この記事では、オシロスコープのプローブを接続したときに観測波形が変化する仕組みについて解説します。
プローブ接続による波形の変化
まずはじめに、オシロスコープを使った測定では 2 つの波形を意識する必要があります。
1 つ目がオシロスコープの画面に表示される観測波形、2 つ目が回路に実際に存在する測定対象の波形です。
測定対象の波形は測定条件によらず唯一の波形ですが、観測波形は同じ信号を測定しても計測器の設定やプローブの影響によって変化します。これは測定条件によって観測波形の見え方、つまり評価結果の解釈が変わるということです(図1)。

図1 測定条件による観測波形の違い
図1 は、同じ方形波を条件を変えて測定したときの観測波形を、模式的に並べたものです。横軸は時間、縦軸は電圧を表します。
これらの波形は、立上りの鈍り方も、平坦部の乱れ方も一致していません。それでも測定しているのは同一の信号であり、異なるのは測定条件だけです。
この違いは、オシロスコープの品質や個体差によるものではありません。むしろプローブを接続するという行為そのものが、回路の状態を変えています。
そして変化の大きさも、常に一定ではありません。信号の性質と測定条件によって、無視できる程度にとどまる場合もあれば、波形の読み取りを誤らせる程度まで大きくなる場合もあります。
そのため観測波形が正しいかどうかは、どのような条件で測定したのかという情報を合わせて判断する必要があります。
入力容量とGNDリードの作用
ここでは測定条件のうち、プローブの影響を取り上げます。
プローブは、回路の電圧をそのままオシロスコープへ伝達しているわけではありません。プローブ自身が容量とインダクタンスを持つため、回路の一部として作用します(図2)。

図2 プローブが回路に加える入力容量とGNDリード
入力容量の影響
入力容量は、プローブの先端から見た容量成分です。
この容量は測定対象の回路に並列に接続され、信号の立上りを鈍らせます。そして回路の出力インピーダンスが高いほど、また信号の周波数が高いほど、この影響は大きくなります。
反対に、回路の出力インピーダンスが低い、または低い周波数の信号を測定する場合は、この容量による波形の鈍りは小さくなります。
なおプローブの減衰比を切り替えると、入力容量も変化します。代表的な値として 1x は約 40〜100 pF、10x は 15 pF 以下となっています。そのため 10x と比較して、1x では入力容量が大きく、波形が鈍りやすくなります。
GNDリードの影響
GNDリードは、プローブの基準電位と回路の基準電位を同電位にするための線です。
このリードは直流で見ると短絡していますが、交流ではインダクタンスとして作用し、入力容量と組み合わさって共振回路を構成します。そして立上りの速い信号を測定したとき、この共振によって観測波形に振動が発生することがあります。
この観測波形の振動が、測定対象の回路で発生しているのか、測定系で発生しているのかは、波形を見ただけでは区別できません。
観測波形の確認ポイント
ここでは測定対象の信号の周波数・立上り時間・測定点から見た回路の出力インピーダンスを把握し、その性質を確認ポイントと突き合わせて妥当性を判断します。
確認ポイントはプローブ設定、GNDリード、オシロスコープ本体の 3 つです。
プローブ設定
プローブ設定で確認するのは、減衰比の切り替えです。この切り替えによって、プローブが回路へ加える入力容量の大きさが変わります。
減衰比が 1x の場合、10x と比較して入力容量が大きくなり、それが回路にとって無視できない大きさになると、観測波形の立上りが鈍ります。
この鈍りの大きさは、信号の周波数と回路の出力インピーダンスによって変化し、両者が高いほど、観測波形の鈍りは大きくなります。
また減衰比が 10x であっても、入力容量が測定対象の回路にとって負荷として無視できるかは確認しておくべきです。
ただし 10x ではオシロスコープへ届く信号の振幅が 1/10 になり、小さい信号ではノイズの影響を受けやすくなります。ここで見たように減衰比と入力容量はトレードオフの関係にあるため、ノイズの影響を受けやすい場合に限り、入力容量の増加を承知したうえで 1x を選択すべきです。
GNDリード
GNDリードで確認するのは、接続に使うリードの長さです。この長さによって、基準電位をつなぐ経路のインダクタンスが変わります。
経路のインダクタンスが入力容量と共振すると、観測波形の立上りの後に振動が現れ、リードが長いほど振動は大きくなります。
またこの振動は、信号の立上りが速いほど現れやすく、GNDリードの長さが信号の立上り時間に対して十分に短いかどうかが重要です。
実際の確認方法としては、GNDリードの長さを変えて観測波形が変化するのであれば、その振動は測定系が発生させているものと判断できます。
オシロスコープ本体
オシロスコープ本体で確認するのは、機種ごとに決まっている周波数帯域です。
信号に対して周波数帯域が不足すると、観測波形の立上りが鈍ります。プローブ設定による鈍りと画面上の見え方は同じですが、原因は異なります。
この鈍りが現れるかどうかを左右するのは、GNDリードと同じく信号の立上り時間です。立上りが速いほど、信号は高い周波数の成分を含むため、周波数帯域の不足が観測波形へ現れやすくなります。
そのため確認することは、使用中のオシロスコープの周波数帯域が、信号の立上りを鈍らせていないかどうかです。
表1 確認ポイントと比べる信号の性質

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