近磁界・近電界プローブとは?ノイズ発生源の探し方
近磁界・近電界プローブは、電子回路やプリント基板の近くに発生する高周波電磁界を検出し、EMIノイズの発生源や結合経路を調査するためのプローブです。
スペクトラムアナライザやFFT機能を備えたオシロスコープへ接続し、プリント基板上を走査することで、クロック回路、スイッチング電源、ケーブル、コネクタなどから発生するノイズの周波数と位置を特定できます。
ここでは、近磁界プローブと近電界プローブの違い、基本的な使い方、ノイズ発生源の探し方、測定結果を見る際の注意点について解説します。
■近傍界プローブとは
近傍界プローブは、電子回路のごく近くに存在する電界または磁界を検出するプローブです。
アンテナを使用した遠方界測定とは異なり、測定対象へ数mmから数cm程度まで近づけて使用します。
主な用途は以下の通りです。
・ プリント基板上のEMIノイズ源の特定
・ 高周波電流が流れる配線の探索
・ クロック信号や高調波の検出
・ スイッチング電源のノイズ調査
・ ケーブルやコネクタからの放射確認
・ シールドから漏れる電磁界の確認
・ EMC対策前後の比較
・ EMIプリコンプライアンス試験のトラブル解析
一般的に、「近傍界プローブ」または「近接界プローブ」と呼ばれます。検出する電磁界の種類によって、近磁界プローブと近電界プローブに分けられます。
■近磁界プローブとは
近磁界プローブは、磁界成分を検出するためのプローブです。Hフィールドプローブ、磁界プローブ、磁界ループプローブとも呼ばれます。
先端に小さなループ状の導体が設けられており、そのループを通過する磁束の変化によって電圧が発生します。
高周波電流が流れる配線、スイッチング素子、インダクタ、トランスなどの周囲には磁界が発生します。近磁界プローブを近づけることで、その磁界を検出できます。
主な測定対象は以下の通りです。
・ クロック配線
・ 高速デジタル信号配線
・ DC/DCコンバータ
・ スイッチングMOSFET
・ インダクタやトランス
・ 電源ループ
・ バスバー
・ コネクタやケーブル
近磁界プローブは、プリント基板上のノイズ源を探索する際に最初に使用されることが多いプローブです。
■近電界プローブとは
近電界プローブは、電界成分を検出するためのプローブです。Eフィールドプローブ、電界プローブとも呼ばれます。
先端に小さな電極またはモノポール構造が設けられており、測定対象との容量結合によって高周波電圧を検出します。
電圧が高速で変化する場所では強い電界が発生します。近電界プローブは、以下のような測定対象の調査に適しています。
・ 高速クロック信号
・ 高インピーダンス配線
・ スイッチングノード
・ ICの端子
・ コネクタ
・ ケーブル
・ 基板上の広い導体パターン
・ シールドケースの隙間
近磁界プローブでノイズの存在を確認した後、近電界プローブを使用して、特定の部品や配線へさらに絞り込む方法もあります。
■近磁界プローブと近電界プローブの違い
近磁界プローブは主に電流によって発生する磁界を検出し、近電界プローブは主に電圧によって発生する電界を検出します。
主な違いは以下の通りです。
・ 近磁界プローブ:高周波電流が流れる場所の探索に適する
・ 近電界プローブ:高周波電圧が存在する場所の探索に適する
・ 近磁界プローブ:ループ形状のセンサを使用
・ 近電界プローブ:電極またはモノポール形状のセンサを使用
・ 近磁界プローブ:向きによって感度が大きく変化
・ 近電界プローブ:周囲の電界や作業者の影響を受けやすい場合がある
実際の電子回路では、電界と磁界が同時に存在します。ノイズの発生原因や結合経路を調べるには、両方のプローブを使い分けることが有効です。
■プローブサイズと空間分解能
近磁界プローブには、異なる大きさのループを持つ製品があります。
大きなループは感度が高く、広い範囲のノイズを見つけやすい一方で、ノイズ源の位置を細かく特定する能力は低くなります。
小さなループは感度が低くなる場合がありますが、空間分解能が高く、特定の部品、配線、ICピン付近までノイズ源を絞り込めます。
一般的には、以下の順序で使用します。
・ 大きなプローブで基板全体を走査
・ ノイズの強い領域を特定
・ 中型のプローブで範囲を絞り込む
・ 小型のプローブで部品や配線を特定
広い範囲から細かい範囲へ段階的に走査することで、効率よくノイズ源を探せます。
