この記事ではエンジャーさんよりMICSIGのMHO1シリーズを実際に使ってみた際の操作感についてレビューしています。
MHO1シリーズの概要
MICSIG の MHO1 シリーズは、オシロスコープとマルチメータの機能を1台にまとめた、タブレット型のポータブル・デジタルオシロスコープです。
図 MHO14-200の外観
一般的なオシロスコープは波形観測専用の機器ですが、MHO1 シリーズは電圧・電流・抵抗・容量などを測定できるマルチメータ機能を内蔵しており、テスターとオシロスコープを持ち替えることなく作業できる点が、他のオシロスコープと大きく異なる特徴です。
また12 ビットの高分解能ADCを搭載しており、一般的な8ビットオシロスコープよりも微小な信号を高い精度で測定することができます。
ラインナップ
MHO1シリーズにはには 100 MHz モデルと 200 MHz モデルが用意されており、用途に応じて選ぶことができます。
図 MHO1シリーズのラインナップ
どちらのモデルもサンプリング性能が高く、大容量のメモリを搭載しているため、細かな波形の変化までしっかり記録できます。特にメモリ長110Mptsはエントリークラスのオシロスコープとしては突出しており、長時間の波形観測やデバッグにも最適です。
またマルチメータの41/2桁も通常の測定においては必要十分であり、実務で必要となる性能が1台の中にコンパクトにまとめられています。
特徴
MHO1シリーズはタッチパネルによる操作が中心です。操作感は一般的な計測器というよりも、スマートフォンやタブレットに近い感覚で、波形の拡大・縮小、メニューの切り替え、各種設定変更などを直感的に行うことができます。
OS
Android OS を採用していることで、保存した波形データの確認、 USB メモリへのコピー、ネットワーク経由でのデータ転送なども分かりやすく操作できます。従来の物理ボタンやダイヤル中心のオシロスコープに比べ、学習コストが低く、初めてオシロスコープを触る方でもスムーズに使い始められる点は大きな魅力です。
一方で従来型オシロスコープに慣れている方には、最初は操作感に違和感を覚える場合もあります。しかし、慣れてくると画面操作の自由度や視認性の高さが作業効率の向上につながり快適に使用できるはずです。
利用シーン
バッテリーを内蔵しているため電源のない場所でも使用でき、現場での測定や持ち運びにも非常に便利です。一方で長時間机に据え置いて使用する場合は、一般的なベンチトップタイプのオシロスコープのほうが操作しやすいと感じるかもしれません。このことからMHO1シリーズは現場作業の多いエンジニアに向いており、特に工業装置の動作チェックや不具合観測に適した計測器と言えます。
MHO1シリーズの操作感
ここからは実際にMHO14-200を使用したときの実際の操作感について紹介します。
起動時間
電源を投入すると、デフォルトの設定ではAndroid OSの立ち上がりに続いて自動的にオシロスコープアプリが起動します。
図 Android OSの起動画面
図 オシロスコープアプリの起動画面
Androidの起動に約25秒、そこからオシロスコープアプリの展開に約15秒を要するため、計測が可能になるまでの合計時間は約40秒です。
一般的な据え置き型のデジタルオシロスコープと比較しても遜色のない時間ですが、一度システムが起動してしまえば、他のアプリへの切り替えは極めてスムーズです。例えば、Android起動後にマルチメータアプリを個別に立ち上げる場合、その所要時間は約5秒と非常に高速です。現場で複数の機能を使い分けたい場面でも、ストレスを感じることはありません。
言語設定
システム全体の設定から言語を日本語に変更することは可能です。ただし主要なアプリの表示は基本的に英語となります。
図 オシロスコープアプリの画面構成
とはいえ、オシロスコープアプリでは「Vertical」や「Trigger」といった専門用語が中心であるため、普段から計測器を扱っているエンジニアであれば戸惑うことは少ないでしょう。
外観
外観は11インチサイズのタブレットとほぼ同等ですが、1.7kgという重量が一般的なタブレットとの大きな違いです。
本体上部にはしっかりとしたトップハンドルが装備されており、室内外の移動は容易に行えます。ただし肩掛けや首掛け用のストラップは用意されていないため、テスターのように首から下げて「歩きながら」操作するのには不向きです。基本的には現場へ持ち運んだ後に、背面の脚を展開して作業台に設置して使用するのが適切なスタイルと言えそうです。
図 脚を展開した様子
この脚の安定感はそれなりに確保されており、多少の揺れや物理的な衝撃で倒れる心配はないため、安定した計測環境を構築できます。
インターフェース
図 インターフェースポート
入出力ポートは非常に充実しています。USBはタイプAとタイプCを1ポートずつ搭載しており、マウスでの操作やUSBメモリへのデータ保存には必要十分な構成です。
特筆すべきは、LANポートを搭載している点です。MHO14-200はSCPIコマンドに対応しているため、PCと接続して自動測定プログラムを組むことが可能です。例えば、製造現場において長期間の電圧変動をロギングし続けるといった用途にも、MHO14-200は十分に対応できます。
