SIGLENT製スペアナのEMIオプションとは
SIGLENT社のスペクトラムアナライザ(SSA3000X PLUSシリーズ、SVA1000Xシリーズなど)に用意されている「EMIオプション」とは、EMI(電磁妨害)プリコンプライアンス試験に対応するためのファームウェアライセンスオプションです。CISPR 16に準拠したEMIフィルタと準尖頭値(Quasi-Peak)検波器を追加し、対応する周辺機器・PCソフトウェアと組み合わせることで、量産前の自主的なEMC事前評価(プリコンプライアンステスト)を行えるようになります。
なぜEMIオプションが必要なのか
通常のスペクトラムアナライザは、一般的な信号解析を目的とした分解能帯域幅(RBW)刻み(1-3-10系列など)を持っていますが、CISPR規格に準拠したEMI測定では、規格で定められた特定の測定帯域幅(バンドA/B/C/D)と、ピーク値ではなく準尖頭値(QP)検波器による測定が必要になります。標準仕様のスペアナにはこれらが搭載されていないため、量産前に自社でCISPR相当の測定を行いたい場合、EMIオプションの追加が必要になります。
EMIオプションの主な追加機能
・6dB EMIフィルタの追加
CISPR 16-1-1に準拠した測定帯域幅(200Hz[バンドA]、9kHz[バンドB]、120kHz[バンドC/D])を追加。
・準尖頭値(QP)検波器
規格で定められた測定時間(滞留時間)を設定可能な準尖頭値検波器を搭載。
・リミットライン機能
各国のEMI規格に対応したリミットテンプレートの読み込み、またはユーザー定義のリミットライン設定に対応。
・テスト補正(Correction)機能
プローブ、アンテナ、LISN、ケーブルの周波数特性補正に対応し、実測値を絶対的な妨害レベルとして算出可能。
・対数周波数軸表示
リミットラインと合わせて周波数を対数表示できるため、規格書のグラフと同じ見た目で結果を確認できる。
組み合わせて使う周辺機器・ソフトウェア
・SRF5030T 近接界プローブセット
ケーブルやPCB基板上の電磁波発生源(ノイズ源)を特定するのに有効
・SEM5040A(LISN/擬似電源回路網)
単相デバイスの伝導妨害電圧測定用
・PCソフトウェア「EasySpectrum」
EMIプリコンプライアンステストの自動化プロセスをフルサポートし、プロジェクト単位でのファイル管理も可能
一般的な測定の流れ(プリコンプライアンス評価)
- DUTを測定環境に設置し、伝導妨害評価であればLISN、放射妨害評価であればアンテナ(または近接界プローブ)を接続する。
- EMIオプションを有効にし、評価したい規格(FCC/CISPR等)に対応するリミットラインをロードする。
- まずPeak検波器で全体をプリスキャンし、リミットラインに近い、または超えている周波数ポイントを洗い出す。
- 該当ポイントについて、規格が定める測定帯域幅・滞留時間でQuasi-Peak(必要に応じてAverage)検波による本測定を実施する。
- プローブ・アンテナ・ケーブルの周波数特性補正を適用し、絶対的な妨害レベルとして結果を算出する。
- EasySpectrumでレポートを生成し、プロジェクトとして保存する。
注意点
* あくまでプリコンプライアンス(自主評価)用途であり、認証取得のための公式試験(認定試験所でのフルコンプライアンス測定)を代替するものではない。
* 測定環境(電波暗室、GTEMセルなど)やLISN等の周辺機器自体の校正状態によって、結果の再現性・信頼性が変わる。
まとめ
|
項目 |
標準スペアナ |
EMIオプション搭載時 |
|
検波器 |
Peak /Average / RMS等 |
上記に加え準尖頭値(QP)検波器 |
|
測定帯域幅 |
汎用RBW(1-3-10系列等) |
CISPR規定のバンドA/B/C/D帯域幅 |
|
リミット判定 |
基本的になし |
規格リミットライン読込み・自動判定 |
|
周辺機器補正 |
限定的 |
プローブ/アンテナ/LISN/ケーブル補正対応 |
|
用途 |
一般的な信号解析 |
EMIプリコンプライアンス評価 |
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