この記事では、エンジャーさんよりノイズ対策用コンデンサの選定パラメータと種類別の性質について解説します。

 

静電容量の限界

EMC試験で規格をオーバーしたとき、最初に試したくなるのは静電容量を大きくする対処です。次の3つはその典型例です。

  • 1μFを1μFに置き換える
  • 同静電容量を2個並列にする
  • メーカーを変える

いずれも静電容量は変化しますが、目的の高周波においてはノイズレベルが変化しない、あるいは悪化することさえあります。
ここで重要なのはコンデンサのインピーダンス特性です。これまで多くの現場で、静電容量だけでノイズ対策しようとする場面に遭遇しましたが、インピーダンスの観点が抜けている事例がほとんどでした。静電容量だけの視点では不十分です。周波数範囲全体でコンデンサがどのように動作するのかを押さえておくことが大切になります。

 

等価回路

コンデンサのインピーダンス特性を等価回路で表すとRLC直列回路となります。RはESR(等価直列抵抗)、LはESL(等価直列インダクタンス)で、いずれも部品構造に起因する寄生成分です(図2)。データシートで示される静電容量はそのうちのC成分にすぎません。

コンデンサの等価回路

図1 コンデンサの等価回路

寄生成分の由来

ESLとESRは構造から決まる物理量です。電極形状と材料によって決まり、静電容量値の大小とは直接関係しません。
ESLはコンデンサ内部の電流が流れるループ長と電極の引き回し長で決まります。同サイズのまま静電容量を増やしても、ESLはほとんど小さくなりません。反対にサイズを大きくすると電極長が伸びるため、ESLが大きくなる傾向があります。ESLを小さくしたい場合の選択肢は次のとおりです。

  • リバースジオメトリ品
  • 貫通型3端子コンデンサ


データシート上の周波数特性を見ると、自己共振周波数を超えた領域ではインピーダンスが上昇します。この上昇の傾きからESLを逆算できます。このように、静電容量値だけでなく周波数特性を確認しておくと、部品ごとの性質が見えるようになります。

インピーダンスと自己共振周波数

ESLとESRを取り込むと、コンデンサのインピーダンスは周波数の関数となり、ある周波数で最小値を取ります。インピーダンスは次式で表されます。

数式


虚部がゼロとなる周波数が自己共振周波数(SRF)で、次式で与えられます。

数式


低周波域ではインピーダンスが下降し、自己共振周波数で最小値(ESR)に達します。それ以上の周波数ではインピーダンスが上昇します。

コンデンサのインピーダンス周波数特性

図2 コンデンサのインピーダンス周波数特性

 

静電容量を増やすとCが大きくなり、自己共振周波数が下がります。対策したかった高周波が自己共振周波数を超えてインピーダンスが上昇し、ノイズレベルが下がりません。

 

種類別の性質

ノイズ対策で使用するコンデンサは積層セラミックコンデンサ(MLCC)・フィルムコンデンサ・電解コンデンサの3種類です。ESL・ESR・自己共振周波数の典型値は種類によって大きく異なり、コンデンサの種類ごとに得意な周波数帯と用途が決まります。

積層セラミックコンデンサ(MLCC)

MLCCはセラミック誘電体と金属電極を積層した構造です。電極が短く本数が多いため、低ESL・低ESRを実現できます。0603サイズでESLは1nHを切ります。自己共振周波数は数十MHz級まで伸び、高周波域のデカップリングでは主流の選択肢になります。
ただし、実回路ではコンデンサに直流電圧(DCバイアス)が加わります。MLCCは誘電体材料によってClass IとClass IIに分類され、DCバイアス下での静電容量の変化率が大きく異なります。
Class II(X5R/X7R)はDCバイアスをかけると誘電率が下がります。印加電圧・サイズ・誘電体材料に依存して静電容量が大きく低下します(図3)。静電容量が小さくなることで自己共振周波数が変化し、インピーダンス特性が設計値からずれます。その結果、対策したかった周波数でノイズレベルが下がらなくなります。

MLCCのDCバイアス特性

図3 MLCCのDCバイアス特性

Class I(C0G/NP0)はDCバイアスによって静電容量はほとんど変動しません。ただし静電容量がpF〜nFオーダに留まるため、低周波ノイズ対策用途には使いにくいです。
このように、Class IIのMLCCを選ぶ際は動作電圧でのDCバイアス特性を確認し、対策したい周波数帯でインピーダンスが想定通りに低くなるかを確かめることが大切になります。

 

フィルムコンデンサ

フィルムコンデンサは樹脂フィルム(PP・PET・PEN・PPS)を誘電体とした巻回構造です。電極は金属箔またはメタライズドフィルムを使用します。ESLは数nH〜十数nHとMLCCより一桁大きく、自己共振周波数は数MHz程度に留まります。ノイズ対策に使える主な周波数帯は数MHz以下です。
ESRは低く誘電損失も小さいため、電源ライン用のXコンデンサ(ライン間挿入)・Yコンデンサ(ライン-アース間挿入)や高耐圧スナバ用途に向いています。X/Yは安全規格認定品の区分で、MLCCでは代替できません。
DCバイアスや経時による静電容量変動が小さく、公称値と実効値がほぼ一致します。実回路の動作電圧によらずインピーダンス特性が安定するため、設計通りのノイズ対策効果を得やすいです。

電解コンデンサ

電解コンデンサは陽極金属の酸化皮膜を誘電体とします。極めて薄い誘電体膜と大きな電極面積によって静電容量が大きいことが特徴です。誘電体の材質によって、性質が分かれます。

    • アルミ電解:静電容量が大きく低価格、寿命が短い
    • タンタル電解:小型・低ESR
  • 導電性高分子:低ESRで高周波寄りに振った特性

共通する弱点は巻回構造に起因する大きなESL・ESRと低い自己共振周波数(100μF級で数百kHz)です。単独では数MHz以上のノイズに効きません。
このため、高周波域のノイズ対策には積層セラミックコンデンサとの並列配置が必要です。電解コンデンサが低周波域のインピーダンス低下を担い、積層セラミックコンデンサが高周波域のインピーダンスを低下させます。

 

種類

静電容量

自己共振周波数

MLCC(0603)

0.1μF

数十MHz

フィルム

1μF

数MHz

アルミ電解

100μF

数百kHz

表1 種類別・自己共振周波数の典型値

表1の自己共振周波数は静電容量例での代表値で、静電容量が変われば自己共振周波数の式どおりにシフトします。同種・同サイズ・同静電容量でもメーカによってESL・ESRに無視できないばらつきがあるため、選定のたびにデータシートで確認することが大切になります。

 

種類×パラメータマトリクス

各コンデンサの自己共振周波数を比較すると、対策したい周波数帯によって適切な種類が絞り込めます。種類が決まれば、次にESL・ESR・DCバイアスで詳細を詰める、という2段階の選定ができます。

種類

MLCC

フィルム

電解

静電容量レンジ

pF〜数十μF

nF〜数十μF

μF〜数万μF

ESL

数nH

数nH〜十数nH

十数nH〜数十nH

ESR

数mΩ〜数十mΩ

数mΩ〜数十mΩ

数十mΩ〜数Ω

自己共振周波数

数十MHz

数MHz

数百kHz

DCバイアス

大(Class IIのみ)

なし

なし

温度特性

中(Class IIのみ)

小さい

小さい

表2 種類×パラメータマトリクス

種類ごとに参照すると、設計レビューで「なぜこの種類か」を答えるときの根拠になります。
コンデンサの選定基準は静電容量の大小ではなく、対策したい周波数帯でインピーダンスが低くなるかどうかです。


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