PCBはんだ付け式プローブアクセサリの種類と選び方
PCBはんだ付け式プローブアクセサリは、プローブの入力部を基板上の測定点へ直接接続するためのアクセサリです。
長い入力リードや大型クリップを使用する方法と比べて、寄生インダクタンス、寄生容量、測定ループを小さくできるため、高速デジタル信号やパワー半導体のスイッチング波形測定に適しています。
■PCBはんだ付け式アクセサリとは
PCBはんだ付け式アクセサリは、信号線とグランド、または差動信号のプラス側とマイナス側を、基板上の測定点へはんだ付けして使用します。
代表的な構造には、次のものがあります。
・ はんだ付け式リード
・ ワイヤ接続型チップ
・ ピン接続型アダプタ
・ 差動はんだ付けチップ
・ 同軸型PCBアダプタ
・ SMA変換基板
・ 交換式チップヘッド
・ 小型ソケット式アダプタ
製品によって、対応するプローブ、帯域幅、入力容量、最大電圧などが異なります。
■はんだ付け接続の利点
プローブをPCBへ直接接続すると、入力経路を短くできるため、高速信号を安定して測定しやすくなります。
主な利点は、次のとおりです。
・ 入力リードを短くできる
・ 測定ループを小さくできる
・ 寄生インダクタンスを低減できる
・ 外部ノイズの拾取を抑えられる
・ 高周波CMRRを維持しやすい
・ 接触状態を安定させられる
・ 測定の再現性を高められる
・ 長時間測定中の接触外れを防げる
高速信号では、プローブ本体の帯域幅だけでなく、測定点への接続方法が測定結果を大きく左右します。
■長いリードによる測定誤差
長い入力リードやグランドリードには、寄生インダクタンスと寄生容量があります。
これらがプローブ入力や測定対象の容量と組み合わさると、意図しない共振が発生します。その結果、次のような波形誤差が現れる場合があります。
・ リンギング
・ オーバーシュート
・ アンダーシュート
・ 立上り時間の変化
・ 高周波ノイズの拾取
・ コモンモード除去性能の低下
・ 振幅誤差
・ 位相誤差
PCB直結アクセサリを使用することで、これらの影響を低減できます。
■シングルエンド用はんだ付けアクセサリ
シングルエンドプローブ用アクセサリは、信号入力とグランドをPCBへ接続します。
一般的な構成は、次のとおりです。
・ 信号用はんだ付けリード
・ 短いグランドリード
・ 同軸構造のチップ
・ 信号・グランド一体型アダプタ
・ 小型PCBソケット
高速信号では、信号点の近くへグランド接続点を設け、信号とリターンの間隔を小さくします。
接地型オシロスコープでは、プローブのグランドが保護接地へ接続されているため、グランド接続先が安全な接地基準であることを確認してください。
■差動プローブ用はんだ付けアクセサリ
差動プローブ用アクセサリは、プラス入力とマイナス入力を測定対象へ直接接続します。
2つの入力経路を短く対称にできるため、高速な差動信号や高いコモンモード電圧下の信号測定に適しています。
主な用途には、次のものがあります。
・ 高速シリアル信号
・ クロック信号
・ 差動バス
・ ハイサイドゲート電圧
・ シャント抵抗の両端電圧
・ SiC・GaNデバイスのスイッチング波形
・ 高電圧バス上の微小信号
プラス側とマイナス側の配線長や構造が異なると、高周波CMRRが低下します。
■同軸型PCBアクセサリ
同軸型PCBアクセサリは、信号導体をグランド導体で囲む構造を持ちます。
信号のリターンパスが明確になり、外部ノイズの拾取と放射を抑えやすいことが特長です。50Ω測定系では、基板上の伝送線路から同軸ケーブルまでのインピーダンス連続性も確保しやすくなります。
主な種類には、次のものがあります。
・ PCB実装SMAコネクタ
・ 小型同軸ソケット
・ はんだ付け式同軸ピグテール
・ 同軸プローブチップ
・ エッジマウント型コネクタ
高速信号では、コネクタ周辺のランドパターン、グランドビア、配線幅なども測定性能へ影響します。
■ワイヤ式アクセサリ
ワイヤ式アクセサリは、細いリード線を測定点へはんだ付けして使用します。
狭い場所へ接続しやすく、部品端子や小型パッドの測定に便利です。一方、ワイヤが長くなるほど寄生インダクタンスが増加します。
使用時には、次の点に注意します。
・ ワイヤをできるだけ短くする
・ プラス側とマイナス側の長さをそろえる
・ 差動ワイヤを近接させる
・ 測定ループを小さくする
・ ワイヤをスイッチングノードから離す
・ プローブの重量がはんだ部へ加わらないようにする
メーカーが長さを指定している場合は、その範囲内で使用します。
■ソケット式アクセサリ
ソケット式アクセサリは、あらかじめ小型ソケットやピンをPCBへ実装し、必要なときにプローブを接続する方式です。
繰り返し測定する製品や、複数の試作基板を比較する場合に適しています。
主な利点は、次のとおりです。
・ 着脱が容易
・ 測定位置を一定にできる
