この記事では、エンジャーさんより対策周波数からフェライトコアの適正な巻数と巻き方を決める方法について解説します。

 

巻数とインピーダンス

ノイズ対策において、ケーブルにフェライトコアを取り付けただけでは思ったようなノイズ抑制効果が得られないことがあります。そのような場面で有効な手法として、フェライトコアの巻数を増やすという手段があります。
フェライトコアは、ケーブルに流れるコモンモード電流に対してインピーダンスを付与することで、外部へ漏洩するノイズを低減します。
ここで巻数とはコアの穴をケーブルが通る回数を指しており、クランプコアにケーブルを一度貫通させれば1ターン、コアにケーブルを巻き付けて二度通せば2ターンと数えます。
ケーブルを挟むだけのクランプ装着と、ケーブルを巻き付ける多ターンでは、同じフェライトコアでもインピーダンスの観点では違った特性が得られます。
巻数によるインピーダンスの変化は、特に低い周波数で顕著です。TDK製のフェライトコア(ZCAT2032-0930)の巻数を変化させてインピーダンスを測定すると、10MHz以下の周波数帯において巻数を増やすほどインピーダンスが大きくなる様子が確認できます(図1)。

巻数別のインピーダンスの周波数特性

図1 巻数別のインピーダンスの周波数特性

ここで1ターンから2ターンへ巻数を増やすと、低周波数帯のインピーダンスはおよそ4倍程度になっています。この4倍というのが重要で、フェライトコアを始めとしたコイル部品には巻数Nの2乗に比例して、インダクタンスが上昇する性質を持ちます。
このインダクタンスの上昇は、インピーダンスの虚数項であるリアクタンスの上昇に寄与するため、結果として低い周波数においてはフェライトコアのインピーダンスも同様に巻数  に比例して上昇するというわけです。
そしてこのインピーダンスが巻数の2乗に比例して高くなることを利用して、より大きなノイズ抑制効果を狙うというのがフェライトコアを使用するうえでの定石となります。
ただしインピーダンスはフェライトコアなどの部品側の指標であり、実際のEUTでノイズレベルが何dB下がるかはケーブルや回路を含む系全体によって決まります。そのためインピーダンスが4倍になったからといって、ノイズレベルも直線的に1/4(-12dB)になるわけではありません。

 

2乗で増える仕組み

そもそもインダクタンスとは、巻線に電流を流したときに磁束が生じる度合い、言い換えれば電流の変化を妨げる程度の大きさを表す量です。
そしてフェライトコアに巻いた巻線のインダクタンスは、磁気回路の考え方で次のように表せます。

数式

 

ここで Aはコアの断面積、 le は磁路の長さ、 μ0μr はコア材質の透磁率を表す定数です。
この式で注目したいのは、巻数 N が2乗の形で含まれている点です。したがってコアの形状と材質を固定すれば、インダクタンスは巻数の2乗に比例して大きくなるというわけです。

2乗で効く2つの要素

では、なぜ巻数が2乗で効くのか。その理由は、巻数が磁束の生成と鎖交という2つの段階でそれぞれ効いてくるためです。
まず巻線に電流が流れると、コアの内部に磁束が生じます。この磁束を生じさせる力は起磁力と呼ばれ、巻数と電流の積 N⋅I で決まります。
つまり巻数を増やすほど起磁力が大きくなり、生じる磁束は巻数に比例して増えていきます。これが1つ目の要素です。
次にこの磁束はN 本の巻線それぞれが磁束を受け取るため、巻線全体が鎖交する磁束は巻数の分だけもう一段大きくなります。これが2つ目の要素です。
そして要素1の起磁力と要素2の鎖交の2つが、巻数に対して二重に働くことによってインダクタンスは巻数の2乗に比例することになります(図2)。

巻数とインダクタンスの関係

図2 巻数とインダクタンスの関係

巻数を1ターンから2ターンへ増やしたときにフェライトコアのインピーダンスがおよそ4倍になったのも、この巻数の2乗の関係が実際に現れた結果です。

 

巻数の落とし穴

ノイズ対策においてはフェライトコアの巻数を増やしても、必ずノイズレベルが低減するわけではありません。その理由は対策周波数に対してフェライトコアのインピーダンスが低下することがあるためで、そこには3つの要因が存在します。

自己共振周波数の低下

巻数を増やすと巻線間の寄生容量が増え、インピーダンスのピークになる周波数、すなわち自己共振周波数が低い方へと下がります。この自己共振周波数が対策周波数より低いと、巻数の多いコアは1ターンのときよりもインピーダンスが低くなる可能性があります。
実際に巻数を10ターンまで増やすと、300MHz付近では1ターンと同等の水準までインピーダンスが低下していることが確認できます(図1)。

巻き方の違い

同じ巻数でも、巻き方によって巻線間の寄生容量が変わり、それに伴って自己共振周波数も変化します。
具体的な巻き方としては2つあります。1つ目の分割巻きは数ターンずつ離して巻く方式で、寄生容量が小さくなる傾向にあります。2つ目の重ね巻きは1か所に密に重ねて巻く方式で、寄生容量が大きくなる傾向にあります。
高い周波数を狙うときは、自己共振周波数を高く保つために分割巻きを選びます。同じコアでも巻き方で結果が変わるため、決めた巻き方を守ることが再現性につながります。

大電流による磁気飽和

フェライトコア内部では差動電流による磁束は打ち消され、コモンモード電流によって磁化されます。このコモンモード電流は一般的に微小な電流であるため、磁気飽和はほとんど発生しません。
ただし、たとえばインバータで駆動するモータのケーブルなど、コモンモード電流そのものが大きい系では、コモンモード電流による磁気飽和が発生する可能性があります。この磁気飽和が発生すると、フェライトコアの透磁率が低下し、それによってインピーダンス(インダクタンス)が低下します。
こうした系では飽和の見極めが難しく、コアを大きくする、あるいは別のノイズ対策と併用するなどの対処を検討します。

 

適正巻数の決め方

ノイズ対策の対象となる周波数が決まれば、フェライトコアの自己共振周波数をもとに適正な巻数を検討できます。

対策周波数と巻数の方針

表2 対策周波数と巻数の方針

対策周波数が数百kHz~数MHzの低い帯域なら、巻数を増やしてインピーダンスを稼ぎます。巻数の実用的な目安は概ね3ターンから4ターンで、これ以上になるとケーブルの巻き太りなど取り回しの問題が出てきます。
一方で対策周波数が数十MHz~数百MHzの高い帯域なら、自己共振周波数の低下の影響を受けるため1ターンや2ターンなど巻数を少なめにします。ここでノイズ抑制効果が不足していると感じた場合は、ターン数を増やすのでなく、直列にもう一つフェライトコアを追加するのが適切です。
こうして対策周波数に合わせて巻数を決め、高域では分割巻きで自己共振周波数を高く保てば、同じコアでも結果はぶれません。


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