この記事では、エンジャーさんよりテスタの抵抗測定で表示値がズレる原因と、値が合わないときの切り分け方について解説します。
抵抗測定の仕組み
テスタの抵抗レンジは、端子から既知の電流 を流し、そこから生じた電圧 を読み取って抵抗値を算出しています。抵抗そのものを直接測るのではなく、オームの法則で値を求めるため間接測定と呼ばれます。

テスタの内部には、テスト電流を出力する回路があります。この回路が測定対象に電流を流し、端子に生じた電圧を読み取って抵抗値を表示します(図1)。

図1 抵抗測定の原理模式図
このときテスタは電流を出力しているため、端子には電圧が掛かった状態となります。実際に OWON製の B41T+(一個体)を実測すると、220 Ω レンジで開放時の端子電圧は 2.56 V、テストリードを短絡したときに流れる電流は約 1.33 mA でした。
テスタからの出力電流はレンジによって変わり、低抵抗レンジほど電流値が大きくなります。このレンジごとに既定の電流を流す方法は、一般に定電流方式と呼ばれます。
なおテスタが測定しているのは抵抗値ではなく、端子に生じる電圧です。そのため抵抗値を測定する前には、回路の電源を切り、コンデンサを放電しておくことが前提になります。
単体測定の確認手順
部品を回路から外して抵抗値を測定しても、表示値が公称値と合わないことがあります。この差を生む要因は、次の 3 つです(表1)。

表1 表示値と公称値の差を生む 3 つの要因
外部抵抗の確認
このうち外部抵抗は、テストリード自体の抵抗値や接点との接触抵抗値が、読み値にそのまま加算されて生じます。
外部抵抗の確認方法としては、まず抵抗測定モードに設定してから、テストリードを短絡します。実際に B41T+ の 220 Ω レンジで短絡すると、読み値は 0.08 Ω となりました。
ここで読み値が低くて安定していれば、測定系に問題はありません。ただし低抵抗の部品を測定するときは、この短絡抵抗も無視できなくなるため、REL(相対測定)でゼロにしてから測定します。
この外部抵抗は、3 つの要因のうち唯一、表示から取り除けます。
確度と許容差の幅
一方で確度と許容差は、ゼロにできません。確度はテスタ側の仕様で決まる測定の不確かさの幅で、大きさは仕様書から読み取れます。
許容差は部品側の実力値が公称値からずれてよい幅で、部品はそもそも公称値通りには作られていません。
この 2 つに共通するのは、どちらも表示値と公称値の差を説明する幅である点です。そのため判定方法としては、確度と許容差を足し合わせて使います。
独立しているのは幅の出所で、確度は計測器側、許容差は部品側に属します。対処もレンジ・機器の選定と、部品の選定に分かれます。
許容差と確度による判定
判定では、表示値と期待値(公称値±許容差)の差を、確度の幅と比べます。
たとえば許容差 ±5% の 1 kΩ(950〜1,050 Ω)を 2.2 kΩ レンジで測定し、1,060 Ω と表示されたとします。このレンジの確度は ±(0.5%+10dig)(18〜28 ℃・10dig=1.0 Ω)のため、確度幅は 1,060 Ω×0.5%=5.3 Ω に 10dig 分の 1.0 Ω を加えた ±6.3 Ω です。
1,060 Ω は許容差の上限に確度を加えた 1,050+6.3=約 1,056 Ω を超えています。許容差と確度を合わせても説明できない差のため、部品を疑う判定になります。
回路内測定と並列経路
部品を回路に実装したまま抵抗値を測定すると、表示値が公称値と合わないことがあります。ただしここでも部品不良と即断はできず、先に測定条件を確認する必要があります。
表示値を部品の値として扱えるのは、次の 2 条件を満たした場合に限ります。
- 回路に残留電圧がないこと
- 測定端子間に部品以外の別経路がないこと
どちらかが欠けていると、表示値には部品以外の成分が含まれてしまいます。
残留電圧の影響
テスタが抵抗値の算出に使うのは、端子に生じる電圧です。ここで回路に残留電圧があると、残留電圧の極性と大きさに応じて表示値は過大にも過小にもなり、負値や OL 表示、値の変動として現れます。
特にコンデンサが接続された回路では、テスト電流によって充放電が進むため、読み値は安定するまで変動し続けます。
表示のブレの大きさは、残留電圧とテスト電流の比で決まります。テスタは端子の電圧をテスト電流で割って抵抗値を算出しているため、残留電圧もテスト電流で割った抵抗値に換算されて表示されます。
たとえば 0.1 V の残留電圧が残っていた場合、テスト電流が 1 mA のレンジでは誤差は 100 Ω にとどまります。

