この記事では、高抵抗な回路をテスタで測定したときの、表示値の扱い方について解説します。
表示値の使用境界
テスタに表示された電圧は、テスタの入力インピーダンスが測定対象となる回路に並列に接続されることで、真の値よりも低く表示されます。この電圧の低下を負荷効果と呼びます。
そして負荷効果の大きさは、回路ごとに変化します。
そのためテスタの表示値をそのまま使用できるかは一律に決められず、負荷効果の大きさとテスタ本体の確度幅の比によって決まります。
使用可否の判定
負荷効果が確度幅を下回る場合は、負荷効果が確度幅に丸め込まれるため表示値をそのまま使用できます。
具体例として、出力インピーダンス 10kΩ の組み合わせでは負荷効果による電圧の低下率は 0.0959% となります。
これに対して OWON製 B41T+ の確度幅は 0.140% と規定されています。
ここでテスタ本体の確度幅の方が負荷効果による低下率よりも大きいため、表示値をそのまま採用しても問題ないといえます。
一方で、出力インピーダンスが 100kΩ の組み合わせでは、負荷効果による電圧の低下率が 0.9832% となり、確度幅に対して 7.0 倍まで大きくなります。
つまり、このあたりの組み合わせが表示値をそのまま使用できるかの境界になります。
そして出力インピーダンスがさらに高い 1MΩ/3MΩ/10MΩ の組み合わせでは、確度幅に対する負荷効果の比が 64 倍/155 倍/283 倍とさらに大きくなります。
このことから B41T+ で測定したときに、負荷効果を無視できる条件としては 10kΩ 以下の組み合わせに限定されることになります。
機種による境界差
そして表示値の使用境界は、使用するテスタの確度によっても変化します。
例として、HP 34401A の 10MΩ 設定では確度幅が 0.0045% と規定されており、これは B41T+ の 1/30 程度です。
このテスタで出力インピーダンスが 10kΩ の組み合わせの場合、確度幅に対する負荷効果の比は 21 倍となり、負荷効果が確度幅に丸め込まれません。
つまり、確度幅が小さいテスタでは、10kΩ の組み合わせにおいても表示値をそのまま使用できないということです。

図1 低下率と確度幅の比
図1 に示すとおり、この 2 つのテスタで確度幅に対する負荷効果の比を比較すると、表示値の使用境界の位置がテスタの確度によって変化することがわかります。
出力インピーダンスの算出
負荷効果の大きさは、測定対象となる回路の出力インピーダンスとテスタの入力インピーダンスの比で決まります。
ただし実際の回路では、出力インピーダンスがわからない場合があります。
そのための手立てとして、ここでは入力インピーダンスが異なる 2 パターンの表示値から出力インピーダンスを逆算する方法を紹介します。
逆算手順
確度の高いテスタには、DC 電圧の入力インピーダンスを 10MΩ と 10GΩ の 2 段階に切り替えられるものがあります。
そこで測定対象となる回路を 10MΩ 設定と 10GΩ 設定で 1 回ずつ測定し、それぞれの表示値を記録します。
この 2 つの表示値 V₁・V₂ は、同じ出力インピーダンスに対して並列接続する入力インピーダンスだけが異なり、その他の条件は全く同じです。
ここで測定対象となる回路の出力インピーダンス Zs は、10MΩ 設定の入力インピーダンスをZᵢₙ₁ とすると以下の式で逆算できます。
Zₛ = Zᵢₙ₁ × (V₂ − V₁) / V₁
具体例として、出力インピーダンス 1MΩ の組み合わせでは、各入力インピーダンスでの表示値が 4.5549 V と 5.0199 V となり、出力インピーダンスは 1.0209MΩ と求まります。
出力インピーダンスを変えたときの逆算値
この逆算が出力インピーダンスによらず使えるかを、4 つの組み合わせで検証します。
比較対象としては、回路の抵抗値を実測して求めた出力インピーダンスを使います(表1)。
表1 逆算値と実測から求めた値の比較

差の割合はいずれも 0.3% 以内となっており、逆算値をそのまま補正に使っても問題ないといえます。
補正の効果と限界
高抵抗回路の測定では、負荷効果によって表示値が真の値から低下するため、そのままでは判定に使用できない場面があります。
このような場合、逆算した出力インピーダンスをもとに表示値を補正することで、判定に使用できるようになります。
なお、この補正値の基準となる真の値には 10GΩ 設定の表示値を採用します。10GΩ 設定でも負荷効果はわずかに生じますが、10MΩ 設定の負荷効果に比べれば十分に小さいためです。
補正後の一致
出力インピーダンスの組み合わせごとに、補正値と真の値との差を比較します(表2)。
表2 補正値と真の値の差

100kΩ/1MΩ/3MΩ の 3 つの組み合わせでは、割合が 0.03% 以内に収まっており、逆算した出力インピーダンスによる補正で真の値をほぼ再現できています。
補正の限界と機種変更
一方で 10MΩ の組み合わせでは、補正しても 0.15% の差が残ります。
そのため補正を行っても要求される確度に届かない場合は、入力インピーダンスの大きい設定やテスタに切り替える必要があります。
これらの結果を踏まえて、表示値の扱いは 3 つに分類できます。
- そのまま使用する:負荷効果が確度幅に丸め込まれる条件で選ぶ
- 補正して使用する:負荷効果が確度幅を上回るが、出力インピーダンスを逆算できる場合に選ぶ
- 入力インピーダンスの大きな設定や機種へ変更する:補正値でも要求される確度に届かない場合に選ぶ
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