■近磁界プローブの向き
近磁界プローブの出力は、プローブのループを通過する磁束によって変化します。そのため、プローブの向きが測定感度に大きく影響します。
磁界がループ面を垂直に通過するとき、プローブの出力は大きくなります。ループ面と磁界の方向が平行に近い場合、出力は小さくなります。
測定時には、同じ場所でプローブを回転させ、最も大きな信号が得られる向きを確認します。
プローブの向きを変えることで、ノイズ電流が流れている方向や配線を推定できる場合もあります。
■測定距離の影響
近傍界の強度は、ノイズ源からの距離によって大きく変化します。
プローブを測定対象へ近づけるほど信号は強くなり、離すほど弱くなります。そのため、測定距離が異なると、同じ場所を測定しても表示レベルが変化します。
対策前後の測定結果を比較する場合は、以下の条件を揃える必要があります。
・ プローブと基板の距離
・ プローブの向き
・ プローブの位置
・ 測定周波数範囲
・ 分解能帯域幅
・ 入力アッテネータ
・ プリアンプの設定
・ 測定器の検波方式
再現性を高めるには、プローブホルダー、位置決め治具、目盛付きステージなどを使用する方法もあります。
■スペクトラムアナライザへの接続
近傍界プローブは、一般的にスペクトラムアナライザの50Ω入力へ接続して使用します。
スペクトラムアナライザを使用すると、検出したノイズを周波数ごとのレベルとして表示できます。
主に以下の項目を確認します。
・ ノイズの中心周波数
・ クロック周波数と高調波
・ スイッチング周波数と高調波
・ 広帯域ノイズ
・ 間欠的に発生するノイズ
・ 対策前後のレベル差
プローブのコネクタがSMBやSMAで、測定器側がN型やBNCの場合は、適切な変換アダプタと50Ω同軸ケーブルを使用します。
■オシロスコープへの接続
近傍界プローブは、50Ω入力やFFT機能を備えたオシロスコープへ接続して使用することもできます。
オシロスコープを使用すると、ノイズの周波数成分だけでなく、時間的な発生タイミングも確認できます。
例えば、以下のような解析が可能です。
・ スイッチング動作とノイズ発生の時間関係
・ クロック信号と放射ノイズの相関
・ モータ制御信号とノイズの相関
・ 電源起動時に発生するノイズ
・ 間欠的なバーストノイズ
・ 特定イベントに同期したノイズ
近傍界プローブで検出した信号と、回路上の電圧・電流波形を同時に観測することで、ノイズの発生原因を特定しやすくなります。
■プリアンプの使用
近傍界プローブで検出される信号が小さい場合は、プローブと測定器の間に低雑音プリアンプを接続します。
プリアンプを使用すると、微弱なノイズを測定器のノイズフロアより大きくして観測できます。
ただし、強い信号が入力されると、プリアンプや測定器が飽和する可能性があります。飽和すると、本来存在しない高調波や相互変調成分が表示される場合があります。
プリアンプを使用する際は、以下の項目を確認します。
・ 周波数帯域
・ 利得
・ 雑音指数
・ 最大入力レベル
・ 最大出力レベル
・ 測定器の入力レベル
・ 電源供給方式
最初はプリアンプを使用せずに測定し、感度が不足する場合に追加する方法が安全です。
■ノイズ発生源を探す手順
近傍界プローブを使用した基本的なノイズ探索手順は以下の通りです。
・ 測定対象を通常の動作状態にする
・ 対象となる周波数範囲を設定する
・ 大きな近磁界プローブで基板全体を走査する
・ 信号が強い領域を特定する
・ 小さなプローブへ交換して範囲を絞り込む
・ プローブの向きを変えて最大レベルを確認する
・ 近電界プローブで高電圧ノードや配線を確認する
・ 回路図や基板パターンと測定位置を照合する
・ 対策を実施して同じ条件で再測定する
最初から小型プローブだけを使用すると、走査に時間がかかり、広い範囲のノイズ源を見落とす可能性があります。
■代表的なノイズ発生源
電子回路では、以下のような場所がEMIノイズの発生源になる場合があります。
・ 水晶発振器
・ クロックジェネレータ
・ マイコンやFPGA
・ DDRメモリと高速データバス
・ DC/DCコンバータ
・ スイッチングMOSFET
・ インダクタやトランス
・ 整流ダイオード
・ ゲートドライバ
・ コネクタ
・ ケーブル
・ シールドケースの開口部
・ 不連続なグランドパターン