一方でテスト電流が 10 µA のレンジでは、同じ 0.1 V が 10 kΩ の誤差に達します。

レンジが高くなるほどテスト電流が小さくなり、高抵抗レンジほど残留電圧の影響を受けやすくなります(表2)。

表2 B41T+ の抵抗レンジ別テスト電流(一個体の実測・テストリード短絡時)
なお測定対象を接続した状態では、テスト電流はこれより小さくなることがあります。
残留電圧の有無は、DCV の最小レンジでゼロ表示かつ安定していることで確認し、残っていれば放電してから測定し直します。
並列経路と合成抵抗
テスタが測定しているのは、2 本のテストリード間にあるすべての経路の合成抵抗です。
測定したい抵抗 R と並列に別の受動部品の経路 Rp が付いていると、テスタは R 単体ではなく両者の合成抵抗を読み取ります(図2)。

図2 回路内測定の並列経路
無電源で放電済みの回路でも、並列接続された受動回路の経路がある限り、合成抵抗は必ず部品単体の値以下になります。回路内で測定した抵抗値が公称値より低い場合は、この並列経路が原因になっていることが多いです。
並列経路の確認では、回路図で測定端子間の別経路を探します。別経路を否定できない場合は、部品の一端を基板から浮かせて、単体で測定します。浮かせた単体の値が公称値に戻れば、並列経路が原因です。
そして残留電圧と別経路の 2 条件を確認したうえで、最後は単体測定と同じく、表示値と期待値の差を許容差と確度の幅で判定します(表1)。
導通ブザーの読み方
抵抗値測定に関連して、現場では導通テストモードもよく使用されています。この導通テストでは、ブザーが鳴ったことだけで導通良好と判断されがちですが、ブザーが鳴っても必ずしも 0 Ω や導通良好を意味するわけではありません。
導通テストの原理は抵抗測定と同じです。テスト電流を流して電圧を測定し、その読み値がしきい値未満になったときにブザーを鳴らします。
B41T+ のしきい値は約 30 Ω で、読み値が 30 Ω 未満であれば状態を問わずブザーが鳴ります。このとき数 Ω が残るハンダ不良でもブザーは鳴りますし、一方でしきい値を超えた中抵抗の経路は導通があってもブザーが鳴りません。
そして、このしきい値は機種によっても異なります。単一の目安値でしきい値を定めている機種もあれば、レンジによってしきい値が変わる機種、範囲で規定する機種など様々です(表3)。

表3 機種別の導通ブザーしきい値
なお範囲で規定されている機種では、その範囲内の読み値で鳴るかどうかは一意に決まりません。そのため導通ブザーを合否として読むには、自分の機種のしきい値を仕様書で確認しておく必要があります。
そして抵抗値や導通の測定結果が想定と違うときは、安直に部品不良と即断せず、まず単体か回路内かを分けて測定条件を確認する姿勢が大切です。
さらにその上で、回路内であれば残留電圧と別経路を確かめ、最後は許容差と確度の幅で判定することで、部品の不良と測定の問題を切り分けることができます。
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