この記事では、GNDリードが観測波形にリンギングを発生させる仕組みについて解説します。

 

GNDリードによる共振回路

オシロスコープで使用するプローブのGNDリードは、プローブの基準電位と回路の基準電位を同電位にするための線です。直流で見ると単なる短絡であり、観測波形に対して何も作用しないように思えます。

しかし交流で見ると、このGNDリードはインダクタンスとして働きます。インダクタンスの目安としては 1 cm あたり約 8 nH です。一般的な受動プローブに付属しているワニ口リードの長さは 15 cm なので、この目安から求めると約 120 nH になります。

そしてこのインダクタンスは、プローブの入力容量と直列に接続されることで、測定点から見たときに直列共振回路として機能します(図1)。

 

図1 GNDリードのインダクタンスと入力容量が構成する等価回路

 

共振回路とリンギング

直列共振回路の共振周波数は、インダクタンス L と容量 C から算出されます。

fr=12πLC

SIGLENT PB470 の入力容量は、減衰比 10x で 14 pF であり、GNDリードのインダクタンスが大きくなるほど共振周波数は下がります。

そして共振周波数が測定系の周波数帯域よりも低くなると、その影響が観測波形にリンギングとして現れます。リンギングは信号遷移時に起こる振動減衰波形のことで、急激な変化に含まれる高周波成分が共振回路を励振することで発生します。

 

リード長と立上り時間の関係

ここでは実測をもとにして、GNDリードによる共振が観測波形にどのように現れるかを確認します。

測定条件

オシロスコープは SIGLENT SDS804X HD を使用し、DC 入力・入力抵抗 1 MΩ・サンプリングレート 2 GSa/s・帯域制限 OFF の設定とします。プローブは付属の PB470 を減衰比 10x で接続します。

GNDリードは 2 条件です。1 つ目は付属のワニ口リード 15 cm、2 つ目はスプリング接地です。

信号源はパルス波 1 MHz・デューティ 50 % に対して立上り時間を 4 ns/8.4 ns/20 ns で比較します。

信号の終端には BNCタイプの T 分岐を使用し、一方に 50 Ω 終端、もう一方にプローブの先端とGNDリードを接続します。

測定結果

まず立上り時間 4 ns の条件で、GNDリードの長さの影響を比較します(図2)。

 

図2 立上り時間 4 ns の条件での GNDリードの比較

 

同じ信号を測定しているにもかかわらず、ワニ口リード 15 cm の観測波形では立上りの後にリンギングが現れ、スプリング接地では現れていないことが確認できます。

また各条件の立上り時間とオーバーシュートの関係も整理してみます(表1)。

 

表1 GNDリードと立上り時間によるリンギングの違い

 

リード長の影響

条件1と条件2を比較すると、オーバーシュートはワニ口リード 15 cm で 13.9 %、スプリング接地で 1.9 % となっています。

立上り時間はそれぞれ 3.64 ns と 3.69 ns でほぼ等しいにもかかわらずオーバーシュートが 7 倍以上の差になっているのは、GNDリードのインダクタンスが違うためです。

スプリング接地のインダクタンスは、目安として 10〜20 nH です。付属のワニ口リード 15 cm の約 120 nH に対して 1 桁小さいため、その分だけ共振周波数が高くなります。そして、共振周波数が測定の周波数帯域外に出れば、リンギングは観測波形に現れなくなります。

立上り時間の影響

次に立上り時間とオーバーシュートの関係として、条件1・条件3・条件4を比較します。

すると同じ GNDリードを使用していても、信号の立上りが遅くなるほどオーバーシュートやリンギングが小さくなっていることがわかります。

これは立上りが速い信号ほど高い周波数成分が大きくなり、それが共振周波数にも重なるためです。反対に立上りが遅ければ、共振周波数への重なりはわずかで、リンギングとして観測できない程度にとどまります。

つまりリンギングが観測波形に現れるかどうかは、GNDリードの長さだけでは決まらずに、立上り時間と共振周波数による影響を受けるということです。

測定系由来かの判定

実際の確認方法としては、GNDリードの長さを変えて観測波形が変化するのであれば、そのリンギングは測定系が発生させているものと判断できます。

リンギングが測定系由来と判定できたら、対処は GNDリードを短くすることで、その具体的な手段がスプリング接地を使用することです。

ただし、GNDリードを短くしてもリンギングが残る場合があります。このときは測定系ではなく、測定対象の配線での反射・終端の不整合・ダンピング不足などが要因として挙げられます。

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