この記事では、低抵抗部品に対する抵抗値測定の使い分けについて解説します。
抵抗測定モードの問題点
テスタの抵抗測定では、測定端子からテスト電流を流し、その電流経路上に生じた電圧から抵抗値を算出します。
この算出された抵抗値は、選んだレンジの最小分解能によって下限値が決まり、かつ経路上のすべての抵抗、すなわち測定対象物(DUT)とテストリード、そして接触抵抗を合算した値として表示されます(図1)。

図1 2端子測定での読み値の内訳
ここで DUT の抵抗値が低い場合に、2つの問題点が顕在化します。
分解能による制限
テスタの分解能は、測定可能な抵抗値の下限を決めます。
OWON製 B41T+ の 220 Ω レンジであれば、最小分解能は 0.01 Ω、確度は ±(0.5% rdg + 10 digits) と規定されています。
このレンジにおいて 10 digits は 0.1 Ω に相当します。
ここでDUTの抵抗値が 0.1 Ω だとすると、 DUTの抵抗値と同じ大きさの不確かさが測定系に内包されることになります。
測定系の抵抗和
抵抗測定の測定値にはDUTだけでなく、テストリードの抵抗値やDUTとリード先端の接触抵抗も加算されています。
実際に B41T+ のテストリードをクリップ短絡した状態で抵抗値を測定すると 0.04 Ω を示します。この値がテストリードと接点の合成抵抗で、0.1 Ω のDUTに対して4割に相当する抵抗値が加わることになります。
ゼロ補正(パネル表記は REL)は、ゼロを取ったときの読み値を記憶し、以後の表示からその値を差し引きます。なおゼロ補正はマニュアルレンジでのみ働くため、実行するとマニュアルレンジへ自動で切り替わります。
つまり B41T+ においては、下限を決める最小分解能 0.01 Ω と、測定系の合成抵抗 0.04 Ω、この二つを踏まえて DUT 自身の抵抗値を見積もる必要があるということです。
4端子測定の原理と検出点
4端子測定では、電流を流す経路と電圧を検出する経路を分けることで、テストリードや接触抵抗の分を読み値から切り離して低い抵抗値を測定できます。
4端子という名の通り、電流を流すための2本(電流端子)と、電圧を検出するための2本(検出端子)、あわせて4本のリードをDUTの両端に接続します(図2)。

図2 4端子測定の結線
2端子測定では、1本のテストリードが電流端子と検出端子の2つの役目を兼ねています。
電流経路と検出経路の分離
一方で4端子測定では、電圧を検出する側の入力インピーダンスが高いため、検出端子にはほとんど電流が流れません。そのため検出経路にあるテストリードや接触抵抗による電圧降下は、ごくわずかな誤差にとどまります。
検出点の位置と測定範囲
4端子測定では、検出点をどこに当てるかで測定範囲が決まります。
読み値になるのは、2つの検出点のあいだにある抵抗だけです。抵抗体の端子面に近い側へ検出点を寄せれば端子や配線の抵抗を測定範囲から外せ、外側に当てればその分まで含まれます。
なお4端子測定では、電流用と検出用の接点を1つのクリップにまとめたケルビンクリップを使用することが一般的です。この場合、電流を流す点と検出点はクリップの位置で決まるため、測定範囲はクリップをどこに噛ませるかで決まります。
測定手段の使い分け
2端子測定と4端子測定はそれぞれ測定原理が異なるため、同じDUTを測定しても読み値に差が生じます。
ここでは公称 0.1 Ω・1 Ω・10 Ωのメタルクラッド抵抗を測定した結果を示します(表1)。4端子測定では、抵抗体のリード線をケルビンクリップで挟んでいます。
表1 測定条件による読み値の比較

読み値の差
まずは 2端子測定のゼロ補正前後で比較すると、補正前後の差はいずれも 0.04〜0.05 Ωで、テストリード短絡時の読み値 0.04 Ω とほぼ一致します。
次にゼロ補正後と4端子測定を比較すると、その差は 0.001〜0.065 Ω の範囲でばらついており、ゼロ補正後のほうが小さく出ることもあります。
これは4端子測定に使用した計測器が2端子測定と異なることや、テストリードの違いなども含まれるためで、この結果からその差を接触抵抗の違いと言い切ることはできません。
また 10 Ω での差 0.065 Ω は、テスタの 220 Ω レンジの確度 ±0.15 Ω の内側です。この差は B41T+ 単独の確度と同程度の大きさで、原因を識別できる差ではありません。
2端子と4端子の測定結果の差を公称値に対する割合で見ると、0.1 Ω では約 41%、1 Ω では約 4%、10 Ω では約 0.3% となっており、抵抗値が低いほど割合が大きくなっています。
この割合の変わり方が、テスタで足りるかどうかの境目がどのあたりにあるかを示しています。ただし 10 Ω の差は確度に埋もれているため、割合そのものに意味があるのは 0.1 Ω と 1 Ω の側です。
判定の目安
測定したい抵抗値に対して、ここでは2つの目安で判定する方法を紹介します。
1つ目は、対象の抵抗値が最小分解能 0.01 Ω の何倍あるか、あるいは確度規定の digits 分に対してどれだけ余裕があるかで判定する方法です。今回の 3 点でいえば、0.1 Ω は 10 倍、1 Ω は 100 倍、10 Ω は 1000 倍です。
2つ目は、対象の抵抗値がテストリード短絡時の読み値 0.04 Ω と同オーダーに近づいていないかです。
今回のDUTに対してこの判定基準を適用すると、0.1 Ω はこの 2 つのどちらにも近いため、読み値をそのまま DUT の抵抗値とみなせず、4端子測定を選ぶべきとなります。
反対に 10 Ω であれば、2つの判定基準に対して十分な余裕があるため、テスタの確度そのものが許容できる用途であれば手持ちのテスタで判断できます。
そして一番難しいのは、その中間にある 1 Ω です。これは求める確からしさによって答えが変わるため、ケースバイケースで判断の必要があります。
このように測定対象の抵抗値と2つの判定基準を用いることで、手持ちのテスタでの測定で十分か、あるいはベンチトップ型のデジタルマルチメータ(DMM)を使った4端子測定に移るべきかを自分で決められるようになるはずです。
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