波成分が減衰し、次のような変化が発生します。
・ 立上り時間と立下り時間が長くなる
・ パルスのエッジが緩やかになる
・ 信号振幅が低下する
・ パルス幅やタイミングが変化する
・ 発振周波数が変化する
・ 回路の応答が遅くなる
・ 微小信号が観測しにくくなる
高インピーダンスの測定点では、数pF程度の容量でも波形に大きな影響を与える場合があります。
■寄生容量によるクロストーク
隣接する信号線の間に寄生容量があると、一方の信号変化がもう一方の信号線へ伝わることがあります。この現象を容量性クロストークと呼びます。
特に高速な立上りや立下りを持つ信号では、信号周波数が低くても大きな干渉が発生する場合があります。
容量性クロストークを抑えるためには、次の対策が有効です。
・ 高速信号線の間隔を広げる
・ 長い並走配線を避ける
・ 信号線の間にグランドを配置する
・ 適切なリターンパスを確保する
・ 信号の立上りを必要以上に速くしない
・ プローブ入力と測定配線を短くする
回路設計と測定方法の両方で対策することが重要です。
■寄生インダクタンスとは
寄生インダクタンスとは、配線、部品端子、ビア、コネクタ、プローブリードなどに意図せず存在するインダクタンスです。
電流が流れる経路には、長さや形状に応じたインダクタンスが発生します。特に電流の変化が速い回路では、わずかな寄生インダクタンスでも大きな電圧が発生します。
寄生インダクタンスは、主に次の条件で大きくなります。
・ 配線が長い
・ 電流ループの面積が大きい
・ 往路と復路の距離が離れている
・ 細い配線や長い端子を使用している
・ ビアやコネクタを多数経由している
・ プローブのグランドリードが長い
・ 大型のワニ口クリップを使用している
高速測定では、数cmのリードでも無視できない影響を与えます。
■寄生インダクタンスによる電圧の発生
インダクタンスに流れる電流が変化すると、その変化を妨げる方向に電圧が発生します。発生する電圧は、インダクタンスと電流変化率に比例します。
スイッチング回路では、短時間に大きな電流が変化するため、小さな寄生インダクタンスでも高いサージ電圧が発生する場合があります。
代表的な影響は、次のとおりです。
・ ターンオフ時の電圧スパイク
・ オーバーシュートとアンダーシュート
・ グランドバウンス
・ ゲート電圧の変動
・ 半導体素子への過電圧ストレス
・ EMIノイズの増加
・ 測定波形への疑似的なスパイク
SiCやGaNなどの高速パワー半導体では、電流変化率が大きいため、寄生インダクタンスの影響が顕著になります。
■寄生容量と寄生インダクタンスによる共振
寄生容量と寄生インダクタンスが組み合わさると、意図しないLC共振回路が形成されます。
高速なパルスやスイッチングエッジがこの共振を励起すると、リンギングが発生します。共振周波数は、寄生容量と寄生インダクタンスの値によって決まります。
リンギングは、次のような問題を引き起こします。
・ 信号品質の低下
・ しきい値の複数回通過
・ 誤動作や誤トリガ
・ 半導体素子への過電圧
・ 放射ノイズと伝導ノイズの増加
・ 波形解析結果の誤差
観測されたリンギングが実際の回路で発生しているのか、プローブ接続によって生じたものなのかを切り分ける必要があります。
■プローブの入力容量による影響
プローブを測定点へ接続すると、プローブの入力容量が回路へ追加されます。
パッシブプローブでは、プローブチップ、ケーブル、補償回路などによって入力容量が形成されます。高インピーダンス回路や高速信号では、この容量によって立上り時間や動作周波数が変化する場合があります。
入力容量の影響を抑えるには、次の方法が有効です。
・ 1Xではなく10Xプローブを使用する
・ 入力容量の小さいアクティブプローブを使用する
・ 低容量の差動プローブを使用する
・ プローブチップを測定点へ直接接続する
・ 不要なアダプタや延長リードを使用しない
・ 測定点へ接続するプローブの本数を減らす
プローブの帯域幅だけでなく、入力容量も確認することが重要です。
■グランドリードの寄生インダクタンス
