絶縁・沿面距離・空間距離とは?

絶縁、沿面距離、空間距離は、高電圧プローブ、差動プローブ、電流プローブ、測定器などの安全性を決める重要な要素です。

最大入力電圧が高い製品でも、絶縁構造や端子間距離が使用環境に対応していなければ、感電、アーク放電、絶縁破壊などが発生する可能性があります。

 
 
電気絶縁とは

電気絶縁とは、異なる電位にある導体間や、危険電圧部分と使用者が触れる部分との間で、不要な電流が流れないように分離することです。

プローブでは、次の部分に絶縁が必要です。

・ プローブ入力と筐体の間
・ プラス入力とマイナス入力の間
・ 測定回路とオシロスコープの間
・ 高電圧導体と使用者が触れる部分の間
・ 電流プローブの測定導体と出力回路の間
・ 内部の一次側回路と二次側回路の間

絶縁性能は、絶縁材料だけでなく、製品の形状、端子間距離、使用環境などを含めて評価されます。

 
 
基本絶縁とは

基本絶縁とは、感電に対する基本的な保護を行うため、危険な活電部に設けられる絶縁です。

通常の使用状態では、危険な電圧が使用者の触れる部分へ現れないようにします。ただし、基本絶縁だけでは、絶縁に単一故障が発生した場合の保護まで保証しない場合があります。

製品によっては、基本絶縁に加えて追加の保護が必要です。

 
 
付加絶縁とは

付加絶縁とは、基本絶縁が故障した場合にも感電を防止するため、基本絶縁とは別に設けられる独立した絶縁です。

基本絶縁と付加絶縁を組み合わせることで、二重絶縁を構成します。

測定器やプローブでは、使用者が触れる筐体、ケーブル、グリップ部分などを危険電圧から保護するために使用されます。

 
 
二重絶縁とは

二重絶縁とは、基本絶縁と付加絶縁の両方を備えた絶縁構造です。

一方の絶縁に故障が発生しても、もう一方の絶縁によって感電を防止することを目的とします。

二重絶縁を備えた製品には、二重の正方形で表される記号が表示される場合があります。ただし、記号があることだけで、すべての電圧や測定カテゴリに使用できるわけではありません。

 
 
強化絶縁とは

強化絶縁とは、単一の絶縁システムで、二重絶縁と同等の感電保護を提供する絶縁です。

強化絶縁は、単に絶縁材料を厚くしたものとは限りません。材料、構造、沿面距離、空間距離、耐電圧などを含め、規格で定められた性能を満たす必要があります。

光アイソレーションプローブや絶縁入力測定器では、測定側と出力側の間に強化絶縁が使用される場合があります。

 
 
機能絶縁とは

機能絶縁とは、機器や回路が正常に動作するために必要な絶縁です。

信号の分離、回路動作の安定、ノイズ低減などを目的としますが、感電防止のための安全絶縁として認められるとは限りません。

「絶縁されている」と記載された回路でも、その絶縁が機能絶縁なのか、安全保護を目的とした基本絶縁、二重絶縁または強化絶縁なのかを確認する必要があります。

 
 
ガルバニック絶縁とは

ガルバニック絶縁とは、2つの回路間に直接的な導電経路を設けず、信号やエネルギーを伝達する方式です。

代表的な絶縁方式には、次のようなものがあります。

・ 光結合
・ トランス結合
・ 容量結合
・ 磁気結合
・ 光ファイバー伝送

ガルバニック絶縁があっても、絶縁電圧、動作電圧、過渡電圧、沿面距離などには上限があります。「絶縁型」は、無制限の電圧を安全に測定できるという意味ではありません。

 
 
空間距離とは

空間距離とは、異なる電位にある2つの導電部分間を、空気中で測った最短距離です。英語ではClearanceと呼ばれます。

例えば、基板上の2つの端子間や、高電圧端子と金属筐体との間で、空気中を直線的に結んだ最短距離が空間距離です。

空間距離が不足すると、過渡過電圧が加わったときに空気が絶縁破壊し、アーク放電が発生する可能性があります。

 
 
空間距離に影響する条件

必要な空間距離は、主に次の条件によって決まります。

・ インパルス耐電圧
・ 測定カテゴリ
・ 動作電圧
・ 過渡過電圧
・ 絶縁の種類
・ 使用高度
・ 電界の状態
・ 製品構造

特に高度が高くなると気圧が低下し、空気の絶縁性能が低下します。そのため、高地で使用する場合は、より大きな空間距離や電圧ディレーティングが必要になることがあります。

 
 
沿面距離とは

沿面距離とは、異なる電位にある2つの導電部分間を、絶縁材料の表面に沿って測った最短距離です。英語ではCreepage Distanceと呼ばれます。

例えば、PCB上の2つの端子間で、基板表面に沿って測定した距離が沿面距離です。

絶縁物の表面にほこり、湿気、塩分、油などが付着すると、微小な漏れ電流が流れやすくなります。沿面距離が不足すると、表面放電やトラッキングが発生する可能性があります。

