この記事では、テスタによる電流測定方法について解説します。

電流測定の仕組み

電圧測定や抵抗測定では測定対象に対してテスタを並列接続しますが、電流測定では回路に対してテスタを直列に接続する必要があります。

テスタの電流測定では、回路に対して直列に抵抗値の低いシャント抵抗を接続して、その電圧降下から電流を求めます。   I=V/R

シャント抵抗はテスタ内部に既知の抵抗として実装されており、電圧の測定値をこの抵抗値で割ることで電流値に換算できます。

つまりテスタが直接測っているのは常に電圧であり、電流は換算値に過ぎないということです。またシャント抵抗による電圧降下が生じることで、そのぶん測定対象となる回路に掛かる電圧が小さくなります。

電流レンジの切り替え

テスタが測る電流は µA〜A級まで幅広く、1つのシャント抵抗では両立できません。小さい電流では電圧降下が小さすぎて測定できず、大きい電流では過負荷で抵抗が破損します。

そのためテスタの内部では、測定する電流の大きさに対応した桁(µA・mA・A)に応じてシャント抵抗の値を切り替えています(図1)。例えば OWON製 B41T+ では、このシャント抵抗の切り替えに対応して mA/µA と A の2つの入力端子に分かれています。

図1 テスタの電流入力の内部構成

電流測定の注意点

電流測定に使用するシャント抵抗は、電圧測定の入力インピーダンス(10 MΩ)とは桁が違うほど抵抗値が低いです。

このような低抵抗の経路が電圧源に対して並列接続されると、電源から見てほとんど抵抗のない経路になります。テスタの電流入力にヒューズが直列に組み込まれているのは、このとき流れ込む電流から機器を保護するためです。

この経路を作らないために、電流測定が終了したら、赤のテストリードを電流入力端子から電圧入力端子に戻すことを癖付けておくべきです。

テスタのロータリースイッチを電圧測定モードに戻しても、テストリードが電流入力端子に挿さっている限り、電圧源に当てたときの経路は残ります。スイッチの操作より、テストリードの差し替えが先です。

 

端子とレンジの選び方

B41T+ の電流測定では、端子とレンジを測定電流の大きさから順に絞り込みます。

まず端子です。測りたい電流が 220 mA を超えるなら A 入力端子、それ以下なら mA/µA 入力端子を使います。この 220 mA は、mA/µA 入力端子の最大入力です。

次にレンジです。測定電流がレンジ上限の内側に収まる、いちばん小さいレンジを選びます。これはレンジを下げるほど分解能が上がり、小さい桁まで読めるようになるためです(表1)。

表1 B41T+ の直流電流レンジと端子

A 入力端子を使う場合は、連続測定時間の制限も確認します。シャント抵抗には測定電流がそのまま流れ、そこで消費される電力が発熱になるためです。 P = I²R

10 A〜15 A では 10 分のうち測定は 2 分以内、15 A〜20 A では 15 分のうち測定は 10 秒以内で、どちらもその期間中は測定時間以外に通電しないことが条件となっています。

本体に刻まれている「Each 15 minutes max 10 sec」は 15 A〜20 A の条件だけです。10 A 未満については取扱説明書に記載がなく、制限がないという意味ではありません。

なおヒューズ定格は、レンジ上限や最大入力とは別に規定されています。220 mA レンジではその 3 つがすべて違う値です。

 

テスタの実力検証

テスタを直列接続したときの影響の大きさは、テスタ自身に生じる電圧降下で判断します。

電圧降下の求め方

データシートに仕様として電圧降下が示されている機種では、単位電流あたりの電圧降下(µV/µA・mV/mA・V/A)に測定電流を掛けることで、回路上での電圧降下が求まります。

一方でデータシートに規定がない機種では、第2のテスタを電圧測定モードにして電流入力端子と COM の間を測ります(図2)。この測定値が電圧降下です。

 

この電圧降下は、メーカーの仕様欄に burden voltage(バーデン電圧)として記載されていることもありますが、B41T+ の取扱説明書にはありません。

端子間電圧を測定電流で割れば、等価入力抵抗が求まります。実測した値が表2 です。

表2 B41T+ の直流電流レンジ別の電圧降下と等価入力抵抗

電源電圧に対する割合

判定は電圧降下の絶対値でなく、電源電圧に対する比率で行います。

表2 の 100.70 mA の例では、端子間電圧が 0.8624 V となっており、3 V の電源電圧なら約 29%、12 V なら約 7% にあたります。

測定中の回路には、電源電圧からこの分を引いた電圧が加わります。回路の最低動作電圧が分かっていればそれと照合し、分からなければ割合を出すところで判断を止めます。

電圧降下を減らす方法

22 mA レンジと 220 mA レンジは、同じ電流で 10.34 Ω と 10.35 Ω です。同じ系統内ではレンジを変えても電圧降下は減らないため、減らすには A 入力端子へ切り替えます。

A 入力端子の等価入力抵抗は 22.4 mΩ で、mA 系統の約 460 分の 1 です。ただし分解能は 1 mA まで低下します。

このトレードオフは端子と系統の選択にあり、細かく読める系統ほど等価入力抵抗が大きくなります。

ヒューズの点検

テスタのヒューズの状態は、別のテスタを抵抗レンジで COM と電流入力端子を直結すれば確認できます。

B41T+ では mA/µA 入力端子−COM 間が 10.30 Ω、A 入力端子−COM 間は読み取れませんでした。

B41T+ の取扱説明書には、点検の手順も正常値の規定もありません。このため判定は、OL なら断線の疑い、OL でなければ完全な断線ではない、というところまでです。なおヒューズ定格は、レンジや端子を選ぶ基準にはなりません。

10.30 Ω は mA 系統の等価入力抵抗(10.34 Ω)に近い値ですが、µA 系統(1,012 Ω)とは 100 倍違います。点検値から等価入力抵抗は導けません。

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