一般的なプローブの長いグランドリードは、寄生インダクタンスを持っています。プローブの入力容量と組み合わさることで共振し、実際には存在しないリンギングやオーバーシュートを表示する場合があります。
グランドリードの影響を確認するには、同じ信号を異なる接続方法で測定し、波形を比較します。
・ 長いグランドリードを使用する
・ 短いグランドリードへ交換する
・ グランドスプリングを使用する
・ 同軸接続またはPCB直結アクセサリを使用する
接続を短くしたときにリンギングが大幅に減少する場合は、プローブ接続の寄生インダクタンスが測定結果へ影響していた可能性があります。
■差動プローブの接続リードによる影響
差動プローブでは、プラス側とマイナス側の入力リードにも寄生インダクタンスと寄生容量があります。
2本のリードの長さや配置が異なると、入力間の遅延やインピーダンスに不均衡が生じ、コモンモード信号が差動信号として表示される場合があります。
差動測定では、次の点に注意します。
・ プラス側とマイナス側のリードを同じ長さにする
・ 2本のリードを近接させる
・ 測定ループの面積を小さくする
・ 入力リードをできるだけ短くする
・ 指定されたプローブチップを使用する
・ 高速信号ではPCB直結アクセサリを使用する
入力経路の対称性を保つことで、高周波におけるCMRRの低下を抑えられます。
■寄生成分の影響を切り分ける方法
波形に異常が見られる場合は、測定条件を変えて寄生成分の影響を確認します。
主な確認方法は、次のとおりです。
・ プローブの接続位置を変更する
・ グランドリードを短くする
・ 異なる入力容量のプローブで比較する
・ 測定帯域を制限する
・ プローブチップやアクセサリを変更する
・ 回路シミュレーションと比較する
・ 複数の測定方法で同じ波形を確認する
・ 測定ループへ既知の容量や抵抗を追加して変化を見る
測定条件によって波形が大きく変化する場合は、プローブや接続部の寄生成分が影響している可能性があります。
■寄生容量を低減する方法
寄生容量を低減するためには、導体間の結合と測定点へ追加される容量を小さくします。
・ 隣接する配線の間隔を広げる
・ 長い並走配線を避ける
・ 部品と測定点を小型化する
・ 低容量プローブを使用する
・ プローブ接続用パッドを必要以上に大きくしない
・ 不要なコネクタやアダプタを削減する
・ 高インピーダンスノードの配線を短くする
・ 適切なシールドとグランドを配置する
ただし、グランドプレーンを遠ざけると寄生容量は減少する一方、リターンパスが悪化してインダクタンスが増加する場合があります。回路全体のバランスを考慮する必要があります。
■寄生インダクタンスを低減する方法
寄生インダクタンスを低減する基本は、電流経路を短くし、ループ面積を小さくすることです。
・ スイッチング電流経路を短くする
・ 往路と復路を近接させる
・ グランドプレーンを使用する
・ 部品を近接して配置する
・ 複数のビアを並列に使用する
・ 長い部品端子や配線を避ける
・ プローブのグランド接続を短くする
・ 低インダクタンスのPCBアクセサリを使用する
高速パワー回路では、回路設計と測定接続の両方で低インダクタンス化することが重要です。
■まとめ
寄生容量は、高周波成分を減衰させ、立上り時間の増加や信号振幅の低下を引き起こします。寄生インダクタンスは、急激な電流変化によって電圧スパイク、グランドバウンス、オーバーシュートなどを発生させます。
両者が組み合わさると共振回路が形成され、リンギングやEMIノイズの原因になります。
測定時には、入力容量の小さいプローブを選択し、プローブチップとグランド接続をできるだけ短くします。表示された異常波形が回路本来の現象か、測定系によって発生したものかを確認することが重要です。
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T&Mコーポレーション株式会社では、低入力容量アクティブプローブ、差動プローブ、高電圧差動プローブ、光アイソレーションプローブ、パッシブプローブおよび低インダクタンス接続アクセサリを取り扱っています。
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