 
 
沿面距離に影響する条件

必要な沿面距離は、主に次の条件によって決まります。

・ 実効動作電圧
・ 絶縁の種類
・ 汚染度
・ 絶縁材料の特性
・ 材料グループ
・ 表面形状
・ 使用環境
・ 電圧の種類と継続時間

空間距離が主に過渡電圧と空気中の絶縁破壊に関係するのに対し、沿面距離は絶縁材料表面の漏れ電流と長期的な劣化に関係します。

 
 
空間距離と沿面距離の違い

空間距離と沿面距離は、測定する経路が異なります。

・ 空間距離:空気中を通る最短距離
・ 沿面距離:絶縁材料の表面に沿った最短距離

同じ2つの端子間でも、表面に溝やバリアを設けることで、沿面距離を長くできる場合があります。一方、空間距離は空気中の最短経路で評価されるため、表面に沿った距離だけを長くしても十分とは限りません。

安全設計では、両方の要求を満たす必要があります。

 
 
トラッキングとは

トラッキングとは、絶縁材料の表面に繰り返し漏れ電流や微小放電が発生し、炭化した導電経路が形成される現象です。

一度導電経路が形成されると、さらに電流が流れやすくなり、絶縁性能が低下します。最終的に絶縁破壊、発煙、発火などにつながる場合があります。

トラッキングを発生させやすい条件には、次のものがあります。

・ 高い湿度
・ 結露
・ 導電性のほこり
・ 塩分や薬品の付着
・ 油や汚れの堆積
・ 沿面距離の不足
・ 絶縁材料の劣化

プローブと測定アクセサリは、清潔で乾燥した状態に保つ必要があります。

 
 
汚染度とは

汚染度は、使用環境に存在する汚染物質が絶縁性能へ与える影響を分類するものです。

一般的には、次のように区分されます。

・ 汚染度1:汚染がない、または乾燥した非導電性の汚染のみ
・ 汚染度2:通常は非導電性だが、結露によって一時的に導電性となる可能性がある
・ 汚染度3:導電性の汚染、または結露によって導電性となる乾燥した汚染がある
・ 汚染度4:雨、雪、導電性粉じんなどによって継続的な導電性汚染がある

一般的な室内用プローブや測定器では、汚染度2を前提とする製品が多くあります。実際の使用環境が製品仕様に適合していることを確認します。

 
 
材料グループとは

絶縁材料は、表面でのトラッキングに対する耐性によって分類されます。

分類には、比較トラッキング指数(CTI)が使用されます。一般にCTIが高い材料ほどトラッキングに強く、同じ条件で必要となる沿面距離を小さくできる場合があります。

ただし、材料グループだけで安全性は決まりません。動作電圧、汚染度、絶縁の種類および製品構造を含めて評価します。

 
 
動作電圧とは

動作電圧とは、通常使用時に絶縁へ継続的に加わる電圧です。

絶縁設計では、表示したい差動電圧だけでなく、絶縁バリアの両端へ実際に加わる電圧を考える必要があります。

例えば、ハイサイド回路の信号が数Vでも、測定ヘッド全体が接地に対して数百Vで動作する場合があります。この場合、絶縁バリアには高いコモンモード動作電圧が加わります。

動作電圧と一時的な耐電圧は、別の仕様として確認します。

 
 
耐電圧と動作電圧の違い

耐電圧は、絶縁が規定された試験電圧に一定時間耐えられることを確認するための値です。

耐電圧が高いことは、その電圧を連続して印加できることを意味しません。連続使用できる動作電圧は、耐電圧より低く設定されることが一般的です。

次の仕様を区別して確認します。

・ 連続動作電圧
・ 最大入力電圧
・ 絶縁耐電圧
・ インパルス耐電圧
・ 最大フローティング電圧
・ 過渡過電圧定格
・ 測定カテゴリと定格電圧

一つの高い電圧値だけで製品を比較しないことが重要です。

 
 
インパルス耐電圧とは

インパルス耐電圧は、落雷、配電設備の開閉などによって発生する短時間の過渡過電圧に対する絶縁性能を示します。

必要なインパルス耐電圧は、測定カテゴリ、動作電圧、配電系統内の位置などによって異なります。

CAT IIIやCAT IV環境では、定常的な動作電圧よりはるかに高い過渡電圧が発生する可能性があります。そのため、動作電圧だけでなくCAT定格も確認する必要があります。

 
 
部分放電とは

部分放電とは、絶縁全体が完全に破壊される前に、絶縁内部や表面の一部で発生する局所的な放電です。

部分放電が繰り返されると、絶縁材料が徐々に劣化し、最終的に絶縁破壊へ至る可能性があります。

高電圧、高周波、高いdv/dtを扱う絶縁測定システムでは、短時間の耐電圧だけでなく、長期的な絶縁劣化も考慮する必要があります。

 
 
