この記事では、エンジャーさんよりVNAでリード付きコンデンサのインピーダンス特性を測定する方法について解説します。
インピーダンス特性の重要性
回路設計の現場ではデータシートで静電容量と耐電圧を確認し、型番を絞り込むのが一般的な手順です。一方でデータシートには周波数特性のグラフが省略されている場合も多く、ノイズ対策で重要となる自己共振周波数や等価直列インダクタンス(ESL)について具体的な数値を把握できないことが多いです。
ここで重要になるのが、手元のコンデンサのインピーダンス特性を実際に測定し、各パラメータを数値として把握する手段を持つことです。そしてVNAを使えば、自己共振周波数・ESL・等価直列抵抗(ESR)などの値が簡単に測定できます。これによって種類ごと・容量ごとの感覚を掴めれば、ノイズ対策視点でのコンデンサ選びに迷わなくなります。
測定セットアップ
VNAとシャントスルー法用の治具を使うと、リード付きコンデンサのインピーダンス特性が測定できます。VNAのポート1とポート2を治具に接続し、治具にリード付きコンデンサを挿入します(図1)。

図1 シャントスルー法の測定風景
この構成でS21(透過パラメータ)を測定し、シャントスルー法の式からインピーダンスを算出します。

測定前には校正を実施します。これによってケーブル・治具までの系統誤差を取り除けます。VNAの設定項目は次のとおりです。
- 周波数範囲: 100kHz〜1GHz
- スイープモード: ログスイープ
- ポイント数: 1601(400pts/decade)
- IFバンド:1kHz
- パワー:0dBm
これらの設定により、リード付きコンデンサの自己共振周波数を含む広い周波数範囲を、均等な分解能で測定できます。
実測上の留意点は2つあります。リードの接続位置によって1〜2nH程度の寄生インダクタンスが発生する点と、治具自体も高周波対応に最適化されていないため、ある周波数より高い領域では治具寄生成分が支配的になる点です。
種類による違い
1μFのリード付きコンデンサ3種類(セラミックコンデンサ・フィルムコンデンサ・電解コンデンサ)について、シャントスルー法でインピーダンス特性を測定しました(図2・図3)。

図2 3種類のインピーダンス特性比較

図3 1μF 3種類の外観
|
種類 |
静電容量 |
自己共振周波数 |
自己共振周波数のインピーダンス |
許容差 |
|---|---|---|---|---|
|
セラミックコンデンサ |
1μF |
1.2MHz |
0.1Ω程度 |
C0G ±5%、X7R ±10〜20% |
|
フィルムコンデンサ |
1μF |
800kHz |
0.1Ω程度 |
±5〜10% |
|
電解コンデンサ |
1μF |
(ESR支配で出現せず) |
3Ω程度(ESR) |
±20%(+50/-10%非対称) |
表1 1μF 3種類の測定結果と許容差
セラミックコンデンサは100kHzで約2Ω、1.2MHzの自己共振周波数で0.1Ω程度まで下がります。インピーダンスの極小が深く鋭く、ノイズ対策で広い周波数範囲のインピーダンスを下げたい用途に適しています。
フィルムコンデンサはセラミックコンデンサと似た特性で、100kHzで約1.5Ω、800kHzの自己共振周波数で0.1Ω程度です。同じくノイズ対策用途で広帯域をカバーできます。セラミックよりわずかに自己共振周波数が低いのは、巻物構造で等価直列インダクタンス(ESL)がやや大きくなるためです。
電解コンデンサは100kHzで約4Ω、周波数を上げても3Ω程度で横ばいに推移し、自己共振点が観測できません。これは等価直列抵抗(ESR)が他の2種類より明確に大きく、低域から高域まで全周波数範囲にわたってESRに支配されるためです。これはノイズ対策用途では大きな欠点になります。一方で、低周波域で大きな静電容量を確保することが電解コンデンサ本来の役割であり、電圧安定化の用途では問題ありません。むしろ大きな静電容量が必要な場面で採用されます。
なお、図2では数百MHz付近にも3種類すべてに共通して鋭いピーク(インピーダンスの極大)が観測されます。これはコンデンサ本来の自己共振ではなく、測定治具(リード接続部含む)の寄生成分とコンデンサの組み合わせで発生する反共振です。
静電容量の算出方法
低周波域のインピーダンスから静電容量を読むには、次式を使います。

