この記事では、エンジャーさんよりテスタの測定確度の読み方について解説します。
測定確度とは
テスタ(デジタルマルチメータ・DMM)の測定確度は、データシートに ±(0.1%+2dig) のような形で書かれています。この表記のうち % は感覚的に理解しやすいですが、後ろの dig は正しい意味が理解されていないことが多いです。
テスタの測定結果を表示値で判定してよいかどうかは、誤差幅がしきい値にかからないかによって決まります。この形式の確度表記では、誤差幅を計算する要素は %項と dig 項の 2 つの成分です。
確度の2つの構成要素
%項は読み値(表示されている値)に比例する誤差成分です。±(0.1%+2dig) なら、読み値の 0.1% が誤差幅に入ります。
dig 項は読み値によらない固定の誤差成分です。dig は表示の最下位桁を数える単位で、2dig なら最下位桁 2 つ分の誤差が常に加わります。
この dig は、データシートによって dgt/digits/counts とも書かれます。呼び方が違うだけで、確度式の中ではいずれも同じ意味です。
1dig の絶対値
1dig の絶対値は、そのレンジの分解能(表示の最下位桁 1 つ分の重み)と同じです。
たとえば OWON B41T+ の直流電圧では、2.2V レンジも 22V レンジも確度は同じ ±(0.1%+2dig) ですが、分解能は 0.1mV と 1mV で異なります。この 2 つのレンジで違うのは dig の数ではなく、1dig の重みです。
規定の条件で仕様を満たしているテスタであれば、真の値は表示値を中心とした誤差幅の帯の中にあると見積もれます(図1)。帯の半幅(± の片側)は、%項と dig 項の合計で表されます。

図1 表示値と誤差幅の関係
この規定の条件が、確度表に前提として書かれている標準条件です。B41T+ では周囲温度 18〜28℃・相対湿度 80% 未満と規定されていて、確度の数字はこの条件とセットで初めて意味を持ちます。
なお、確度仕様から計算できるのはテスタ自体が持つ誤差の成分であり、これだけで測定全体の妥当性が保証されるとは限りません。
レンジと測定確度の関係
誤差幅は、読み値に % を掛けた %項と、dig の数に分解能を掛けた dig 項の合計で決まります。どちらもデータシートに載っているので、簡単に計算で求まります。
誤差幅の計算
実際に、確度 ±(0.1%+2dig)・分解能 0.1mV の 2.2V レンジで、1.5000V と表示された場合を計算してみます。
%項と dig 項は、それぞれ次のように求まります。
%項:0.1%×1.5000V=1.5mV
dig 項:2dig×0.1mV=0.2mV
合計すると、この表示値の誤差幅は ±1.7mV となります。
標準条件で仕様を満たしていれば、真の値はこの ±1.7mV の範囲にあると見積もれます。
レンジによる誤差幅の違い
同じ 1.5V を 22V レンジで測ると、分解能は 1mV になります。このときの表示値は 1.500V です。これは B41T+ のカウント数(表示できる数字の総数)が 22000(最大表示 21999)で、レンジを上げるとそのぶん表示の最下位桁が粗くなるためです。
ここで確度は 2.2V レンジと同じ ±(0.1%+2dig) のままです。
%項:0.1%×1.5V=1.5mV
dig 項:2dig×1mV=2mV
%項は変わらない一方で dig 項が増え、誤差幅は合計 ±3.5mV に広がります。
レンジの変更によって 1dig の重みが 10 倍になった分、dig 項が %項を上回る結果となりました。つまり読み値がレンジの上限に対して小さいほど、誤差幅に占める dig 項の比重は大きくなるということです。
しきい値との比較
計算した誤差幅は、しきい値に対するマージンと比較します。マージンとは、表示値からしきい値(設計許容の端)までの距離のことです。
たとえば、しきい値に対する表示値のマージンが 2mV と仮定します。
ここで 2.2V レンジであれば、誤差幅 ±1.7mV はマージンの 2mV より小さいため、表示値で合否判定してよいと言えます。
一方で 22V レンジの場合、誤差幅 ±3.5mV はマージンの 2mV より大きいため、真の値がしきい値より大きいか、小さいか、どちら側にあるのかは表示値から判断できません。判定できない場合は、レンジ・測り方・計測器のいずれかを見直して測り直すことになります。
このように同じ 1.5V の測定でも、レンジによって合否判定できる場合とできない場合に分かれることがある、というのは理解しておく必要があります(図2)。

図2 レンジによる誤差幅と判定の違い
なお表示の桁数が多いほど正確だと受け取られがちですが、桁数が示すのは読める細かさであって、確からしさを決めるのは誤差幅です。
機能と測定確度の関係
テスタの確度は、機能とレンジの組み合わせごとに規定されています。
実際には、機能・レンジ・条件で確度が分かれており、機能に応じて誤差幅の計算に使う確度と分解能が変わります。
確度表の構造
B41T+ の代表的な確度仕様を表1 に示します。

表1 B41T+ 確度表の抜粋
% の値も dig の数も、機能・レンジ・条件の組み合わせごとに別の値になっていることがわかります。
レンジによる違いと機能による違い
直流電圧では、2.2V・22V・220V の 3 つのレンジが同じ ±(0.1%+2dig) です。最も低い 220mV レンジだけは ±(0.1%+5dig) となり、dig の数が増えます。
機能による違いは、レンジによる違いよりも大きく現れます。直流電圧の %項が 0.1% であるのに対して、抵抗(220Ω〜220kΩ)は ±(0.5%+10dig) です。
さらに容量(22nF〜220μF)は ±(3.0%+5dig) となっており、直流電圧とは比較にならないほど %項が大きいことがわかります。
ここで機能ごとに誤差幅が大きく違うのは、機能ごとに測定の方式が異なるためです。つまり確度は機種に 1 つの値ではなく、機能・レンジ・条件ごとに規定された別々の値だということです。
対応する確度の特定
同じ機能・同じレンジでも、条件によって確度が分かれることがあります。交流電圧の 22V レンジは、1kHz 以下では ±(0.8%+10dig)、一方で 1kHz を超えると ±(1.2%+50dig) と周波数によって確度が変化します。
標準条件が確度表の全体にかかる前提条件であるのに対して、周波数バンドはどの確度を読むかを決める個別の条件となります。そのため自分の測定に対応する確度は、機能・レンジ・条件の順で絞って特定します。
測定確度の見直しポイント
確度計算は、毎回の測定のたびに行う作業ではありません。普段の測定では、表示値をそのまま読んで次の作業へ進む場面がほとんどです。
確度計算が必要になるのは、合否判定や設計判断で、表示値がしきい値に近いと疑われるときです。マージンが小さくなるほど、誤差幅がしきい値をまたぐ可能性が高くなるためです。
実務での典型的なタイミングは、不具合の発生時や測定系の見直し時です。測定値そのものが疑わしくなった場面で、テスタがどこまで信じられるかを検証する手順として確度計算を使います。
表示値で判断してよいかどうかは、表示の桁数ではなく、誤差幅とマージンの比較で決まるということを理解しておいてください。
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