この記事では、エンジャーさんよりパスコン選定・配置で見落としがちな5つの観点について解説します。

 

パスコン選定の盲点

パスコンが効かないとき、最初に疑われるのはコンデンサの静電容量です。しかしノイズ対策用のパスコン(積層セラミックコンデンサ、MLCC)の選定では、静電容量より先に確認すべき観点が5つあります。

  • ループ面積
  • 寄生インダクタンス(ESL)
  • DCバイアス特性
  • 温度係数
  • パスコンの種類と役割

 

ループ面積と配置の落とし穴

パスコンの効果は、電源ピンからパスコン、GNDビア、GNDピンへ戻る電流ループが囲む面積で決まります。
この電流ループは1ターンのコイルと等価であり、ループ面積に比例した寄生インダクタンスが生じます。寄生インダクタンスが大きいほど高周波で電流が流れにくくなり、パスコンとしての効果が落ちます。
ここで重要なことは、パスコンの配置基準をVCCピンだけに置かないことです。VCCピンに近くパスコンを置いても、GNDピンから遠い位置であればループ面積は縮まりません。パスコンの配置基準はVCCピンへの近さではなく、VCCピンとGNDピンの両方に対してループ面積が最小になる位置です。

パスコン配置の考え方

図1 パスコン配置の考え方

またGNDビアの位置もループ面積に影響します。パスコンとGNDピンの両側に近接してビアを配置することで、ループ面積をさらに抑えられ、結果としてノイズレベルの低減につながります。

 

ESLと自己共振点の限界

MLCCの寄生インダクタンス(ESL)は、配置や配線の最適化では低減できません。
コンデンサの自己共振点は、ESLと静電容量の組み合わせで決まります。ESLは自己共振点を超えると支配的になり、インピーダンスが上昇してパスコンとしての減衰効果が低下します。
この減衰効果の低下は、パッケージサイズと静電容量の選定で改善できます。パッケージサイズは0402・0603・0805などの外形寸法を指し、大きいほどESLが増加して自己共振点が低周波側へ移動します。静電容量は部品の公称値そのもので、大きいほど自己共振点が下がります。どちらも小さくするほど自己共振点が高周波側へ移動し、減衰効果を確保しやすくなります。

 

DCバイアスと実効静電容量

パスコンとして選んだMLCCの実効静電容量は、動作電圧下でデータシートの公称値と一致しないことがあります。これはMLCCのDCバイアス特性によるものです。
DCバイアス特性は特に高誘電率系MLCCで発生する現象で、印加した直流電圧によって誘電率が低下し、実効静電容量が公称値を大きく下回ります。図2はDCバイアス特性の例で、印加電圧の上昇とともに実効静電容量が低下します。

MLCCのDCバイアス特性

図2 MLCCのDCバイアス特性

DCバイアス特性は誘電体の種類で決まります。高誘電率系MLCCではDCバイアス特性が顕著に発生し、温度補償系(C0G)ではほぼ発生しません。つまり高誘電率系MLCCは、静電容量だけを基準に選ぶと動作電圧下で実効静電容量が低下し、結果としてパスコンとしての減衰効果が設計値を下回ることとなります。

 

温度係数と静電容量変化

MLCCの実効静電容量は温度によっても変動します。EIAの温度係数コード(X7R・X5R・C0G)は動作温度範囲と許容変動幅を表し、高誘電率系のX7R・X5Rは動作温度範囲で±15%以上の変動が許容されます。一方、温度補償系のC0Gは±数十ppm/℃に収まり、温度による変化はほぼ無視できます。
温度係数による静電容量の変化はDCバイアスと独立して発生します。そのためDCバイアス低下と温度変動の両方を見込んだ静電容量マージンを確保することが重要になります。

 

パスコンの種類と役割

ここまでの観点ではパスコン(MLCC)のノイズ対策を前提にしていました。しかし実際の電源回路では、電圧安定化を目的とした電解コンデンサも並列に使われます。両者は役割が異なり、選定ロジックも異なります。表2にパスコン(MLCC)と電圧安定化用電解コンデンサの役割対比を示します。

 

部品

MLCC

電解コンデンサ

役割

ノイズ対策パスコン

電圧安定化

目的

高周波ノイズ除去

電源電圧の安定化

主選定基準

ESL・DCバイアス・温度係数

大きい静電容量

表1 パスコン(MLCC)と電圧安定化用電解コンデンサの対比

役割の混同は、ノイズ問題を電解コンデンサの追加で解決しようとする、あるいはMLCCの静電容量を増やせばノイズが減ると考える誤った判断につながります。パスコンを選定する前にそれぞれの役割を正しく認識することが、目的の周波数帯でノイズを低減するための出発点になります。

 

設計仕様への落とし込み

すでに出来上がったプリント基板の場合ループ面積を縮める余地が限られ、部品の差し替えにも在庫・パターンの制約があります。
根本的な解決は、現場で確認した5観点を設計仕様に書き起こすことです。

  • ループ面積・配置:レイアウト設計規則にループ面積の上限・VCC/GNDビア配置・応力集中箇所へのMLCC配置制限を明記する
  • 寄生インダクタンス(ESL):部品選定条件に自己共振点の下限とパッケージサイズを指定する
  • DCバイアス特性:部品選定条件に使用電圧でのマージンと誘電率系を指定する
  • 温度係数:部品選定条件に温度係数コードと動作温度範囲を明記する
  • 種類選定:ノイズ対策用か電圧安定化用かを役割として明示する


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