この式はインピーダンスが静電容量に支配される(位相が-90°近傍にある)周波数領域で成立します。たとえばフィルムコンデンサが100kHzで1.5Ωのとき、計算は次のとおりです。

公称1μF・許容差±5〜10%なら範囲は0.90〜1.10μFで、計算結果1.06μFは範囲内のため公称通りと判断できます。電解コンデンサのようにESRが大きく100kHzでも位相が-90°に達しない種類では、この計算式では静電容量を正しく読み取れません。
静電容量による違い
セラミックコンデンサ2種類(10nF・1μF)について、シャントスルー法でインピーダンス特性を測定しました(図4)。

図4 10nFと1μFのインピーダンス特性比較
|
静電容量 |
自己共振周波数 |
自己共振周波数のインピーダンス |
100kHzのインピーダンス |
|---|---|---|---|
|
10nF |
13MHz |
0.3Ω程度 |
200Ω |
|
1μF |
1.2MHz |
0.1Ω程度 |
2Ω |
表2 10nFと1μFの測定結果
10nFのセラミックコンデンサは100kHzで約200Ω、13MHzの自己共振周波数で0.3Ω程度まで下がります。一方で1μFのセラミックコンデンサは100kHzで約2Ω、1.2MHzの自己共振周波数で0.1Ω程度まで下がります。
両者を比較すると、低周波域のインピーダンスは100倍の差があり、これは静電容量とインピーダンスの逆比例とも一致しています。また自己共振周波数は約10倍の差があります。これは、自己共振周波数が次式の関係にあるためです。

ここで両者のESLが等しいと仮定すると、自己共振周波数は静電容量の平方根に逆比例します。静電容量100倍に対する自己共振周波数の比は √100 = 10倍となり、実測の約10.8倍とほぼ一致します。
実際に10nFと1μFそれぞれから式を逆算するとESLは15〜18nHの範囲に収まり、同じ系列のコンデンサでは静電容量を変えてもESLがほぼ一定であることがわかります。
このことから10MHz帯のノイズ対策には10nF、1MHz帯には1μFのコンデンサを選ぶといったように、インピーダンス特性を加味して周波数帯ごとに適切な静電容量を選択することで、広い周波数範囲で低ノイズ性能の見通しが立てられます。
測定データの活用方法
VNAで測定したインピーダンス特性は、タッチストーンファイル(.s2p)として保存して回路シミュレータ uSimmics に取り込めます。この測定データを3素子等価回路モデルと比較することで、寄生成分の影響を数値として把握できます。

図5 実測と3素子モデルの比較
タッチストーンファイル(.s2p)は、Sパラメータを周波数ごとに記録するテキスト形式の汎用フォーマットです。uSimmicsではタッチストーンファイルを2端子の回路ブロックとして取り込み、他の回路要素と接続できます。
3素子等価回路は、コンデンサを静電容量C・等価直列インダクタンス(ESL)L・等価直列抵抗(ESR)Rの直列接続として表現するモデルです。10nFのセラミックコンデンサを例に、回路シミュレータ上で3素子モデルの定数(C・L・R)を実測カーブにフィットするように調整すると、次の値が得られます。
|
パラメータ |
値 |
由来 |
|---|---|---|
|
C |
10nF |
低周波域のカーブにフィット |
|
L |
15nH |
自己共振周波数の位置にフィット |
|
R |
330mΩ |
自己共振点のインピーダンス最小値にフィット |
表3 10nFセラミックコンデンサの3素子モデル定数
実測値と等価回路モデルを比較すると(図5)、100kHzから自己共振周波数の13MHz付近まではほぼ一致しています。一方で13MHzより高い周波数、特に300〜400MHz付近で実測に反共振ピーク(インピーダンスの極大)が現れるため、100MHz以上の周波数範囲で実測値とモデルのインピーダンス特性に乖離が生じます。
100MHz以上の周波数範囲でインピーダンス特性を一致させるには、4素子以上の等価回路モデルが必要となります。ちなみに今回の300〜400MHzに現れる反共振は、コンデンサ本体の特性ではなく、測定治具(リード接続部含む)の寄生成分によるものなので、モデル化にあたっては部品特性と治具特性の切り分けも重要です。
このように、VNAで測定した実測値をタッチストーンファイルで保存してシミュレータの3素子モデルと対比すれば、モデルの効く周波数範囲を実値で押さえながら、コンデンサ選びの根拠を実測値から判断できるようになります。
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