近傍界プローブで信号が強く検出された場所が、必ずしも最初のノイズ発生源とは限りません。他の場所で発生したノイズが配線やケーブルを通って伝わり、その場所から放射されている場合もあります。
■結合経路の確認
EMI問題を解決するには、ノイズの発生源だけでなく、ノイズがどの経路を通って伝わっているかを確認する必要があります。
代表的な結合経路には以下があります。
・ 電源配線
・ グランド配線
・ 信号配線
・ ケーブル
・ コネクタ
・ 寄生容量による結合
・ 相互インダクタンスによる結合
・ 筐体やシールドの隙間
基板上で強いノイズが検出された場所から、配線やケーブルに沿ってプローブを移動することで、ノイズの伝搬経路を推定できます。
■EMI対策前後の比較
近傍界プローブは、EMI対策の効果を相対的に比較する用途に適しています。
代表的な対策には以下があります。
・ デカップリングコンデンサの追加
・ フィルタの追加
・ スナバ回路の追加
・ ゲート抵抗の変更
・ 配線ループの縮小
・ グランドパターンの改善
・ シールドの追加
・ ケーブルへのフェライトコア追加
・ クロック周波数やスルーレートの変更
対策前後でプローブの位置、向き、距離、測定器設定を同じにすることで、ノイズレベルの変化を比較できます。
■近傍界測定とEMC規格試験の違い
近傍界プローブによる測定は、ノイズ源の探索や対策効果の比較を目的とした診断測定です。
近傍界で検出された信号レベルから、EMC規格試験における遠方界の放射レベルを直接判断することは一般にできません。
遠方界の放射レベルは、以下の要素によって変化します。
・ 基板やケーブルのアンテナ特性
・ 筐体とシールド構造
・ 測定距離
・ 測定アンテナ
・ 試験サイト
・ 機器の設置条件
・ 適用されるEMC規格
近傍界測定でノイズが小さくなっても、正式なEMC規格への適合を保証するものではありません。最終的な適合判定には、規格で指定された設備と測定方法による試験が必要です。
■近傍界プローブの選定ポイント
近傍界プローブを選定する際は、以下の項目を確認します。
・ 近磁界プローブまたは近電界プローブ
・ 対応周波数範囲
・ プローブの感度
・ ループまたは電極の大きさ
・ 空間分解能
・ シールド構造
・ 最大入力レベル
・ コネクタの種類
・ 付属ケーブルの周波数特性
・ 測定器の入力インピーダンス
・ プリアンプの必要性
ノイズ源の位置を細かく特定する場合は小型プローブ、基板全体を効率よく走査する場合は大型プローブが適しています。複数サイズのプローブがセットになった製品を使用すると、段階的な調査が行いやすくなります。
■使用上の注意点
近傍界プローブは、一般的に回路へ接触させず、一定の距離を保って走査します。
プローブ先端を通電中の導体へ接触させると、短絡、感電、測定対象や測定器の損傷につながる可能性があります。
高電圧回路を測定する場合は、プローブの絶縁性能と安全距離を確認し、必要に応じて電源を切った状態で位置決めを行います。
また、プローブケーブルの位置や作業者の手によって測定結果が変化する場合があります。ケーブルを測定対象から離し、同じ持ち方、位置、向きで測定します。
測定器の最大入力レベルを超えないようにし、強い信号が予想される場合は入力アッテネータを使用します。
■まとめ
近傍界プローブは、電子回路やプリント基板の近くに発生する高周波電磁界を検出し、EMIノイズの発生源と結合経路を調査するためのプローブです。
近磁界プローブは主に高周波電流による磁界を検出し、近電界プローブは主に高周波電圧による電界を検出します。
大きなプローブで広い範囲を走査し、小さなプローブで部品や配線まで絞り込むことで、効率よくノイズ源を特定できます。
正確な比較を行うには、プローブの位置、向き、距離、測定器設定を揃えることが重要です。また、近傍界測定はEMIデバッグのための診断測定であり、正式なEMC規格試験の代わりにはならない点に注意が必要です。
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T&Mコーポレーション株式会社では、スペクトラムアナライザ、リアルタイム・スペクトラムアナライザ、オシロスコープ、近傍界測定に使用する各種アクセサリなど、EMIノイズの調査とプリコンプライアンス測定に対応した製品を取り扱っております。
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