高いdv/dtが絶縁へ与える影響

SiCやGaNなどの高速パワー半導体では、コモンモード電圧が非常に速く変化します。

高いdv/dtは、絶縁バリアに存在する寄生容量を通じてコモンモード電流を流します。これにより、測定波形へのノイズ、絶縁部へのストレス、周辺回路の誤動作などが発生する場合があります。

絶縁プローブを選定する際は、次の性能も確認します。

・ コモンモード電圧範囲
・ dv/dt耐性
・ 絶縁バリアの寄生容量
・ 高周波CMRR
・ コモンモード過渡応答
・ 連続動作電圧

絶縁耐電圧が高くても、高速コモンモード過渡の測定に適しているとは限りません。

 
 
差動プローブと絶縁プローブの違い

差動プローブは、2つの入力間の電位差を測定し、共通する電圧成分を除去します。ただし、すべての差動プローブがガルバニック絶縁を備えているわけではありません。

絶縁プローブは、測定側とオシロスコープ側の間に電気的な絶縁バリアを設けています。

・ 差動プローブ:2入力間の差を測定する
・ 絶縁プローブ:測定側と出力側を電気的に分離する
・ 光アイソレーションプローブ:信号を光で伝送して絶縁する

用途に応じて、CMRR、絶縁方式、動作電圧、帯域幅および安全定格を確認します。

 
 
プローブの外観で確認すべき箇所

絶縁性能は、使用や保管によって低下する場合があります。測定前には、次の部分を確認します。

・ プローブ本体のひび割れ
・ ケーブル被覆の傷や摩耗
・ 内部絶縁層の露出
・ 入力リードの変色や硬化
・ 端子周辺の汚れ
・ クリップの変形
・ 絶縁バリアの欠損
・ 水分や結露の付着
・ 焼損やアークの痕跡

損傷や異常があるプローブは使用しないでください。絶縁テープなどによる自己修理では、元の安全性能を保証できません。

 
 
アクセサリが絶縁距離へ与える影響

プローブへクリップ、フック、変換アダプタなどを取り付けると、導電部の露出長、沿面距離、空間距離が変化します。

指定されていないアクセサリを使用すると、プローブ本体の安全定格を維持できない場合があります。

次の項目を確認してください。

・ アクセサリの最大電圧
・ 測定カテゴリ
・ 露出金属部の長さ
・ 端子間距離
・ 保護バリアの有無
・ プローブとの組み合わせ条件
・ 使用可能な汚染度と高度

測定システム全体の定格は、最も低い定格を持つ構成品によって制限されます。

 
 
安全な使用のための注意点

絶縁性能を維持するためには、メーカーが指定する条件でプローブを使用します。

・ 定格電圧を超えない
・ 測定カテゴリを守る
・ 規定された高度と汚染度で使用する
・ プローブ表面を清潔で乾燥した状態に保つ
・ 指定されたアクセサリを使用する
・ 保護バリアより先へ指を出さない
・ 結露した状態で使用しない
・ 損傷したプローブを使用しない
・ メーカー指定外の分解や修理を行わない

高電圧回路への接続と取り外しは、可能な限り回路を無電圧にし、残留電荷がないことを確認してから行います。

 
 
プローブ選定時の確認項目

絶縁プローブや高電圧プローブを選定する際は、次の項目を確認します。

・ 最大差動入力電圧
・ 各入力から接地までの最大電圧
・ 連続動作電圧
・ 絶縁耐電圧
・ インパルス耐電圧
・ 測定カテゴリ
・ 基本絶縁、二重絶縁または強化絶縁の区分
・ 沿面距離と空間距離に関係する使用条件
・ 汚染度
・ 最大使用高度
・ 温度と湿度
・ 適用される安全規格

用途に必要な絶縁方式と、製品が保証する安全定格を一致させることが重要です。

 
 
まとめ

絶縁は、異なる電位にある回路間や、危険電圧部分と使用者が触れる部分との間で、不要な電流が流れないように分離するものです。

空間距離は導体間を空気中で測った最短距離で、主に過渡電圧やアーク放電への耐性に関係します。沿面距離は絶縁材料の表面に沿った最短距離で、汚染、湿気、材料特性などの影響を受けます。

最大入力電圧だけで安全性を判断せず、絶縁方式、動作電圧、CAT定格、汚染度、高度、アクセサリおよび使用環境を総合的に確認することが重要です。

 
 
T&Mコーポレーション株式会社の取り扱いプローブ

T&Mコーポレーション株式会社では、高い絶縁性能を備えた高電圧差動プローブ、光アイソレーションプローブ、高電圧パッシブプローブ、電流プローブ、絶縁入力測定システムおよび各種安全アクセサリを取り扱っています。

インバータ、スイッチング電源、SiC・GaNパワー半導体、モータードライブなど、動作電圧、絶縁方式、CAT定格、dv/dtおよび使用環境に応じた製品をご提案します。プローブの絶縁仕様や安全な測定構成についても、お気軽にお問い合わせください。

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