またHDMIポートを搭載しているため、プロジェクターや大型モニターに計測画面を映し出し、チーム内でのデザインレビューや不具合検討を行う際にも重宝します。さらにキャプチャーボードを活用すれば、計測の様子を動画としてPCに取り込むことも可能です。Android OS純正のスクリーンレコード機能も備わっていますが、MHO14-200の内蔵ストレージが64GBであることを踏まえると、長時間の動画記録を行いたい場合はHDMI経由で外部のPCへ出力し、そちらで記録を行うのが適切と言えます。
オシロスコープアプリ
Micsigの独自UIである「SIGTestUI」を搭載したオシロスコープアプリは、物理キーとタッチパネルの利点を上手く融合させています。
ユーザーインターフェース(UI)
MHO14-200はハードウェアキーとタッチ操作のどちらからも主要な機能に直接アクセスできます。細かいスケール調整などは物理ダイヤルで行い、メニューの選択や波形の拡大・移動は指で行うといった使い分けが可能です。タッチ操作の反応は市販の最新タブレットと比べても遜色なく、独自のUI設計に慣れてしまえば、従来のボタン操作よりも素早く設定変更を完了できます。
チャネル設定
各チャンネルの設定画面は、画面端からのスワイプ操作で呼び出せます。
図 チャネル設定画面
減衰比の設定も柔軟に変更できるため、高電圧プローブや電流プローブなど、さまざまなプローブを接続して正確な値を読み取ることが可能です。
図 減衰比の設定画面
特に便利なのが、デジタルフィルタによる詳細なバンド幅設定です。一般的なオシロスコープにある20MHz帯域だけでなく、ローパスフィルタ(LPF)やハイパスフィルタ(HPF)のカットオフ周波数を任意に設定できます。
図 デジタルフィルタによるカットオフ周波数の設定画面
例えば特定の周波数のノイズを除去したい場合、この機能を活用して最適なノイズ抑制効果を得ることができます。これは現場固有のノイズに悩まされているエンジニアにとって、非常に強力な武器となるはずです。
トリガー設定
トリガーの種類はエッジトリガーをはじめ、実務上必要十分な種類を網羅しています。
図 トリガー設定画面
シリアル通信はUART、SPI、I2Cにも対応しており、マイコン周辺のデバッグにも役立ちます。
図 シリアル通信のデコード設定
また、オシロスコープを起動したまま、マルチメータの測定値を画面上にフローティング表示させることも可能で、電圧の推移を見ながら波形を確認するといった効率的な作業が行えます。
図 マルチメータの電圧値をフローティング表示した様子
マルチメータアプリ
MHO14-200に搭載されているマルチメータ機能は、単なる「おまけ」ではなく、単体の計測器としても高い実力を持っています。
ユーザーインターフェース
操作はタッチパネルが基本となり、測定項目の変更もワンタップで完結します。
図 マルチメータアプリの画面表示
電圧、抵抗、導通チェックといった一般的な項目に加え、電流測定にも対応しています。測定精度については4 1/2桁(20,000カウント)の分解能を備えており、オートレンジ機能によって最適なレンジで素早く数値を読み取れます。
グラフ表示
一般的なハンディテスターとの決定的な違いは、測定値の時系列変化をグラフ化して表示できる点にあります。
グラフの更新頻度は1秒間に約2回程度ですが、数分から数十分にわたる電圧の「ふらつき」や「ドリフト」を視覚的に把握できるのは、デバッグ作業において大きなメリットです。例えば電源投入後の電圧の立ち上がり特性を確認したり、負荷変動時の電圧安定性をチェックしたりする際に非常に便利に働きます。
総評
MHO14-200を実際に使用してみると、オシロスコープおよびマルチメータのどちらも、現場の第一線で使うには十分すぎるほどの性能を有していることがわかりました。Android OSをベースとしているため動作がキビキビしており、重いアプリを動かしているというストレスは皆無です。
機動性については、トップハンドルと1.7kgという重量のバランスから、いわゆる「ハンディテスター」のような手軽さを期待すると少し重く感じるかもしれません。しかし現場に一台持ち込み、場所を確保して固定して使用する「ポータブル・ラボ」としての使い勝手は最高です。
バッテリー駆動が可能でありながらLAN接続によるSCPIコマンド制御にも対応しているため、ネットワーク経由での自動測定や長時間のデータロガー的な運用にも適しています。ただし、Wi-Fi機能は有効化されていないため、ネットワーク利用を検討している場合は有線LAN環境の構築が必須となる点に注意が必要です。
強み・メリット
MHO14-200はプリント基板の微小な信号解析から、現場での長時間ロギング、さらにはHDMI出力を活用したプレゼンテーションまで、エンジニアの幅広いニーズに応える柔軟性を持っています。
特にカスタム可能なデジタルフィルタによるノイズ抑制効果や、マルチメータのグラフ表示機能は、従来の計測器では難しかった解析をより身近なものにしてくれます。これから計測環境をアップデートしようと考えている方にとって、タブレット型オシロスコープは作業効率を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。



















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