・ はんだ付け作業を繰り返す必要がない
・ 測定の再現性を高められる
・ プローブチップの摩耗を抑えられる
一方、ソケット自体の寄生容量、寄生インダクタンス、スタブなどが波形へ影響する場合があります。
■測定パッドの設計
PCBはんだ付け式アクセサリを使用する場合は、設計段階から専用の測定パッドを用意すると便利です。
測定パッドでは、次の項目を考慮します。
・ プローブアクセサリに対応するパッド間隔
・ 信号点と基準点の距離
・ 差動入力の対称性
・ 高電圧部の沿面距離と空間距離
・ はんだ付け作業に必要なスペース
・ プローブ本体の設置方向
・ 周辺部品との干渉
・ 接続部の機械的強度
パッドを必要以上に大きくすると、寄生容量や伝送線路の不連続が増える場合があります。
■高速信号用パッドの注意点
高速デジタル信号や高周波信号では、大きなテストパッドや長い引き出し配線がスタブとして動作する場合があります。
スタブ端で信号が反射すると、リンギング、オーバーシュート、タイミング誤差などが発生します。
高速信号用の測定点では、次の方法が有効です。
・ 測定点を主信号線上に配置する
・ 引き出し配線を短くする
・ パッド面積を最小限にする
・ 信号のリターンパスを連続させる
・ グランドビアを測定点の近くへ配置する
・ インピーダンスの不連続を小さくする
必要に応じて、測定パッドを含む伝送線路モデルをシミュレーションします。
■ハイサイドゲート測定への使用
ハイサイドMOSFETやIGBTのゲート電圧を測定する場合は、ゲートとソースの直近へ差動入力を接続します。
ゲート側だけでなく、基準となるソース側の測定点も重要です。パワーソース配線には大電流による電圧が発生するため、ゲートドライバが基準としているケルビンソースへ接続することが望ましい場合があります。
接続時には、次の点を確認します。
・ ゲートとソースの端子直近へ接続する
・ プラス側とマイナス側を短くする
・ パワーループから距離を取る
・ スイッチングノードとの寄生容量を抑える
・ 入力リードを対称にする
・ プローブのコモンモード定格を確認する
・ 高周波CMRRを確認する
プローブ接続によってゲート回路の動作が変化しないことも確認します。
■シャント抵抗測定への使用
シャント抵抗の両端に発生する微小電圧を測定する場合は、ケルビン接続された検出端子へ差動アクセサリを接続します。
大電流が流れるパワー配線へ直接接続すると、配線抵抗や寄生インダクタンスによる電圧も測定されます。
正確な測定には、次の点が重要です。
・ 抵抗体の直近から検出信号を取り出す
・ パワー端子と検出端子を分離する
・ 2本の検出配線を近接させる
・ 測定ループを小さくする
・ 高dv/dtノードから距離を取る
・ 低ノイズ差動プローブを使用する
ハイサイドシャントでは、コモンモード電圧とCMRRも確認します。
■入力容量の影響
PCBへ直接接続しても、プローブとアクセサリの入力容量は測定対象へ負荷を与えます。
特に高インピーダンスノードでは、数pF以下の容量でも、立上り時間、発振周波数、ゲート駆動波形などへ影響する場合があります。
確認すべき項目は、次のとおりです。
・ プローブ本体の入力容量
・ アクセサリを含む入力容量
・ 差動入力間の容量
・ 各入力から接地までの容量
・ 測定対象の出力インピーダンス
・ 測定信号の立上り時間
アクセサリ装着時の仕様が個別に記載されている場合は、その値を使用します。
■アクセサリによる帯域幅の変化
プローブ本体が高帯域であっても、接続するアクセサリによって使用可能な帯域幅が低下する場合があります。
長いワイヤ、クリップ、変換ソケットなどは、高周波応答へ影響します。
プローブを選定するときは、次の帯域幅を区別します。
・ プローブ本体の帯域幅
・ 標準チップ使用時の帯域幅
・ はんだ付けリード使用時の帯域幅
・ クリップ使用時の帯域幅
・ 延長リード使用時の帯域幅
・ プローブとオシロスコープを組み合わせた帯域幅
実際に使用する構成で性能を確認することが重要です。
■はんだ付け作業の注意点
はんだ付け時に過度な温度や力を加えると、PCB、部品、プローブアクセサリなどを損傷する可能性があります。
作業時には、次の点に注意します。
・ 回路を無電圧にする
・ コンデンサなどの残留電荷を放電する
・ 適切な温度のはんだごてを使用する
・ 加熱時間を必要最小限にする
・ 隣接端子をはんだで短絡させない
・ フラックス残留物を適切に除去する
・ アクセサリへ過度な引張力を加えない
・ 静電気に弱い部品へESD対策を行う
高電圧基板では、フラックス残留物やはんだくずが沿面距離と絶縁性能へ影響する場合があります。
■接続部の機械的固定
細いワイヤや小型パッドだけでプローブ本体の重量を支えると、はんだ接続部やPCBパターンが剥離する可能性があります。
接続部へ力を加えないためには、次の方法が有効です。
・ プローブ本体を専用ホルダーで固定する
・ ケーブルをクランプで保持する
・ ワイヤに適度なたるみを持たせる
・ 引張力がパッドへ直接加わらないようにする
・ 測定中に基板やプローブを動かさない
・ 振動する装置では固定治具を使用する
長時間測定では、温度変化や振動による接続状態の変化も確認します。
■複数チャンネル使用時の注意点
一般的な接地型オシロスコープでは、各チャンネルのBNCグランドが内部で共通接続されています。
複数のシングルエンドプローブを異なる基準電位へはんだ付けすると、オシロスコープ内部を経由して短絡する可能性があります。
複数チャンネル測定では、次の点を確認します。
・ すべてのグランド接続点が同電位である
・ チャンネル間の共通接続を理解している
・ 異なる基準電位には差動プローブを使用する
・ 絶縁入力測定器の定格を確認する
・ プローブ接続前に回路図を確認する
・ 保護接地を外さない
はんだ付け後に回路へ通電する前に、接続間の短絡がないことを確認します。
■高電圧測定への使用
PCBはんだ付け式アクセサリは、すべてが高電圧測定に対応しているわけではありません。
アクセサリを取り付けると、プローブ本体より最大入力電圧や安全定格が低下する場合があります。
高電圧測定では、次の項目を確認します。
・ アクセサリの最大入力電圧
・ 差動入力間の最大電圧
・ 各入力から接地までの最大電圧
・ 沿面距離と空間距離
・ 周波数ディレーティング
・ 絶縁材料
・ 測定カテゴリ
・ 隣接する導電部との距離
CAT定格のないPCBアクセサリを、配電設備のカテゴリ測定へ使用してはいけません。
■接続状態の確認方法
PCBへはんだ付けした後は、回路へ通電する前に接続状態を確認します。
・ はんだブリッジがない
・ 測定パッドが剥離していない
・ プラス側とマイナス側が正しい
・ 信号側とグランド側が正しい
・ アクセサリの導体が周辺部品へ接触していない
・ 指定された端子間距離が保たれている
・ プローブ本体が確実に固定されている
・ 導通と絶縁状態が想定どおりである
最初は低い電圧や電流条件で波形を確認し、その後に通常動作条件へ移行します。
■波形に異常がある場合
はんだ付け式アクセサリを使用しても波形にノイズやリンギングがある場合は、次の項目を確認します。
・ 入力ワイヤが長すぎないか
・ プラス側とマイナス側が非対称でないか
・ 測定ループが大きくないか
・ はんだ接続に接触不良がないか
・ プローブの入力容量が大きすぎないか
・ 測定点が部品端子から離れていないか
・ スイッチングノードへ近すぎないか
・ プローブの帯域幅とCMRRが十分か
・ アクセサリが対応型名か
接続位置やワイヤ長を変更して波形を比較すると、測定系の影響を切り分けやすくなります。
■取り外し時の注意点
測定終了後は、回路を無電圧にし、残留電荷がないことを確認してからアクセサリを取り外します。
取り外す際は、PCBパッドや周辺部品を損傷しないように注意します。
・ はんだを十分に溶かしてからワイヤを外す
・ ワイヤを無理に引っ張らない
・ ランドへ過度な熱を加えない
・ はんだやフラックス残留物を除去する
・ 取り外し後のパッド状態を確認する
・ 高電圧部の絶縁状態を復元する
取り外したアクセサリを再使用できるかは、メーカーの指示に従って判断します。
■アクセサリ選定時の確認項目
PCBはんだ付け式アクセサリを選定するときは、次の項目を確認します。
・ 対応するプローブ型名
・ シングルエンド用または差動用
・ アクセサリ装着時の帯域幅
・ 入力抵抗と入力容量
・ 最大差動入力電圧
・ 各入力から接地までの最大電圧
・ ワイヤ長とパッド間隔
・ 使用可能な温度範囲
・ 再使用の可否
・ 交換部品の入手性
・ 安全定格と使用制限
プローブ本体の仕様ではなく、実際に使用するアクセサリを含めた仕様で比較します。
■まとめ
PCBはんだ付け式プローブアクセサリは、入力経路と測定ループを短くし、寄生インダクタンスやノイズ拾取を低減するために使用します。
高速デジタル信号、ハイサイドゲート電圧、シャント抵抗の微小電圧などの測定では、プラス側とマイナス側を短く対称に接続し、プローブ本体を機械的に固定することが重要です。
アクセサリを追加すると、帯域幅、入力容量、最大電圧、安全定格などが変化する場合があります。必ず実際の接続構成における仕様を確認してください。
■T&Mコーポレーション株式会社の取り扱いアクセサリ
T&Mコーポレーション株式会社では、パッシブプローブ、アクティブプローブ、差動プローブ、光アイソレーションプローブに対応するPCBはんだ付け式チップ、ワイヤ式リード、同軸アダプタ、SMA変換アクセサリ、プローブホルダーおよび各種交換部品を取り扱っています。
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